(特別な彼)


犬は別に好きでも嫌いでもない。
何故いきなりこんなことを言ったのかというと、自分の恋人がどう見ても犬にしか見えないからだ。
例えるならゴールデン・レトリバー。
だけど、そんなに頭はよくない。
どちらかというと小型犬みたくキャンキャン吠えている方だと思う。
そんな恋人である黄瀬涼太は今まさに私の横でおやつはまだかというように尻尾を振っている。
一度構ってしまうと後々が面倒なので私はこの前購入したばかりの人気作家の小説を読んで無視を決め込んでいた。
そんな私に痺れを切らしたのか、ベッドを背もたれにしている私に抱きついてきた。

「本なんか読んでないで構ってほしいっス〜!!」
『…涼太』
「はい!!」
『…ハウス』
「はい!!って酷いっスよ!!」
『もう少し待って』
「もう少しっていつまでっスか!?」
『切りのいいとこ』
「……それって何分どころじゃないじゃないっスか!!」
『…バレたか……』
「酷いっス!!彼氏を邪険にするなんて!!」
『あんたの口から邪険って言葉が出てくることにびっくりだよ』
「そこまで頭悪くないっスよ〜!!」
『へぇ〜?じゃあ自分の力だけで赤点免れるよねー?』
「うっ…」
『赤点ギリギリがよく言うよ。せめて全教科平均点取れるぐらいになってから言いなさいな』
「…何にも言えないっス……」
『全く…』
「うー…。構ってほしいっス〜…」
『…仕方ないなぁ』
「やったっス!!」
『で、どこか行くの?』
「ショッピング!」
『はいはい。着替えるからちょっと待ってて』
「俺が着替えしてあげっ…『ちょっと黙ろうか』…別に今更じゃないっスかー」
『涼太くん?』
「調子に乗りました…」
『ったく』

そう言いつつも締まらない表情をしている彼にこちらもつられてしまう。
惚れた弱みというか何と言うのか…。
結局彼だけは特別なんだなとしみじみ思いながら嬉しそうに尻尾を振った犬のような彼の手を握って恋人らしい時間を過ごしたのだった。


end

← | →

back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -