(穏やかな休日)


高校生活はたくさんのことがあった。
決別したキセキの世代。
だけど、それも黒子くんのおかげで解決して…。
今じゃそれぞれの相棒たちが呆れるぐらい彼らは仲がいい。
そんな彼らはそれぞれ自分のチームの柱となり、高校生活を悔いなく過ごした。
その後、プロを目指した人。
全く別の道を歩んだ人。
それぞれが各道に進んでいった。
そして、私は彼らの中の1人と一緒に生活している。

『征十朗ー。ご飯できたよー』

中学の頃から付き合っていた私たちは大学に入るとほぼ同時に同棲を始めた。
どちらかが提案したわけでもなく、ただ自然とそうなった。

『征十朗ー?』
「…聞こえてるよ」
『おはよう』
「あぁ…。おはよう」

少し寝癖のついた柔らかい髪。
誰がこんなに気の抜けた彼を想像できるだろう。
きっと一緒に戦ってきた洛山の先輩たちは、今の彼の姿を見たら目が飛び出すのではないかと思う。
上下黒のスウェットは首のところが少し伸びていて、肩が少し出ている。
後頭部をわしゃわしゃとかきながら寝室から出てきた。

『フフッ…寝癖できてる』
「そうか…」
『あとで直してあげるね』
「あぁ…」

まだ少し寝ぼけいてる彼はゆっくりした足取りで洗面所に姿を消した。
そんな彼に微笑んで、テーブルに朝ご飯を置いていく。
洗面所から戻ってくるまで、朝ご飯の用意で使った道具を洗っておく。
しばらくすると、背中に微かな衝撃と大好きな温もり。

『ご飯食べよっか』

肩に乗った頭を撫でる。
柔らかくて絡むことを知らない赤い髪。

「今日バイトは?」
『ないよー』
「そうか」
『征十朗は?』
「今日はなにもない」
『そっか。じゃあゆっくりできるね』
「そうだな」
『よしっ。お皿持って行って?』
「あぁ」

朝ごはんは洋食。
それは私たちの中でのルール。
作るのは私。
後片付けは征十朗。
これも一緒に生活するためのルール。
一緒に住むと決まって、家事は分担しようと話し合いで決まった。
私だけにやらせるのは征十朗が嫌なんだとか…。
私は別に気にしていないんだけどね。

「久しぶりにゆっくりできたな」
『そうだね。いつも朝はバタバタしてるから』
「たまにはこういう日があってもいいな」
『あとでお買い物行かない?』
「あぁ、いいよ」
『そろそろ洗濯洗剤とか切れてきたし』
「ボディーソープも切れかけだったよ」
『うそっ?!昨日使えた?』
「大丈夫だ」
『よかった。じゃあショッピングモールでも行く?そこでお昼食べよっか』
「いいね」
『じゃあ征十郎はゆっくりしてて?掃除機かけるから。あ、洗濯物出しておいてね!』
「なら洗濯機ぐらい回しておくよ」
『いいの?』
「あぁ。それぐらいやるよ」
『じゃあお願いします』
「了解」

洗濯物をもって脱衣所に向かった征十郎を見てから、リビングの窓を開けた。
ほどよく冷たく気持ちのいい風が部屋の中に入ってくる。

『んー、気持ちいいー』

きっと洗濯機を回し終わった征十郎が、ソファーでこの風に当たったら気持ちよさそうに寝るんだろうなと考えていると、征十郎が戻ってきた。

「天気いいみたいだね」
『うん。お出かけ日和だよ』
「ソファーに座ったら寝てしまいそうだ」
『フフッ。いまさっきそれ想像してた』
「自然の誘惑には負けるさ」
『自然の力は偉大だね』
「そうだな」
『掃除機かけ終わったら起こしてあげるから寝たら?最近寝不足だったでしょ?』
「いいのかい?」
『うん。でも掃除機うるさいよ?』
「大丈夫」
『わかった』

ソファーに座って気持ちよさそうに目を瞑った征十郎を見てから、掃除機を手にとった。
たまにはこんなにゆっくりして過ごすのも悪くないなと顔を緩ませながら、征十郎の寝顔を見て掃除機の電源を入れた。


end

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