(愛しい君には適わない)


休日。
珍しく部活が休みと言うことで、征十郎の部屋で勉強中…。
彼は彼の勉強。
私は彼が作ってくれたテスト対策用問題をしていく。
が、全く答えがわからない…。

『うー…』
「………」
『…分かんないー…』
「………」
『……征十郎ー…』
「………」
『むー…』

助けを求めても反応してくれない彼。
仕方なく、シャーペンを握りなおしてプリントと向き合うが、シャーペンは一向に動かない。

「…なまえ」
『んー…』
「全く進んでいないみたいだが?」
『んー…』
「なまえ?」

参考書を見ていたが、なまえの反応に顔をあげた。

『…本当にわかんない…』

少し瞳に涙をためるなまえ。
そんななまえが可愛いと思ってしまった。

「仕方ないな。こうなることは分かっていたが、本当になるとは…」
『この問題、難しすぎるよ…』
「そんなことはない。今回のテスト範囲から作ったものだ」
『それでも、全くわかんない…』
「とりあえず、埋まっている所から見ていくよ」
『うん』

そして、赤司先生による勉強が始まった。

「…うん。埋めてある所は全部あってる」
『ほんと?』
「あぁ。だが極端すぎる」
『うっ…』
「さてと、じゃあなまえが覚えやすいように、一つずつ解説していこうか」
『お願いします』

征十郎は一つずつ本当にわかりやすく教えてくれた。

「どう?」
『うん!征十郎のおかげで、いい点数が取れそう!』
「それはよかった」

そう言ってニッコリと笑った征十郎に自然と顔が熱くなるのを感じた。
なんだか恥ずかしくなって顔を逸らすと、征十郎はクスッっと笑った。

「今更こんなことで照れてるの?」
『う〜…』
「もっと恥ずかしいことしている仲なのに」
『そ、それはっ…』
「本当になまえには敵わないよ」

柔らかな表情を浮かべる征十郎。
そんな征十郎が手招きをした。
一度立って、手招きをする征十郎の所へ行くと、手を掴まれて強制的に膝の上に座らされた。
膝の上でおとなしくしている私を征十郎は優しく抱きしめてくれた。

『征十郎は英語?』
「そうだよ。英語は一日目だからね」
『私も英語の勉強しないとな…』
「英語はなんとなくできるみたいだね」
『社会ほどじゃないけどね。でも数学よりは英語かな』
「現代文が一番得意なのか?」
『うん。本読むのは好きだし。英語はなんとなくでわかるから』
「なんとなくではなく、きちんと理解してくれ」
『えー。だって単語さえわかれば読めるじゃん?』
「否定はしないよ」
『でしょ?』

振り返って征十郎を見る。
思ったよりも距離が近かった。

『…っ』
「クスッ…」

前に向きなおして、俯くなまえ。
そんななまえを見ていると、僕の悪戯心に微かに火が灯る。
お腹に回している腕に少し力を入れて、ぴったりとくっつくほどに抱きしめた。

『っ!』

ピクっと反応するなまえ。

「なまえ」
『………』
「仕方ないな」

名前を呼んでもこちらを向かないなまえ。
一度、抱き上げて無理やりこちらを向かせて、膝の上に座らせた。

『せ、征十郎…』
「なんだい?」
『は、恥ずかしい…んだけど…』
「どうして?」
『どうしてって…。どうしても…』

目をキョロキョロさせて、絶対に合わせようとしない。
逃げないように腕は腰に当てている。
なまえの額に自分の額をあてると、なまえは固まった。

「恥ずかしい?」
『…(コクン)』
「ドキドキする?」
『うん…』
「手を貸して」
『?ん…』

伸ばしてきた手を握り、自分の胸に当てた。

「…どう?」
『ドキドキしてる』
「僕もなまえと同じだよ」
『同じだね』
「なまえだから、こうなるんだよ」
『うん。私も征十郎だからドキドキする』
「同じだね」
『同じだね』

顔を見合わせて笑う。
そして自分に身体を預けるなまえ。

「(なまえには一生敵わないな)」

そう呟きながらも優しくなまえを抱きしめた。


end

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