(キャプテンの秘密)


「なまえ」
『なぁに?征ちゃん』

京都・洛山高校。
小さい頃から一緒にいる幼なじみの赤司征十郎。
1年生にして超がつくほどの強豪校のキャプテンとなってしまった人。
不思議の征ちゃんのことを妬む人もいなく、みんなが征ちゃんの言うことを聞いている。
まぁ言うことを聞かざるをえなくなる、と言った方がしっくりくる。

「何故しっかりくるんだ?」
『何故ってそんなの…。って!また人の心を読んで!』
「読んでない。なまえが分かり易いだけだよ」
『絶対に嘘だ!』
「それよりもなまえ。そろそろ始めたいのだが…。準備はできているか?」
『それよりもって!準備はとっくの昔にできてるよ』
「ありがとう。さすがなまえだね。頭は残念だけど仕事の手際だけは尊敬するよ」
『どういたしまして。…って、それ褒めてるの?』
「褒めているよ。頭は残念だけどね」
『やっぱ、けなしてるじゃん!』
「さて、始めようか」
『無視っ?!』

洛山高校・男子バスケ部は今日も平和だ。

「今から30分のインターバルに入る」
「「はい!」」

征ちゃんの一言で体育館内はいつも一瞬で一つになる。
そして、30分のインターバルには、私たちのヒミツがある。

「…なまえ」
『はーい』

仕事の作業をしていると、後ろから肩にタオルをかけ、流れる汗を拭う征ちゃんに声をかけられた。

『あ。もう休憩?』
「あぁ」
『ん、分かった。先に行ってて?追いかけるから』
「早めにね」
『わかってる』

そして征ちゃんは、体育館を出た。
そんな会話をしていた私たちに、とうとう痺れを切らしたのか、実渕先輩が駆け寄ってきた。

「なまえちゃん。いつもこの時間に征ちゃんと何してるの?」
『えっと…。秘密です!』
「あら、どーして?」
『教えたら私…。生きて帰れないです…』
「そう、よね。今度、征ちゃんに聞いてみようかしら」

さらっと危険なことを言って、実渕先輩は葉山先輩たちの所へ行ってしまった。
ある意味、実渕先輩もスゴイ人だ…。
そんな実渕先輩を見た後、いつも通りに部室の裏の狭い空きスペースに向かう。
そこには待ちくたびれたかのように征ちゃんが座っていた。

『ごめんね。お待たせ』

私はそう言って征ちゃんの隣に座った。
それを見た後、征ちゃんはゆっくりと体を傾けた。
膝にかかる重み。
それを感じながらも、征ちゃんの頭を撫でる。
少し猫毛な赤髪は、いつまででも撫でたくなる。

「なまえ」
『ん?』
「最近、やつらと連絡は?」
『んー。真太郎くんと敦くんぐらいかな?』
「そうか」
『ヤキモチ…?』
「……真太郎と敦なら問題ない。が、大輝と涼太なら気は抜けない」
『でも、京都だよ?心配しなくても大丈夫だと思うけどなぁ』
「………」
『心配性なんだから』
「なまえのことになると余裕がなくなるんだ」
『それは愛されてる証拠?』
「そう思ってくれると、ありがたいな」
『じゃ、そう思っとく』

そよ風が私の髪を揺らす。
その風の良さに、征ちゃんは目を閉じた。

『レオ姉が気にしてたよ』
「僕たちの関係はあいつら(キセキ)でも知らないからね」
『でも、なんとなく真太郎くんは分かってそうだけどね』
「わざと、呼び名を変えていたのにな」
『バレてた?』
「当たり前だろう」
『だって、みんなのことは名前にくん付けだったのに、征ちゃんだけそのままだったら違和感あるでしょ?』
「確かにそうだが、慣れるのに時間がかかったよ」
『あ、やっぱり?反応遅かったもんね』
「分かってたのか?」
『うん。だって、いつも見てるもん』
「…そういう可愛いことを軽々言うと、どうなるか少しは考えてる?」
『え?』
「本当に…。なまえには敵わないよ」
『えー?どこから、それが出てきたのー?』
「教えない」
『いじわるー』
「その足りてない頭で頑張って考えてみなよ」
『ひっどーい!征ちゃんが言うほど、成績悪くないからね!?』
「一教科を除けばね。いや…三教科かな?」
『う…』
「どうして、あんなに酷いの。古文に社会全般」
『私だって聞きたいよ!でも、いいじゃない!理系はできるんだから!』
「文系ができないせいで順位が落ちているんだろう」
『落ちてるって言っても上位5位なんだから、いい方でしょー?』
「文系を伸ばそうとは思わないのか…」
『思うけど、できないんだもん…。特に社会が』
「今度テスト勉強に社会をやろうか」
『えー…。やだー』
「とにかく欠点からは逃れないとね」
『それは大丈夫だよ!取ったことないし』
「ギリギリ合格じゃ許さないよ」
『え…』
「当然」
『そんなぁー…』
「対策問題を作ってあげるよ。要領はいいんだから、それでどうにかなるよね」
『…聞かなくてもわかってるくせに……』
「じゃあ、なまえも言わなくてもわかってるよね」
『…頑張って平均点は取りますよぉ…』
「うん。分かってるならいいよ」

そう言って征ちゃんは目を細めた。

「さて、そろそろ戻ろうか」
『そうだね』

そして、私はまた大きくなりつつある彼の背中を見つめて、ついて行ったのだった。


end

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