(大きくて暖かい)


私は桐皇学園3年で男子バスケ部のマネージャーをしている。
後輩のさつきは実は近所の子で、小さい頃から知っている。
さつきは本当にいい子で仕事も速くてとても助かっている。
ちなみに青峰くんも小さい頃から知っていて、何気に彼に想いを抱いていたりする

私はチームメイトや同じクラスの人たちにしっかりしているという印象を持たれている。
本当はそんなことなくて、いつも大会会場に行ったときに今吉くんに迷惑をかけていた。
そして、それは3年になっても直らずのまま…。
今は人で溢れかえっている駅の改札口付近でただずんでいる。
その理由は…。

『また逸れた…』

大会会場の最寄り駅でおり、もう少しで会場に着く。
はずだったのだが、やはり最寄り駅ということで他校の人たちで溢れかえっている駅の改札口。
メンバーの中心にいたはずが、気づけば一人になっていた。
人の流れに乗っていけばきっと会場に着くのだろう。
けど、それをせずにただずんでいるのにはワケがあった。
それは同じ学年で主将である今吉くんとの約束。

―ええか?逸れたらとりあえず誰かにメールすること!あと今自分がいる場所の報告!それとメールを送ったらそこから一歩も動かんこと!!約束やで!!―

これが彼との約束。
そして、メールはさっき逸れたと気づいたときに今吉くんと諏佐くんに送った。
とりあえず、どちらかが気づいてくれたら誰かが迎えに来てくれるはず…。
要するに私には迷子癖があった。
超では足りないほどの方向音痴とまで今吉くんに言われている。
なので大人しく誰かが来るのを待っていた。

「…おい」
『?』
「おい、そこの迷子」
『!あ。青峰くん』
「あ。青峰くんじゃねーよ。だからはぐれねーように手ぇ繋ぐっつっただろ」
『だって…』
「だってじゃねーよ。大丈夫とか言ってけど、あんたの大丈夫ほど信用できねーもんはねぇ」
『ひどい…』
「ほんとのことだろ。ほら行くぞ」
『うぅ…』
「諦めろ」
『わ、わかりましたよー…』

しぶしぶと差し出された大きな手を握る。
大好きな彼の手はとても温かい。

「ったく、これだから心配で仕方ねーんだよ…」
『なに?』
「なんでもねーよ」
『…青峰くんの手おっきくて温かいね』
「…ふつーだろ」
『そうかな?私は好きだよ。青峰くんの手』
「…へいへい」
『あー。本気にしてないでしょ』
「するわけねーだろ。何でもかんでも好き好き言うな」
『好きなんだから仕方ないじゃん』
「うっせー。だから年上に見えないっつわれんだろ」
『そんなことないもんっ!』
「わーったから、さっさと歩けよ」
『青峰くんの一歩が大きすぎるんだよ!』
「あ?ふつーだっつーの」
『普通っていう言葉を一度辞書で調べるべきだと思うよ』
「めんどくせー」
『っていうか平均身長を大幅に超えてる時点で普通じゃないと思うんだけど』
「あー、はいはい」

さぞ興味がないように返事をして一歩前を歩く彼。
ダルそうに歩く大きな背中が見えているが、その片方の腕は後ろに伸びている。
普通になんとも思っていない人なら何も思わないのだろうが、彼に惚れている私はそんな後ろ姿でさえ好きだなと思ってしまう。
悔しいからそんなこと言わないけど。
今日の試合で活躍したら、この腕に抱きついてやろうと密かに決めたのだった。


end

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