ソルトはその日の宿を決めて、木のベッドの上に足を滑らした。近くにある窓を開けて夜空を見上げる。月が妙に赤いように感じてすっかり村は夜を迎え、灯りがともりだす。
あの後、ダンは一通り話すと帰っていった。一方ソルトはそのダリアが気になってしかたがなかった。
まじない師とは、本来人々の役に立つためのもの。村ならその畑の実りや、病、の手伝いや祈り、助けるためのまじない。人の不幸を占うものでも、決め付けるのでもない。どうやらここにいるまじない師は、ソルトの師のまじない師とは随分違うようだ。
でもそれですべての合点がついた。ダリア―あの少年のすべての弱弱しい行動の意味がなんとなくだがわかったように感じた。
不幸の子? あの子からそんなものを感じなかったし、だいたい何故生まれた瞬間にそんな異名をつけらればならないのか。


ガチャリと扉が開く音。そこには人型の、少年姿の狼。その手にはランプを持っている。
ソルトはさっそくとばかりに、「ね、ダリアに何か感じた?」と聞いて体を起こした。
狼はランプを机に置いてふっと消すと、「いや」と返事をしてソルトのベッドへ腰掛けた。「特に何も感じなかった」そう言って、浮かべたあのダリアという少年からは確かに何の『気』も感じなかった。あえて言うならどこにでもいる普通の子供だ。
それよりも気になったのは村々に飾られている装飾品や像などの神々の民芸品たち。ソルトが宿を決めている間に、少し村をぶらついてきてわかった事があった。
「この村は神の信仰が強く、村のあちこちに祀られてる石像と、あの男が言っていた呪い師を盲目的に信じてる。あと、―気になる話を聞いた」
「また、盗み聞きしたの」
じろっとソルトが言えば、狼は(知りなくないのか)とばかりに唇を歪めた。
確かに、彼の情報収集は貴重であり正確だ。そして、私がどう答えるのかなんてお見通しのくせに。ソルトは唇を尖らしたがすぐに同じように意地悪な笑みを作って、「で、何」と興味津々に聞いた。狼は忽ち獣姿になるとベッドの布団に体を滑らし欠伸を一つ零しながら答えた。
「最近呪い師がとあるお告げとやらを村長に言い渡したらしい。それから村の奥にある神殿でとある準備が進んでいるが、その内容は村人の間で機密事項になっている」
肝心のソレが何かを突き止めることは出来なかったが―狼はそう言って目を瞑った。

村のあちこちで祭典の準備が始まり、よそ者には当日まで教えないのが掟という、妙に引っかかるものであり、どうにも忠実に動く村人はどこか奇妙な雰囲気が漂っていた。
そして、狼がこの村に入って感じたのは、その神聖な神々の信仰の賜物なのか、どうにもここの居心地は悪くて仕方がなかった。上手く力の調節が出来ず動きが微妙に鈍い。
あまり良くない予感がするので、なんとも歯がゆい感じがして仕方がなかった。
野生の感はあたる。それと同時に獣の俺には『神』とやらの相性は最悪なのだと感じたことだけだった。






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