それはある村に伝わる伝統の一族。代々、芸を仕込まれた者たちが集う団。年に2度しか村には帰ってこない。それはモービル団と呼ばれ、有名な奇術師や猛獣使い、様々に長けた能力を活かしながら生計を立て、後世へと伝えゆくサーカス団。その歴史は長く、色々な国や町に村でたくさん記録が残されている。
そんなモービル団が拠点を置く村へ今回は訪れた。そこは古い遺跡や記述の保管庫など、最古の資料が眠り、今でも明かされていないものが多くあるらしい。
村に入って、人々に話しを聞けば、殆どの話にモービル団が登場した。そして彼らが今回村に帰ってきていることも。その話を聞いていたソルトは、さっそくとばかりに村を見て回った。村は際奥に進むほど、昔の遺跡の名残で美しい原石や柱などが所々にある。村に伝わる絨毯や裁縫などがあちこちに飾られ、売り出されている。
空は晴れ、その眩しい色とりどりの彩色に目を奪われていた。特にこの村で暖色系の色を好まれているようで、あたたかい色が美しい文様で刺繍されている。
雰囲気がどこか懐かしく、胸が躍るような気持ちになった。







私は燃えるような髪の子を見つけた。見慣れない格好だったから、きっと旅人だろう。ぼんやりと見つめて釘付けになった。少年のようだけど確かに女性だった。アンバランスな雰囲気と滑らかそうな肌は羨ましいほどきれいだった。
彼女は物珍しそうに市場をくるりと歩き、一瞬目が合った。その時、何か発作のように胸が苦しくなったと思ったら、急に軽くなって意識がふっと違う色をして混ざった。
その光景を私は冷静に見ながら、歩み寄って、知らないうちに声を零した。
「ねえ、あなたは―」まるで他人の唇のように私の口が動いて、声を掛けられた赤い髪の人は驚いたように私を見ていた。
ああ、たくさんの星が見える。私は目を覆った。
それはこことはまったく違った風景。建物も着物も違う。そこで二つの影が見えた。
そこには小さな女の子と大きな少年。親子ではないみたいで、年の離れた兄妹だろうか。少女はしきりに手をぶらぶらさせながら、星を指差している。
「兄ちゃん、みて。きれいねー」
少年は相槌を打ちながら目を細めて少女の名前を呼んだ。途端にせつないほどの愛おしい気持ちがこみ上げて、泣きたくなるほどなつかしくも温かいものに思えた。



ソルトは黙り込んだ女の子を見て首を傾げた。確かにさっき私を呼んだはずなのに、その子は目を瞑って沈黙の後ようやくその瞳を開けた。それははちみつ色の瞳。目を細めて、少しぼうっとしたような目でソルトを見て言った。
それは映像の中で少年が言った名前―

「あなたは、カオリ ね」







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