絶句した。ソルトは飲んでいた水をブッっと吐き出した。慌てて零れ落ちた水を手で拭って咳をした。げほげほ、と美しい装飾と豪華な食事の前では不似合いな声を上げてむせ込んだ。「な、なにを―」そう続ける前に「結婚式は盛大に。ドレスは隣国から取り寄せよう」ソロモンの歯の浮くような台詞によって遮られた。
(何、この人。全然話を聞いてくれないっ)ソルトは思いっきり首を振って、(嫌だ)とばかりに先生を見た。
その間にもソロモンは微笑んで「愛の前ではすべて無に返る。君は素晴しい女性だ」そう言ってソルトの手をとってその甲にキスを落とした。
唇がふに、と手の甲にのって熱い息がかかった。途端に顔がまっかになって、ソルトは石のように固まったのと同時にさっきまで大人しく座っていた狼が人型になって椅子から立ち上がった。その瞳は鋭く、業火に燃えている。
まるで邪悪な死神だな。ソルトの師は冷静に思いながら天井を仰いだ。まったくもって昨日会った国王といい…(本当にこの国の王と王子の性格は似ていらっしゃる)
ふと昨日ミゾに案内され挨拶したソロモンの父であり、現在即位している王を思い浮かべた。とりあえず「ソルトはまだ子供です。王子に相応しい女性は他にもおられますよ」と丁寧に言葉を並べた。


その時ソロモンはその翡翠の瞳を瞬かせてゆっくり目を閉じて、開いた。
そこには伝説にも聞いた。海の水面のように煌く群青の瞳があった。
「いいや、ソルトが欲しくなったのさ」







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