翌日、エヴァンは眩しい光に起こされて目を覚ました。その時、ベッドの横にはソルト。エヴァンは慌てて上半身を起こして、「此処は」と紡ぎかけた時、「ここは私達が泊まってる宿で、その前でエヴァンは倒れてたのよ」ソルトはそう言ってエヴァンに笑みを向けた。しばらくしてようやく状況を飲み込んだエヴァンは昨日、確かに見たあの彼を探した。それに気付いたソルトは「ああ、あいつなら出かけてるわよ」と、何も知らず小首を傾げた。そこで、エヴァンの中でモースの声が走馬灯のように流れた。
あのガキに「もう会わない」と自身の口から告げて来い
もちろん後ろ盾で俺が支持していると見せかけるな。もしそうなれば、どうなるか分かっているな

エヴァンは手を震わして拳を作った。そしてごくんと唾を飲んだ。もちろんその仕草をソルトは見逃していなかった。その事に気付かないエヴァンは気丈に笑みながらも、考えていた。(こうしている間もモースは私を見ている。いや、もしかしたらすでに怒っているかもしれない)エヴァンは息を吐いて、心配そうに見るソルトを見た。
「ソルト、ごめんなさい。こんな事をしてもらった上に―」
「大丈夫。エヴァン。私達は今日の夕方前には此処を旅立つから」
「え?」
エヴァンはソルトをじっと見た。ソルトはなんでもないとばかりに、エヴァンにウインクを1つして、「次は都を出て、王国に行くの。先生が今日出発しないと間に合わないって」まるでエヴァンからこれから紡ぐはずだった言葉を知っていたかのように遮った。
そして、ソルトは「はい、これ」と、その手を広げた。

そこには確かに、エヴァンがモースに盗られた―種。それも緑の双葉がにょきっと出ていた。エヴァンスは驚いたように、にこにこ笑っているソルトを見た。
「そんな―嘘、種が…発芽している」しかも、何故あなたがコレを― そう言いかけた時、「私は全然まじないの才能ないんだけど、植物を育てるまじないだけ、ぴか一なの。先生にもコレだけはお墨付きを貰ってるのよ。あ、でも全部が私じゃない。エヴァンのお母さんが残してくれた水が一番の効き目だった。私はちょっと助けただけ」得意気に言って、それをエヴァンの手にのせた。
「あとはエヴァンが立派に育てて、実をつけたらソレを売るといいわ。きっと仕事場を取り戻せるし、立派な薬師になれる。今の仕事はおしまい。あとモースも、あんなやつとも関わらなくていい」

エヴァンの心を突いたようにソルトの瞳は貫いていた。「これでも、まじない師の弟子だからね。不可能はないの」ソルトが少し意地悪そうに人差し指を唇にあてた。

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