遼の診療所には様々な患者がやってくる。
その殆どが、夫に先立たれ一人身になった人や、核家族で話し相手のないお年寄り。
それぞれが畑や農業で採れた野菜や果物をお土産に持ってくる。

「りょーちゃん、最近眩暈がひどいのよ。心臓もドキドキしてて、こう、ふらふらとするの」
「ほーう。…そういえば、確か最近はまってのがあるって言ってたよな?んだったけ…」
「ああ!志麻子(娘)が送ってくれた韓流ビデオよ。そう、それよ!それを見たあと、ふらふらになるのよ…りょーちゃん、私もう駄目なのかしら」
「一体何時まで見てるんだ?」
「そうねえ…あれって長いから、確か今朝方四時過ぎまでかしら」ほんとう、おもしろいのよねえ、
「………」カルテに滑らしていた手を遼は止めた。

「…おかるさん。今度、志麻ちゃんにメールしとくよ。ビデオ送るの程ほどにしとけって」

ハイ、次

「りょーちゃん!聞いてくれよ。ワシの娘がまぁた、離婚するんだって騒いでよお。
昨日またこっち戻って来たんだよ」
「へえ―…」
「もう3回目だよ。なあ、りょーちゃん、うちの娘どうだい?子供は3人いるが、どれもかわいいし、なあに、娘もまだまだ若い。
りょーちゃんだって、こんな田舎に落ちぶれていくわけもいかんだろうし。ほら、な、娘もりょうちゃんなら、まんざらでもないって」

「…じーちゃん。あんたの娘は今回で4回目さ」

「あんれ?そうだっけ?」
「それに若いたって、もう50近いじゃねーか」

「りょーちゃん。女は50からだよ」

………
「……あ、そう」


愚痴を聞くのも、世話話しを聞くのも、仕事。来る患者の殆どはお年寄りばっかりで、
もっこり美女がいないことは不満だ。だから助手である、さゆりへのパワハラは日常茶飯事だ。
建前で「先生!」と怒るさゆりも、何度も何度も続けば、「このスケベ変態エロドクターが!」と怒りの鉄槌を落とす。
ひえええええええ
そのたんびに遼はちょこんと座っていた香の手を引っ張って一緒に逃げ回った。
元々患者も少なく、この心療内科以外にも医院はある為、
遼はそのまま診療所を抜けて、「そしたらお昼休みで休診の札下げといてね。さゆりちゃんv」と外へ飛び出す。
子供のお守りなんて柄でもないが、医者である一方、泣き言も零さない香が気になるのは確かだった。
息抜きで町をぶらぶらするのも良い。白衣のまんまだが、その方が女の子にも受けがいい(その辺はスケベ)
それに、近所もりょうの顔を見れば、
「ああ!りょーちゃんじゃない!」とたまに医者だからこそ貰える恩恵がある。
苺を貰って、近くの井戸からくんだ水であらって、香に「ほい、」と渡した。
香はじっと見て、おずおずと受け取った。
遼はぱくぱくと口に運びながら、ちらりと遼を見上げた香に、にぃと笑みを浮かべ、一つ葉っぱを千切りそのまま赤く熟れて芳醇な香を出す苺を、ぽっと香の口に入れた。
歯で噛めば、じゅわと甘酸っぱい苺の味と香り。
少し、目を細めた香を見て、遼は何故かたまらなく頭をくしゃくしゃと撫でた。

「おいしいだろ」
こくん、頷いた香の髪が揺れた。







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