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ぼくたちは幸せになった。
そこに至るまでにたくさん、それはもう数えきれないほどに人が死んだけれど、ぼくたちは確かに幸せになった。
はずだった。
「友……?」
ふと違和感を感じて起き上がる。途端に身体がぶるりと震えた。寒い。冷たい。そういった感覚が全身へ駆け巡る。
何が、なんて分かりきったことだった。分かりたくなかったけれど、ぼくは理解するしかなかったんだ。
「……いない」
いない。いない。いない。いないいないいないいないいないいないいないいないいない。
いない。どこにも。いない。だれが。
そんなの分かりきったこと。
「玖渚 友ーー…」
隣り合わせな彼女が、そこにいない。
彼女の定位置であったその場所にはただ空虚な空間が存在してあるだけ。
ぼくは両腕で震える身体を掻き抱く。
ああ、駄目だ。これでは意味がない。どうしようもないくらいの欠陥だ。
「戯言、だ」
戻る。戻ってしまう。何もかもがあの頃のままに。
ただ、彼女がいないだけだ。出逢わなかっただけだ。彼女のもとに帰らなかっただけだ。彼女が帰ってこなかっただけ。
ただ、それだけのこと。なのに。
(なるほど、ぼくはお前を殺して生きていくのか)
それこそ、戯言だ。
隣にあったはずの温もりを胸に刻みこみ、ぼくは落ちた。
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