戯言 | ナノ




05

「そういえば鳴海先生、なんでここに?」
「んー僕?僕はね、いっちゃんに能力別クラスのことを話してなかったなぁ、て思ってね」
「能力別クラス?」

僕はまたも聞き覚えのない言葉に首を傾げる
すると何故か目の前にいる蜜柑ちゃんが誇らしげにそのクラスについての説明を始めた。だけど蜜柑ちゃんの話は擬音語が多かった。そのため能力別クラスについてあまり理解出来たとは言えないけれどつまりはこういうことなんだろう。それぞれ個々のアリスを分類して能力に合った方法で教育していく。

「ほんでほんで?鳴海先生!いっちゃんは何系なん?」
「ふふ、いっちゃんはねー特力系だよ」
「ほんまっ!?やったぁ!!」

特力系だと聞いた瞬間、蜜柑ちゃんのはしゃぎようは半端なくて。自分のことのように両手を上げて喜ぶ彼女の姿にぼくは全くついていけない。何で蜜柑ちゃんがそんなに嬉しそうなんだ。
ぼくは素直な疑問を浮かべると、どうやら彼女もぼくと同じ特力系らしい。なるほど、とぼくは呟いた。

「初等部で特力系の子ってウチしかおらんくて寂しかってん!いっちゃん来てくれてありがとおおおお」
「特力系なのは別にぼくの意志じゃないけどね」
「それでもやーーっ!!」

荒れ狂う彼女の様子によほど一人孤独を感じていたらしい。
だけどうん、蜜柑ちゃんの思いは十分伝わったから鼻水をぼくの服につけないでくれるかな。一応、これ新品だからね。
ぼくは蜜柑ちゃんの鼻水やら何やらがついた制服をどうしたものか、と見下ろしていると棗くんに哀れむような視線を向けられ、ルカくんには苦笑された。

「何か言いたいことがあるなら言って欲しいな、棗くん」
「……アイツと同じパートナーだからこっち側の人間かと思ったが、お前は違うみてーだな」
「どういうことだい?」
「幸せな奴」

そう言い切った彼の瞳はとても冷たかった。
幸せな奴。どういう意図があって彼がこの言葉を放ったのかはわからないが、ぼくにはその言葉を無視することはできなかった。
だって…あいつが居ないのに幸せだなんて、戯言だ。

「じゃあ、僕はそろそろ戻るよ。いっちゃん、これからたくさんわからない事があるだろうけどその都度、僕に聞いてくれていいからね」
「ちょっと待ってください」
「ん?なんだい?」

どないしたん?と横からの蜜柑ちゃんの声を曖昧に流して、僕は鳴海先生を真っ直ぐ見た。

「この学園に玖渚友っていう子はいますか?」

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