戯言 | ナノ




04

「そういえばいっちゃんのパートナーって誰になるんやろ?」
「パートナー?」

ぼくは蜜柑ちゃんの言葉を復唱した。パートナーとかそんな制度があるのか、この学園には。首を傾げていると、どこから現れたのか飛田くんがパートナーについて解説してくれた。

「へえ、じゃあ蜜柑ちゃんにもパートナーがいるんだね」
「うん!まあ、ウチのパートナーはいけすかへん奴やけどな」
「?」
「うるせぇ、ブス。こっちが願い下げだっつーの」
「棗!?」

棗?声のするほうへと振り返ってみれば赤い目のツンツンした男の子と金髪の優しそうな男の子。対照的だな、と思っていると棗くんとやらはギンっとこちらを睨んできた。
あれ、ぼく何かしたかな。

「あまり睨まないでほしいんだけど。ぼくはこれでも結構な臆病者でね。そんな目で見られたら持病の発作が起きそうだよ」
「え!? そんな病気あんの!?いっちゃん大丈夫っ?」
「慌てないでよ、戯言だから」
「え?え?」
「気味悪ぃ」
「ありがとう」
「ほめてねーよ、アホ毛」
「おい、棗……」

どうやら少しからかいすぎたらしい。棗くんの眉間にはどんどん皺が刻まれていく。
まだ小学生なのにこんな顔するなんてよほど環境が悪かったのか。彼を宥めるように金髪の男の子は彼の名前を呼ぶ。それで止まるようだったら苦労はしないんだけどね。

「ねえ、兎を抱いてるそこの君」
「え、オレのこと?」
「うん、そうオレ。君もぼくが気持ち悪いと思うかい?」
「ちょっ、何言うてんの!?」
「蜜柑ちゃんはちょっとストップ」
「う」
「で、どうかな?」

私の発言に蜜柑ちゃんは驚き、棗くんはますます機嫌が悪くなった。この子のことが大事なのかな。さっきより眉間の皺が増えてる。
ルカ、相手すんな。と呼びかける棗くんだけど、先にちょっかいかけてきたの君だからね。ぼくはむずむずしてる蜜柑ちゃんを押さえながら、ルカくんに促した。

「……気持ち悪い、とは思わないけど……その眼は少し怖い」
「ふーん、正直だね。君は」
「おい、ルカ。もうほっとけ」
「話を振ってきたのは棗くんだけどね」

ぼくと棗くんの間には険悪な雰囲気が漂い始めた。まさに一触即発。その雰囲気を見事に吹っ飛ばしてくれたのは蜜柑ちゃんだった。

「うー、それにしてもいっちゃんのパートナーって誰やろ?」

自由だな、蜜柑ちゃん。ぼくは君のスルースキルにちょっと驚愕だよ。
それにしてもパートナーか。確かにこの広い学園のことだからいてくれるに越したことはないんだけど。なんだかあまり気乗りしないなあ、と考えていると頭上から声が降ってきた。

「いっちゃんのパートナーは汀目君にしてもらうことにしたから」
「え」

そうにっこりと笑うのは鳴海先生。こっちで勝手に決めたんだーと楽しそうに彼は言う。
汀目、ね。あまり聞きなれない苗字にぼくは誰だろうとクラスを見回す。だけど汀目くんらしき人が見つからないどころか、クラス中がぼくのパートナーの名前に反応した。

「おい、あの転入生のパートナー汀目だってよ」
「まじかよ、またなんで?」
「いったい何者よあの子」
「でもなんとなく雰囲気似てね?汀目と転入生」

おうおう?なんだなんだ。パートナーの汀目くんはそんなに有名人なのか。
一気にざわめくクラスにぼくは目をぱちくりとさせる。それは蜜柑ちゃんも同じで彼女もつい最近転入してきたから汀目という人物のことは知らないらしい。
ということはここ最近はこのクラスに一回も顔を出してないということか。

「彼は今、軽く仕事をこなして貰ってるんだ」
「仕事?」
「そう、彼にしかできないことをね。でももうそろそろ帰ってくると思うよ」

仕事と鳴海先生が言った時、若干棗くんの表情が険しいものになったけど汀目くんには何かあるのだろうか。
結局、ぼくのパートナーについては分からずじまい。楽しみにしててよ、という先生の声だけが反響した。

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