障子を音をたてないようゆっくりと開ける。
室内に視線を向けたときもっくんと目があったけど光の速さで逸らされた。

…普通反応逆じゃない?
私が視線逸らすところじゃない?
理由はもちろん今朝のあれだ。
私的には、まあ相手は人間じゃないし。
騰蛇の周りには私なんかとは比べものにならないくらいの美人さん沢山いるし。
約一名腕も脚も惜しげなく見せてる美女いるし。
いまさら小娘のキャミ姿見たってどうってことないだろう。
という結論に行き着いたので、気にしないことにした。


しかし、当のもっくんの反応が初々しすぎる。



「もっくん、顔が赤いけれどどうかしたの?」



彰子に抱きかかえられ、私の方へ連行されてくるもっくん。
あたふたしてる。雰囲気と視線が。どうしよう、って顔だ。



「な、んでもない…っ!」

「気にしなくてもいいのに…。」



もっくんに軽く苦笑を浮かべ、私は未だに眠っている昌浩の傍らへと移動する。



「昌浩ー。起きてー。」



幸せそうに眠っている昌浩をゆすってみるが反応はない。

…どうしてくれようか、こいつ。



「起きろー。早く起きないともっくんを顔面に叩きつけるぞ。」



後ろから抗議の声が聞こえてきたけどスルー。
もっくんが顔面にのってたらものすごく息苦しいと思うんだよね!



「んー…?」

「あ。起きた。」



うっすらと開いた瞳ににっこりと笑いかける。
少しの間眠そうに数度目を瞬かせた後、目を大きく見開いて昌浩は飛び起きた。



「ね、姉様っ!?な、なんでここに…っ!?」

「なんでっていわれてもなー。昌浩を起こしにきたんですが?」



彰子まで!?とさらに驚いている昌浩。
うん。朝から元気そうで安心したよ。
若いって素晴らしいね。

昌浩が完全に目を覚ましたのを確認して部屋を出る。
結局もっくんに何も言えなかったな。
…まあ後で会うだろうし、その時でいいか。
自己完結をして、彰子の方へ顔を向ける。



「彰子、調子は…、」



どう、と最後までいえなかった。
目の前で彰子の四肢が崩れ落ちる。



「っ彰子!?」



反射的に腕を伸ばし支えようとするが、何分腕力が足りず一緒に倒れてしまう。
それでもなんとか彰子と床との間に入った私を誰か褒めてくれ。
内心で自分自身に拍手を送っておく。



「ご、ごめんなさい…咲夜…。」

「だいじょーぶ。彰子、どこか打ってない?」

「え、ええ…、」



顔を真っ青にしながらどけようとする彰子。
思った以上に彰子が軽かったので私にさしてダメージはない。
しいて言うのなら、体の後ろ部分を強打したことくらいか。

なんとか立ち上がり、彰子を支える。
が。彰子は体に力が入らないのかほぼ全体重がかかってくる。
これはさすがに…。今にも倒れそうな自分の体を根性で支える。



「彰子!」



背後から昌浩の引き攣った叫びが聞こえた。
首だけをなんとか向けると、昌浩がこっちへ駆け寄ってきた。
その後ろからもっくん。



「彰子!どうした!?」

「ちょっと、目の前が真っ暗になって…。」



私達の前へと回りこんできた昌浩。
彰子は弱々しい声でそれだけ答えた。



「昌浩!彰子頼める!?」

「う、うん」

「彰子。今朝渡した紙かして?」

「え。はい…。」



彰子から手渡された紙に渡したときの白さはなく、どす黒く染まっていた。

これだけじゃあ弱すぎたのか!
ぐっと紙を握り、小さく口の中だけで呪を唱える。
変色した紙は一瞬の間に塵となって消えた。



「咲夜、今のはなんだ?」

「お守り!もっくん、晴明様呼んできてくれる!?」

「…わかった。」



もっくんの姿を見送り、私は身を翻す。



「姉様、どこに行くんだ!?」

「調べ物!」



一言返し、塀を飛び越える。


もし、私の考えがあたっていれば…!

外れていることを祈りながら、私は土御門殿へと急いだ。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
そして勝手に駆け出す。



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