「朱雀、酷い…。」



只今庭で朱雀と剣のお稽古中。
稽古なんて生易しいものじゃないよ、これ。容赦がなさ過ぎる。
…まあ、手加減はしているんだろうけど。
でなきゃ今頃骨とかその他諸々がぼろぼろのぼきぼきだ。



「弱すぎるぞ、咲夜。」

「うるさいこのやろう。ここに来るまで普通の人間だったんだよ咲夜ちゃんは。」



陰陽術とか妖が見えたりするのはスルーで。そこ突っ込まれたら弱いから。
私は尻餅をついた状態で朱雀を見上げている。
隣には弾かれた竹刀が落ちている。
そんな私見て、はあ?と朱雀が言った。



「普通の人間が陰陽術使えるかよ。」

「そこ突っ込まれたら弱いから!」



よっ、とばばくさい…ゴフッゴフッ…掛け声と共に起き上がって、横に落ちている竹刀を手に取り、構え直す。
女は毎日出仕しなくていいらしいので、邸にいる日は、朱雀達に剣の稽古やこの時代のことを教えてもらっている。
私が構えなおしたのを見て、朱雀も構え直す。勝てるとは思っていないけど、というか絶対無理だ。でも一本ぐらい取りたい。
構えたまま停止していると、庭に神気が降り立った。
見ると、太裳がにこにこ微笑みながらこちらに向かってきていた。



「邪魔してしまいましたか?」

「ううん、大丈夫だよ。」



ひらひらと手を振って竹刀をおろす。
朱雀は私の隣にいつの間にか来ていた。



「どうした?」

「いえ、先日翁に頼んでいた物ができたので。」



先日?翁?頼んだ?
私天空に何か頼んだっけ?
頭の上にクエスチョンークを飛ばしている私に、太裳は苦笑しながら、ひんやりと冷たい感触のものを手渡した。
手の中にあるものを見て、あっと声をあげる。



「首飾り!」

「もっと早くお渡しできればよかったのですが…。」

「いやいや、造ってくれただけでも有難いって!」

「…晴明に頼めばいくらでも買ってくれると思うぞ。」



横でぼそっと朱雀が言ったのが聞こえ、私は朱雀を見上げて苦笑する。



「居候させてもらっているだけで感謝してもしきれないほどなのに。その上首飾りが欲しいので買って下さいなんて我が侭言えないよ。」



そうか?と朱雀は首を傾げる。



「天空に何かお礼をしないとなあ…。わざわざ造ってもらったんだし。」

「礼はいらないと言っていましたよ?」

「うわ、本当?」



太裳の言葉に眉根を顰める。
どうしよう。それに、お礼しようにも、何をすればいいのかわからないし…。
あ゛ー、と頭を抱える私を、太裳は困ったように、朱雀は面白そうに見ていた。
が、次の瞬間、ぴたっと動きが止まる。

うなじの辺りを、なにかひんやりとしたものが撫でていった。全身の血が下がる。



「この間、夜行が出没した辺り…!?」

「おい、咲夜!?」
「咲夜様!?」



言うが早く、走り出す。
驚いた二人の声が聞こえた。

きっと昌浩も気付いて向かっているはず。
それに、この先にある気配は…。
あの時、鴉と話していた女性だ!
襲われているのだったら、急がないと!

強く地を蹴りながら、胸を侵食していくもやもやとした言い知れぬ不安に、きつく拳を握った。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
神将と仲良し。



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