「昌浩、大丈夫かな。」
《大丈夫ではないと思いますよ。》
今日の護衛は太裳。さらっと恐ろしいことを…。
書物を持ち、てくてくと歩きながら私は苦笑いを零した。
他の人に見られたり、聞かれたりしては大変なので、話し声は小さめ。
「これが終わったら様子を見に行っていい?」
《…まあ、いいでしょう。》
お許し貰った!さっきは止められたんだよね。仕事終わっていなかったから。
さっさと終わらせてしまおう。
さっきよりも早足で歩き始める。
《咲夜様は…》
太裳が口を開いた。
「ん。何?」
《こちらに来た理由は、ご存知なのですか?》
あー、そういえば言ったような言ってないような。
連れてこられた訳は言っていなかったんだっけ。
「なんか守れって言われちゃって。」
未だになんなのか知らないけれど。
そういえば空はこの頃まったくと言って良いほど音沙汰なしだ。
今度防人のことと合わせて、高於に会わせてもらおうか。
《守る?》
「うん。ものすごくアバウトでしょ。」
《あば…?》
「ごめん。気にしないで。」
日本語以外は使用禁止。この時代にある言葉だけ使わないと。あっちの時代は変な言葉いっぱいがあるし。
さ、早く昌浩の所行かなくちゃね。
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「いやいや。成親は確かに占術には長けてるけどなぁ。暦博士に早々昇進もしたけどな、あれはもともと作暦が得意だってだけで、昌浩は大の苦手だから、そこを比べられてもなぁ。」
ぶつぶつとなにやら呟いているもっくんを発見した。
…なにしてるの。
「あ、敏次殿。ご苦労様です。何を呟いておられたのですか?」
「咲夜様。いえ、少し…。」
もごもごと口ごもる敏次殿。
なんなんだろうか?
「そ、それでは失礼します。」
そう言ってそそくさと去って行ってしまう。もっくんもその後に続く。
…何もしなければいいけど。ものすごい不安なのはなんでだろうか。
《行かなくていいのですか?》
「行く行く。ごめんね、無駄な時間とらせて。」
《いえ。気になさらないで下さい。》
そお?と向くと、頷いてくれた。いい人だなあ、太裳。
しみじみと思いながら歩いていると、昌浩がいるところへ着いた。
「昌浩。」
「姉様!?どうしたんですか?」
「仕事も終わったし、無理してないかなーと思って。」
そう言うと、昌浩は目を見開いて、少し照れたように笑った。か、可愛い…!その笑顔は反則でしょう!?
「あ、もっくん。どこ行ってたんだい?」
「んー、ちょっと。敏次に対する傾向と対策を練りに。」
「なんだ、そりゃ。」
昌浩が訳がわからないと言うような顔をする。
なるほど。それで敏次殿に着いてまわっていたのか。
「じゃあ、私は帰らせてもらうね。」
「は、はい。どうしたんですか?」
「ちょっと出かけようと思って。」
いや、今思いついたんだけどね?
前々から思っていたことを実行に移そうかな、と。
太裳も居るし、怒られはしないだろう。
じゃあね、と言うと可愛く気をつけて、と返されてお姉ちゃん死にそう。死因は萌え死。
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ブラコンになりつつある(笑)