「昌浩、大丈夫かな。」

《大丈夫ではないと思いますよ。》



今日の護衛は太裳。さらっと恐ろしいことを…。
書物を持ち、てくてくと歩きながら私は苦笑いを零した。
他の人に見られたり、聞かれたりしては大変なので、話し声は小さめ。



「これが終わったら様子を見に行っていい?」

《…まあ、いいでしょう。》



お許し貰った!さっきは止められたんだよね。仕事終わっていなかったから。
さっさと終わらせてしまおう。
さっきよりも早足で歩き始める。



《咲夜様は…》



太裳が口を開いた。



「ん。何?」

《こちらに来た理由は、ご存知なのですか?》



あー、そういえば言ったような言ってないような。
連れてこられた訳は言っていなかったんだっけ。



「なんか守れって言われちゃって。」



未だになんなのか知らないけれど。
そういえば空はこの頃まったくと言って良いほど音沙汰なしだ。
今度防人のことと合わせて、高於に会わせてもらおうか。



《守る?》

「うん。ものすごくアバウトでしょ。」

《あば…?》

「ごめん。気にしないで。」



日本語以外は使用禁止。この時代にある言葉だけ使わないと。あっちの時代は変な言葉いっぱいがあるし。

さ、早く昌浩の所行かなくちゃね。

**********

「いやいや。成親は確かに占術には長けてるけどなぁ。暦博士に早々昇進もしたけどな、あれはもともと作暦が得意だってだけで、昌浩は大の苦手だから、そこを比べられてもなぁ。」



ぶつぶつとなにやら呟いているもっくんを発見した。
…なにしてるの。



「あ、敏次殿。ご苦労様です。何を呟いておられたのですか?」

「咲夜様。いえ、少し…。」



もごもごと口ごもる敏次殿。
なんなんだろうか?



「そ、それでは失礼します。」



そう言ってそそくさと去って行ってしまう。もっくんもその後に続く。
…何もしなければいいけど。ものすごい不安なのはなんでだろうか。



《行かなくていいのですか?》

「行く行く。ごめんね、無駄な時間とらせて。」

《いえ。気になさらないで下さい。》



そお?と向くと、頷いてくれた。いい人だなあ、太裳。
しみじみと思いながら歩いていると、昌浩がいるところへ着いた。



「昌浩。」

「姉様!?どうしたんですか?」

「仕事も終わったし、無理してないかなーと思って。」



そう言うと、昌浩は目を見開いて、少し照れたように笑った。か、可愛い…!その笑顔は反則でしょう!?



「あ、もっくん。どこ行ってたんだい?」

「んー、ちょっと。敏次に対する傾向と対策を練りに。」

「なんだ、そりゃ。」



昌浩が訳がわからないと言うような顔をする。
なるほど。それで敏次殿に着いてまわっていたのか。



「じゃあ、私は帰らせてもらうね。」

「は、はい。どうしたんですか?」

「ちょっと出かけようと思って。」



いや、今思いついたんだけどね?
前々から思っていたことを実行に移そうかな、と。
太裳も居るし、怒られはしないだろう。
じゃあね、と言うと可愛く気をつけて、と返されてお姉ちゃん死にそう。死因は萌え死。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ブラコンになりつつある(笑)



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