朝、草木が朝露に濡れて煌めいている時間。晴明様に言われて、陰陽寮に初出仕を果たしました。
上司の方に挨拶をして、私がやるべき仕事の内容を教えてもらい、早速仕事にとりかかる。定刻には帰ってもいいとお許しを貰ったので、力が入る。
そう、ただ出仕するだけのはずだった。だけのはずが。



「なんでこんなことになるのー!」



安倍咲夜。只今藤原敏次から全力で逃走中。
なんでそんなことになったかと聞かれれば、それは噂が広まるのがとても速い陰陽寮が悪い。
女の私が出仕をすることが、陰陽生や貴族様やの間で噂になり、一日もかからず知れ渡ってしまっていたのだ。
しかも。晴明様の孫だということも噂になって(というよりなること知ってたな晴明様)敏次殿の耳にその噂が入ってしまい、その折に、運悪く私が敏次殿に発見され…。



「椿の君…!」



なんて追ってくる敏次殿から全力疾走で逃げるはめになった。
椿の君ってなに!?あんな綺麗な花に喩えられても嫌味にしか聞こえないわ!?



「おお、咲夜殿!こんな所に居られたのですか!」

「と、敏次殿…!」



そして、ここからが一番面倒くさい。



「私を救ってくださったのは咲夜殿なのですか…!?」



妙に期待をした目でこっちを見るな!
じりじりと後ろへ下がるけれど、あちらも近付いてくるので意味はない。
ちくしょう、訴えてやろうか変態め…!



「それは…、」



ああもう、どうしたらいいの!素直に言うべき!?
助けを求めて今回の護衛である勾陳の方を見る。



《…言ってみたらどうだ?》



そんな…。そんな…。

言った後を見るのが楽しみだ!的な瞳をしたまま言わないで!
貴女絶対この状況楽しんでるでしょう!?



「咲夜殿、どうなのですか!」

「うっ」



どうする!どうする私!?
どうするアイ●ルー。

懐かしいBGMが私の脳内を全速力で駆け巡った。



《ほら。言ったらどうだ?》



こ、勾陳…。
これで後が大変なことになったら勾陳のせいだからね!
私は心を決めて、というよりも諦めて敏次殿の顔をしっかりと見据えた。



「…そうです。体調は大丈夫ですか?」

「やはり…!」



きらきらしていた敏次殿の瞳がさらにきらきらしてしまったのを私はしっかりと見てしまった。
ああ、もう。私知らないからね。
がっくりと肩の力を抜いた。
横で隠そうともせず笑っている勾陳。
貴女後から覚えとけよ…!
まず当面の目標は、この瞳をきらきらさせている人から逃げ切ることに決定しました。




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