ぱちぱち。火桶の炭が爆ぜる音が響く。



未だに身体の芯きまで伝わって来る程の冷たい外気が温められていくのを感じながら、私はあるものとの睨めっこを続行する。
睨んでみても微動だにせず、むしろ「どや!」とそこにあり続けるそれ。


いっそ溶けてなくなってしまえばいいのに。
しかし今は冬だ。
雪で簡易冷蔵庫が作れちゃう季節だ。

溶けるはずがない。


じゃあ消滅しろ。
粒子レベルまで粉々になって抹消されてしまえ。


願ってみても、私の文台の上にあるそれはうんともすんとも言わない。
ちくしょう、なんでこんなことで私が頭を悩ませなくちゃいけないんだ。

そもそも渡す順番ぐらいどうでもいいじゃないか。
最終的には皆にあげるんだから。


またひとつため息を吐いてそれを見る。

この平安の時代にチョコレートなんてものがあるなんて期待などしていなかったので、私に作れる範囲で1番手のかかるものを作り、申し訳程度に全て違う色の和紙でラッピングしたもの。
日頃の感謝と親愛を存分にぶち込んだそれ。




そう。所謂バレンタインプレゼントだ。


別に、あげるのが恥ずかしい!なんて乙女な恥じらいは現代っ子である私には今更ない。
本命チョコがあるわけでもないし。
そこは別に問題じゃないんだよ。

それじゃあなんで私がこんなに頭を悩ませているのかって?
それはほら、あれだよ。
ああもう…。去年、ホワイトデーに甘味をあげた際、バレンタインとホワイトデーについて説明を迫られたので教えたのが駄目だったかな。
昨日未明、なぜか数名の人物から、出来たら最初に自分に渡せやコルァと言われてしまった。

だから最終的には皆にあげるんだってば。


そうは言っても言ってきた数名は最初にあげないと確実に拗ねてしまうだろう。
若干名は拗ねたら拗ねたで可愛いけど、大多数が拗ねたら心底面倒臭い人物だらけだ。


私にどうしろと。


そんなことをぐるぐると考え続けて早数刻。
早朝に出来上がった甘味と睨めっこをしていたらいつのまにやら太陽さんはおはようしていて朝日が眩しい、ぜ…。

ああ!どうしよう!



「いっそのこと女性陣に最初に渡しちゃう!?」



とてもナイスで素晴らしい考えだと思います。



どうしよう、どうしよう。

またぐるぐる頭シャッフルフルパワーで考えた末。



「よし、決めた!」



いつもお世話になってるし。
迷惑かけまくっている気がしないでもない。

うんうん、と心の中で勝手に頷いてあの人に決定。
そうと決まれば他の人と遭遇しない内に渡しに行こう!


文台の上に置いてあった包みのうち、その人に渡すようの色の包みを持って立ち上がる。えいやさっ。
目的の人物が居るであろう場所を思い浮かべて、さあ、いざ行かん!

日頃の感謝を伝えるのだ!






Color:BROWN




(チョコレート色)
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