《…何をしている?》



目の前では、1人の少女が一心不乱に何かをつくっていた。



「ひゃ!?…誰かと思ったら六合かあ。いきなり後ろから声かけないでよー、心臓が口から発射されるところだったじゃない。」



こちらをいきおいよく振り向いた咲夜は目を丸くしてから口を尖らせそう言って来た。
口から心臓が発射されることはないと思うが。

またすぐになにかを作り始めた咲夜の横へと移動する。
邸の庭であるここは、今は一面銀色だ。
昨夜降った雪に覆い隠されている。
そんな中、咲夜は素手で雪を触っていた。

ちらりと見えた手は真っ赤だ。



《風邪を引く。そろそろ戻れ。》

「えー。そりゃあないぜジョニー。まだ完成してないんだよー?」



抗議の声をあげつつ、視線は地面を向いたままだ。

一体何を作っているんだろうが。
わからないが、それを作り終わるまでは絶対に動かないのだろう。

はあ、と1つため息をついて長布を咲夜の肩にかけておく。
少しは寒さが紛れればいいが。
驚いたようにこちらを見上げた咲夜は、満面の笑みで。



「ありがとう、六合。」



その笑顔に一瞬、心が何かを言った気がするがそれがなんなのかはわからない。
わからないが、咲夜が作り終わるまでは傍にいよう。

お互い、何を喋るわけでもなく、ただ時間だけが過ぎていく。
そしてどれくらいのときが経ったのかわからなくなったとき。



「できたぁぁぁぁ!」



咲夜がとても嬉しそうに叫びながら立ち上がった。



「できた!できたよ六合!私ものすごく頑張った!」



見て見て、と腕を引っ張られる。
そのはしゃぎように苦笑しつつ、咲夜に言われた場所を見る。

そこには、十六体の雪うさぎがいた。
大きさや葉でつくられた耳の位置、それぞれに描かれている模様までもが全て違う。


これをつくっていたのか。



「どうどう!すごくない!?」

《ああ。どうして、こんなに沢山?》

「あー。やっぱりわかんないかー。」



わかる、わからないではない気がするが。



「これね、私と昌浩と晴明様と彰子と十二神将の皆だよ。」



この十一体が晴明様たちで他の五体の雪うさぎを見守っているところ。
この三体が昌浩と彰子ともっくんで、三人でじゃれあっているところ。
それでこの二体が私と六合で昌浩達を微笑ましく見守っているところ。

笑顔で雪うさぎ達を指差しながら歌うように言う咲夜。



「ふっふー。どうどう?この雪うさぎたち!見ていてにやけない?」

《…ああ、》



自然と笑みが零れたのがわかった。咲夜も笑い返してくれる。



《晴明に言いに行こう。喜ぶ。》

「うん!」



勢いよく立ち上がり、そのまま倒れそうになる咲夜。
反射的に腕を引っ張ると、ありがとうと照れたように微笑んだ。

そのまま、咲夜の冷え切った手を握り、歩き始める。




とある冬の日



(ずっとこんな日常が続けば)
(どれだけ幸せだろう)
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