「ねえ青龍。」
《なんだ。》
「巡回行っていい?」
《駄目だ。》
「なんで!?いいじゃんちょっとぐらい!」
《出すなと命じられている。》
「そんな命令知らないよ!」
現在物忌み中の私こと安倍咲夜。
一日中自室に引き篭もり状態だったので、運動も兼ねて夜の京へと行きたいと言ってみたら見事玉砕しました。
《貴様はそれでも女なんだ。少しは大人しくしたらどうだ?》
「それでもは余計だこのやろう。」
ぶっすー、と膨れてみる。我ながら餓鬼っぽいとは思いますよ、ええ。
でもこれぐらいしか対抗手段がないんだよ!
《……。》
「……。」
《……。》
「……。」
《……。》
「…あ。」
しばしの無言の攻防戦の後、青龍がなんの前触れもなくその場から姿を消した。ちくしょう、隠形しやがったな。
……ふ。
今のうちに脱走しちゃえ☆
そろりそろりと廊下に出て、左右を見る。
よし、誰もいない。
「ふははははっ!目を離したのが失敗だったぅおっ!?」
意気揚々と一歩踏み出した瞬間、襟首を思い切り引っ張られた。
く、首絞まるっ。
「ゲホッゲホッ」
首の圧迫感がなくなったと同時に咳き込む。
きっと後ろを見るとそこには眉間の皺が増えた青龍さん。
「し、死ぬかと思ったじゃない!」
《……。》
うっすら涙が溜まった瞳で睨むが、華麗にスルーされた。
「…わかったよ。今日は大人しく寝る。」
無言で見てくる青龍についに折れてしまった。
いそいそと褥へと戻り、掛け布団を被る。
傍らに青龍が座ったのがわかった。
「大丈夫だよー、もう脱走試みたりしないから。」
《……。》
「青龍?」
少し、様子の違う青龍に首を傾げる。
《…明日、》
「え?」
《明日、市へなら行ってもいい。》
「……。」
《……。》
「……。」
《…いやなのか。》
「ぜ、全然!すっごい嬉しい!」
《……。》
あ。一瞬、ほんの一瞬。
青龍が笑った気がした。
心なしか、眉間の皺が少ない気がする。
「そうと決まれば早く寝なくちゃ!」
《…ああ。》
「おやすみ、青龍。」
明日は、
いい日になりそうだ
(あったかくて)
(とてもいい夢が見れた)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
丸い青龍。