雲ひとつない晴天。
澄み切った空気の中洗濯物が入った籠を持って宮の中を歩く。

何故か、な、ぜ、か!白色の服ばかりを渡されるので、洗濯はとても重要なのだ。
白さを保つのは大変なのだよ…。



「よっ…。」



目的地まで辿り着き、籠を置いて一息つく。
黄色い小鳥達が飛び立って行くのが見えた。
ふわりと風に髪が揺れる。ふわふわ。

ああ、平和だ。

ハーデスさんという人…神様?が率いる軍と戦うと言っていたけれど、今日も何事もなく平和に過ぎていく。
それもハーデスさんが目覚めるまでだ、ってマニゴルドさんは言っていたけれど。
だったらずっと目覚めないでいて欲しいな、なんて。
だってそうすれば、忙しそうに各地に赴いているシジフォスさんだってゆっくり出来るはず。



「…それに。」



そっと花輪に指で触れる。

それに、また皆で暮らせるかもしれないでしょう?
ふわふわ。髪が踊る。
空を見上げれば、先ほど飛び立って行った鳥達が仲良く飛んでいた。

ねえ、争いなんて、現代日本で生きていたわたしにはまったく想像ができないの。
知り合いが亡くなるのも、寿命や事故ぐらい。
戦争とか、紛争とか、どこか遠い世界のお話だった。
ましてや人同士が殺し合うなんて、考えても考えてもわからない。
だから、そんなわたしから見れば、話し合ってみて争わなくて済むなら、それが一番いいんだ。
でも、この戦いはずっと昔から繰り返されているんでしょう?
勝つか負けるかしか、ないんでしょう?

昔からの運命ってやつで、皆が戦わなくちゃいけないのだとしたら。
わたしは、何があっても願い続ける。


どうか、どうか皆のその命が、消えませんように。





お願いです神様


皆を連れていったりしないで



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