Face is important
 


この世界に来て、初めてハンマーヘッドと言う町に向かう途中、いつになくプロンプトの様子がソワソワしたモノになっている事に気が付いた。

そして、それをいち早く察したノクトがニヤニヤと笑いながら「プロンプト〜」とどっからどう見てもからかい半分にプロンプトの肩を突きながら絡んでいるのを目撃する。
その事に疑問を抱き、グラディオとイグニスに何故かと聞いてみたが、2人も「んーそうだな、いや、俺からは言えねぇなぁーなぁ、イグニス?」「そうだな、そんなに気になるのなら自分の目で確かめると良い」とこれまたノクトと同じ様な笑みを口元に浮かべながら、はぐらかされた。

最初こそ何をそんなに皆楽しそうにはしゃいでいるのだろうと思っていたのだが、現場に到着して直ぐにその正体が分かった。

若い女の子だ。

溌剌とした性格に、見るからに発育の良い身体付き、惜しみ無くおへそや太腿を露出した格好は正に年頃の男子の理想と言えるだろう。
おまけに車、機械に強いときたら、それはそれは一部のメカニック好きな男子にとっては、色んな意味で是非とも御近づきに成りたい人物だろう。

そして、プロンプトはこの子に会うのを楽しみにしていた様だった。それがメカニック仲間としての意味なのか、はたまた色恋を含んでの意味なのかは、私には測り兼ねた。


「プロンプト、お前も男ならシドニーにビシッと連絡先くらい聞いたらどうだ?」

「だ、だから違うって!俺は別にそーゆーのじゃ無いってば!!」

「いや、案外すんなりに教えてくれるかもな?」

「ノクトまで適当な事言わないでよー?!」


ニヤニヤニヤニヤと楽しそうにノクトとグラディオがプロンプトをからかっている。あそこまでいくと逆にプロンプトに同情したくなってしまうな…
私は別段プロンプトをからかうつもりも絡む予定も無い為、3人のやりとりを横目に、イグニスと話し合いながら今後の献立を決め、買う食材を選んでいく。

あらかた食材を買い込み、お店を出た所で、


「なー!名前もそう思うだろー?」


少し離れた車の位置から大声でノクトに意味の分からない同意を求められた。
その横でプロンプトが「ちょっとノクト、何聞いてんの?!!」と焦り気味で騒いでいる事から察するに、話の前後関係は分からなくとも、プロンプトにとっては余り良く無い事なのだろう。

さて何て返そうか、ノクトに便乗してからかうのも良いが、これ以上からかうのは可哀そうだとノクトに注意するのも良い。
一瞬悩んだが、答えは直ぐに決まった。


「プロンプトは、今のままで充分格好良いよー!」


自分にとっては精一杯のフォローのつもりだ。
大声で手を振りながらそう笑って返すと、プロンプトは私を凝視したまま固まった、と思ったら顔を真っ赤に染めて「名前も、な、何悪い冗談言ってんのっ??!」と慌てた様子で近付いて来たなと思ったら手に持っていた買い物袋を分捕られた。

その様子を見ていたノクトは思わず吹き出し、お腹を抱えヒーヒー笑いながら満足気に「やっぱお前ら最高だわ!」と涙目で言ってきた。
プロンプトは兎も角、私まで笑われるのは納得いかない…


「え、私、何か間違えた??」

「いーや、全然、寧ろ満点だな」


ノクトの隣で同じく笑っていたグラディオに目線を送り聞いたが、彼は首を左右に振った。
満点ってどう言う事よ、満点って…

次に私の後にお店から出て来たイグニスに顔を向けたが、何の事だかさっぱりと言う顔をされた。そりゃそうだ、何てったて彼は私と買い物をしていて会話の内容も状況も知らないのだから。

自分は精一杯フォローしたつもりなのに、相手からしたらフォローになっていないのかと微妙にショックを受けながら、3人の立っているレガリアの元へとイグニスと歩いて行く。
因みにプロンプトは私の手から買い物袋を分捕ると、またドタドタと早足でレガリアの元へと戻り、荷台に買い物袋を詰め込んでくれた。
その事にプロンプトの隣に行き「プロンプト、荷物ありがとね」とノクトに聞かれてプロンプトがまたからかわれ無い様に彼にだけ聞こえる様にコッソリお礼を言う。


「へ…あ、うん!えへへ、どう致しまして!」


一瞬キョトンとした顔をしたが、照れ臭そうに、嬉しそうに笑ったプロンプトを見て、やっぱり彼はそのままで充分素敵だと思った。


「お前らいつまでそうしてんだよ。もう行くぞー」


ノクトがレガリアに乗り込みながらまだ乗っていない私達に声を掛けてくる。それに「はーい」と返事をしながら、「あ、そうだ!」ともう一度プロンプトを呼び止めた。


「ねぇ、プロンプト」

「ん?何?」

「さっきの言葉、プロンプトは“悪い冗談”って言ったけどさ」

「え…」

「冗談、じゃ無いからね?」


なんだか照れ臭くて「えへへ、それだけ!」と笑って、逃げる様にさっさとレガリアへと乗り込んだ。
それをポカーンとした顔で見ていたプロンプトが、いきなり大声を出で、「え、ええぇぇぇ!?!ちょっ、名前、それどう言う意味っ?!!」と私が乗り込んだ後部座席の扉を勢い良く開けて言うもんだから、「うるせえ!プロンプト置いてくぞ!!」と奥に座っていたノクトに怒られた。
それにごめんごめんと謝りながら助手席に乗り込んで、背後を振り返り「それで今のってー!!」と話を続けるもんだから、流石に私も恥ずかしくなって「さあねー!」と笑ってはぐらかした。


「はは、こりゃ、傑作だわ」

「名前の方が一枚上手だったな」

「はー俺もう知らね…」


私達のやりとりを見ながら、グラディオとイグニスは笑っていた。ノクトはノクトで言葉の通りもう知ら無いと言いたげに寝始める。
それに気付いたイグニスが「おい、ノクト、今寝ると夜眠れなくなるぞ」と間髪入れずに注意する。
それに対してノクトは「はいはい分かりましたよー」と面倒臭そうに投げやりに返事をして、私の肩に頭を預けて寝る体勢をとる。
って結局寝るんかい。
私がそう突っ込みそうになって、運転席からイグニスが「ノクト…」とお小言を始め出しそうな雰囲気になったのを察して、「まあまあ、イグニスそのくらいに…」と間に入った。

はあ、何で私が…と思ったが、私の肩に頭を預けたノクトが「サンキューな、名前」と目を閉じながら言ったのを見て、このイケメンめ、顔面偏差値高過ぎか?イケメンだからって何でも許すと思うなよ、今回は許すけど…と思った。
嗚呼、面食いな自分が憎らしい。


何てったて“顔は大事”
 


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