気になる彼奴の人の○○を掴め- ギルガメッシュ -


ギルガメッシュ夢、ギルガメッシュ視点。
幼い頃の夢主、教会住み設定。
夢主複雑設定な為詳細はこちら




その人はーーー


キラキラ、キラキラ、輝いて、

いつも自信満々で、不敵に笑ってて、

誰に何を言われようと己を貫いて、

眩しいくらいに、目が眩むくらいに、


ーーーーキラキラ輝いて居た。


其れはまるで、一種の宝石の様に


私なんかじゃ到底手の届かない、私なんかが軽率に触れて良い訳が無いと、子供心ながらに感じさせられた人だった。
恐れ多いと触れる事を躊躇して、与えられる好意に不安になって、向けられる感情に戸惑って、私は、貴方様がせっかく差し出して下さった手を、握り返す事が出来なかった。



*気になる彼の人の○○を掴め
 - ギルガメッシュ - *



「・・・貴様、何をしている…」

「……」

「この我が、この英雄王たるこの我が、わざわざ貴様の為に手を出してやっているのだ、喜び勇んで握り返すのが当然であろう?」

「………」


こちらに来いと手招きし、側に近付いて来たまでは良かったのだが、「ん」と無造作に差し出した我の手を、どんなに言い聞かせても、どんなに睨んでも、目の前の雑種はこの我の手を握ってくることは無かった。
ただ無言で、俯いて、首を左右に振るだけだった。


「貴様は我が拾ってやったのだ、すなわち我のモノだ。そんな貴様が我の命令が聞けぬと申すか…?」

「…ごめん…なさい…」


この我を目の前にして、出て来た言葉はそれだけ…
俯き、前で両手を弄びながら、今にも泣きそうな顔で、如何にも幼いながらに必死に言葉を探し、絞り出した声で謝罪した。


「我が聞きたいのはその様な返事では無いわ、たわけ!」


「たわけ!」と我が言うとその幼子はビクリッと身体を恐縮させた。ああ、違う。我がしたいのは、させたいのはその様な顔では無い。

笑顔にしたい、などと偽善者振って言うつもりは無いが、ただ、本来の子供らしい顔つきにしたい…とは思う。
ただ無邪気に幼子特有のコロコロと表情を変える様が見たいのだと、人形然とした何も面白味の無い、無表情よりは幾分かマシにはなるだろうと、思っては見たのだが……


「(これでは埒が明かぬでは無いか!!)……チッ」


舌打ちをしたい気分だ。
否、既にしていた。
どちらにしろ、我が何を言おうと、我が何をしようと、此奴が頑ななのには変わりはない。
どうしたものか…と考えていると、おずおずと言った雰囲気で幼子が我に問いかけて来た。


「あ、の…っギル様…?」

「なんだ…?」

「怒って…る、のです、か…?」

「………」


此奴が何が言いたいのか考えあぐね、肯定も否定もしないで偏に見詰め、様子を伺っていたら、此奴の顔が急にくしゃりと歪み、子供ながら眉間に深い皺を寄せて、更に陰鬱な表情へと変わってしまった。…ええいっ鬱陶しい!!


「ご、ごめ…っごめ、ん、なさっ…ごめんなさい…っ」

「謝罪を口にするくらいならば行うでない、愚か者」

「……ごめんなさい…」

「はぁ…」


溜め息が溢れた。
正直此奴の扱いに手を焼いている状態だ。どうしたものかと考えれば考えるだけイライラが募っていく、イライラが募れば我も自然とピリピリとした雰囲気になり、その雰囲気を察知した此奴に距離を取られる。全くもって悪循環でしかない…不本意だ。

つまらん、非常につまらん、面倒くさい事この上ない、こんな事になるのならこんな奴拾ってーーー


「………チッ」


などとつい思ってしまった。
我が拾って来たのだから、既に此奴は我のモノ、手放すつもりは毛頭無いのだが、ついそんな事を考えた己に舌打ちをした。


「ーーーおい」

「は、い…?」


ビクビクと我の顔色を伺いながらの返信が実に気に食わん。


「我の手を握る気がないのならば、それで良い。」


名前は無茶な事を言われなくなって良かったと明らかに安堵した顔をした。


「だがなーーー」


わざと一呼吸置いて、


「その理由くらいは言ってみせろ」


真っ直ぐに見据え、絆す様に聞いた。
すると名前は、「あ、」とか「う、」とか言いながら口をモゴモゴさせ、ポツリポツリと話し出した。


「だ、だって、」

「ん?」

「だって、王様はキラキラ、だから…」

「ーーーは?」


キラキラだから、そのなんとも子供らしい間抜けな理由に思わず頬杖付いた手からずり落ちた。


「キラキラで、きれいで、私、なんかが触って良いって聞いてない、から…」

「………」

「みんな、誰も教えてくれなかったから、私が触って良いって、誰も、言ってくれなかった、から…」

「貴様はーーー」

「…??」

「貴様は誰かに言われねば何も出来ぬのか?」

「…ぇ…??」

「常に誰かに指図され、言い聞かされねば動けぬのか?」


子供相手に何をと思うだろうが、だが我はこの言葉で、何と無く此奴の中身の片鱗を見た気がした。
我と出逢う前の、此奴が置かれていた環境は、無機質な冷たい空間で、来る日も来る日も繰り返される人体実験を甘んじて受け入れ、己で考えるのでは無く親に与えられたモノだけを鵜呑みにする日々で、此奴の自立心は無くなってしまったのであろう。
それは此奴が産まれながらにして魔力純度の高い存在だった故に親が傾き掛けた一族の復興の為に、どうにかこうにか此奴の人体を利用し、実験を繰り返した結果だった。


「ーーーふざけるな」


立ち上がり、小娘の前に立つ。
我は誰に対して憤りを覚えている?
此奴を犠牲にした両親か?自らの自我を希薄にした此奴か?ーーー否、我が怒りを覚えるのは、


「貴様は既に我の物。いつまでも“そこ”に囚われているで無い!!!」


過去から抜け出せず“いつまでも囚われ続けている此奴に”対してだ。
我の手中に収まり、我が、我のモノであると認識したその時から、貴様は“そこ”では無く“我のモノ”となった。故にいつまでも囚われているで無い。

我が救い出したあの日から、貴様は既に我のモノ。


我の言葉に対して、惚けた顔が我を見ていた。



- - - - - - - - - -



懐かしい夢を見た。
まだ彼奴が此処に来て早々の、まだ遠慮と言う言葉を知っている時の彼奴の夢だ。

久し振りに懐かしい夢を見たものだと、思いながらもう一度寝直そうと寝返りを打った直後、コンコンと部屋の扉がノックされる。
こんな時間に我の部屋を訪ねて来る奴等、一人しか居ない。


「ギル様、おはよう御座います!今日はいい天気ですよ?こんな日にお布団を干したらきっと気持ち良いですよ?だから早く起きましょう!!」


早口で捲し立てる様に何事か大声でしゃべりながら、問答無用で扉を開け放ち、ズカズカと我の部屋へと押し入り、シャーッ勢い良くカーテンを開ける。眩しい日差しが我の目蓋を焼く、我にこんな無礼を働く者など普通ならば殺している所だ。
不快に思い睨みながら、そいつを呼ぶ


「ーーーおい、名前」


我の声に此奴がこちらを向く


「ーーーん」

「はい??」

「握れ」


我の顔を見て、ポカンと間抜け面をするな。
だが、面白い物を見た。気分が良い。


「どうした聞こえなかったのか?握れと言ったのだ。」

「ぷっ、ふふっどうしたんですかギル様?まさか怖い夢でも見たのですか?」


笑いながらニヤニヤとした笑みを浮かべる此奴に昔のあの可愛らしかった頃の面影など微塵も無い。


「吐かせ痴れ者、どうした?昔の様に我の手が握れぬと情け無く泣くか?今の貴様が泣いてもただでさえ不細工な面が更に醜くなるだけだぞ??」

「……いつの話してるんですか、全く…」

「さあ、な。」


ーーー呆れを含んだ顔でグイッと力強く引き上げられる。
貴様はあの頃と変わったな。見た目、力、中身、魔力、そのどれを取っても我の満足する成長を見せてくれた。当然だ、我が手塩に掛けて育てたのだ。そうならない訳が無い。

嗚呼、だが…


強く握った掌は今も昔も同じ温もりを感じた。


*********
夢主が掴んだのは彼の“手”です。
幼い頃の彼女を救った優しくて厳しい温かい掌
 


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