白昼夢


切嗣義娘設定。
一通りの魔術的要素は切嗣から教えられており、今は協会や時計塔、個人等からの依頼をこなしなから生計を立てている。魔術の言わば何でも屋。

【 Fate stay night 】世界設定の夢主が【零〜刺青の聲〜】の世界とクロスオーバーです。

要するに好き勝手書きたい所だけ書くみたいな感じの話です。
続くか続かないかも分からない話です。
気に入らなかったら適当に修正する予定です。
それだけ曖昧なんです。許して下さい。





たとえば海の底で

あなたが生きてるのなら

わたしは二本の足を切って

魚になろう



*白昼夢*



ある日、立て込んでいた仕事の目処が立ち、珍しく長期の休みが取れた喜びを義弟の 衛宮 士郎 に報告しようとした所で、突然、魔術関連の仕事で使っている携帯電話が鳴った。

漸く取れた休みで久し振りに士郎とご飯でも行こうと思ってたのに…と思いながら、仕事は仕事仕方がないと割り切り半分、ウンザリした気持ち半分で画面に表示された番号を確認してみた。
此処でもし協会や時計塔関連の電話番号だったら無視してやろうかとも思ったのだが、どうやら相手方は非通知らしく画面に番号は表示されていなかった。

此方の方面では良くある事で、身元を隠したい一心から番号の非表示や代理人の使用、はたまた声色まで変える人間だっているくらいだ。だから、何ら特に気にせず、ハァと溜め息ひとつ吐いて通話ボタンを押した。


「ーーーはい、もしもし?」


ザッザッザーと定期的に入るノイズ音、よっぽど電波の悪い場所から掛けているのか、もしくは意図的に流しているのかは計りかねる所だが、コレも実は此方の業界では良くある事だ。


「ーーーーー。」

「はい?すみませんがもう少し大きな声で喋って頂けますか?少々聞き取り辛くて…」


ボソボソと電話の向こうで何やら喋る声と定期的に入るノイズを煩わしく思いながら、途切れ途切れに喋る相手の言葉に耳を傾ける。


「ーーーー」


それは知らない男から、とある廃墟を調べて欲しいとの内容の依頼だった。
……何故だろう?何と無く男の声から生気を感じなかったと言うか、何処か捻じ曲げられた様な異質な、妙な胸騒ぎを感じずにいられ無いそんな感じの声音だった様に思う。
きっと、変声器と定期的に入るノイズと途切れ途切れの喋り方の所為でそう聞こえたのだろうと自分に言い聞かせながら、男の話した内容を簡易的にメモしていく。


「畏まりました。数日の内に調査に伺いますので、また日を改めてご連絡下さい。その時に調査内容、依頼料の金額、支払い方等のお話をさせて頂きます。」


「どうか、宜しくお願いします。」とこちらが丁寧に最後の言葉まで言い終わる前に電話はツーツーと切れてしまった。せっかちな人だなと思いつつ、結局の所魔術師なんて変わり者ばかりだなと改めて思い直したのだった。
そして今日の自分の中で立ていた予定を全てキャンセルし、1番近くて早めの新幹線の予約と手続き、大まかな経路確認、荷造り等に時間を費やした。


丁度明日の新幹線の予約が取れた為、次の日には既に指定のあった県まで新幹線とレンタカーを使って向かった。

依頼人に廃墟の場所までの大雑把な内容と外見の特徴は聞いたのだが、いかんせん詳細な場所が分からないと辿り着くに着けないので、レンタカーを借りる時店員さんにそれとなく話を振ったり、道の駅や、近場の交番、はたまたその辺を歩いている噂好きそうな中学生や高校生に尋ねて回った。

そして大体の話を聞く限りだと、今から向かおうとしている場所は“ただの幽霊屋敷”と言われている事が分かった。
ただの幽霊屋敷の調査をわざわざ魔術師-こっち-に回すのだろうか?と疑問に思ったが、此処まで来たのだ、取り敢えず向かって調査をしてみる事にする。


山中を1、2時間車で走らせ、漸く指定のあった廃墟に辿り着いた。
確かに見た目はただの幽霊屋敷だ。それに今の所なんら魔術的な気配は感じない。まあ、だからと言って油断する訳にはいかないので、一応一通りの魔術道具とカメラと懐中電灯を持ち、廃墟の中へと向かった。

言われた通り、最初は普通に廃墟の中を一通りグルリと歩いて調べてみたが、特に何も変わった様子は無かった。
次に魔術を用いて調べてみたが結果は同じだった。
朽ち果て崩れ掛けた室内、ジメジメと湿っぽくて何処か埃っぽく、カビ臭いだけの至って普通の廃墟だった。

なんと言うか、少し肩透かしを食らった気分だ。
イタズラでわざわざこっちの電話番号を調べるなんて手の込んだ事をする奴がいるとは思えないが、電話の主は一体何が目的で電話を掛けて来たのだろうか?こんな何も無い所を調べさせるのが目的だったのだろうか?
ハアとひとつ溜息を吐き、こんな所で1人で考えてても拉致があかない為、取り敢えず調べたと言う証拠に持って来たカメラで何枚か写真を撮っておく。

ーーーパシャッ

一番手前の部屋。

ーーーパシャッ

一番東の部屋。

ーーーパシャッ

一番西の部屋。

ーーーパシャッ

一番奥の部屋。

後は廃墟の入り口と全体像の写真でも撮っておけば良いだろう。そう思って来た道を引き返し出口に向かおうとした所で、


「ーーーっ!!??」


スッと目の前を見知った人影が通り過ぎた。

え、なん、で…?どう、して…?

一瞬我が目を疑った。どうして彼が此処にいるのかと、だがどうしても見間違える筈が無い彼の後ろ姿。ここ数年、私は彼を忘れた事など一度も無かったのだから、例えアレが嘘でも幻でも何者かの罠だったとしても真意を確かめたいと思ってしまった。
自然と足が彼の背中を追い掛けていた。
バクバクと心臓が早鐘を打って、呼吸が乱れる。
思考回路は確実に冷静さを欠いていて、私はただただ彼に一目会いたい一心で彼を追い掛けたのだった。

そして、


「ーーーっ、ここは……」



ーーー気が付くと私は雪の降る屋敷の前に立っていた。




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