陽だまりの君


エルキドゥ夢、マスター設定。



私が見つけた時、


木の葉が織り成す木陰の下、


貴方は其処に佇んで居た。



*陽だまりの君*



穏やかに瞳を閉ざしながらまるで自身を自然と一体化させるかの様に、まるで自身も森の一部であるかの様に、彼の肌は風を感じ、彼の鼻は自然の香りを感じ、彼の耳は木々の鼓動を、ざわめきを、彼の全神経は森の息吹を感じ、眠る様に大樹へと身体を預けながら、貴方は其処に佇んで居た。
森と共に歩み、大樹に寄り添い、自然を、生命を慈しんだーーーー誰よりも美しい存在


「ーーーーー」


声を掛ける事さえ戸惑われる神秘的な雰囲気を醸し出しながら、貴方は気持ち良さそうに目を瞑っている。
風が貴方の美しい髪をサラサラと撫でて行く


「……そんな所で立ち尽くしたままどうしたんだい、マスター…?」


瞳を閉ざしたままだった目の前の美しい人が、私を見る為にその瞳を開き、細める。
覗かせた瞳はやはり美しい緑色だったーーー


「…あ、ごめん、邪魔だった?」

「いや、大丈夫、そんな事ないよ。」


ふんわりお微笑んで『マスターもこちらにおいで?』と手を差し出してくれる。
それに頷き数歩近付いて、差し出された手に手を伸ばすと、微笑みながら、まるでエスコートでもする様に、隣へと誘導してくれた。


「此処に来たと言う事は何か僕に用事でも?」

「え…、あ、うーん、用事って程でも無いんだけど……」


「何処にも姿が見えないからどうしたんだろうなって気になって…」と素直に理由を告げれば「そうなんだ、わざわざ手間を掛けさせて仕舞ってごめんね」と申し訳無さそうに微笑まれた。
「そんな事ない」と告げようとして、また、ザアァァと風が音を立てながら、彼の髪を舞い上げて行った。

ーーー目の前で舞った鮮やかな翡翠に私は目を奪われる他無かった。


「ーーーー…」

「どうしたんだろうね、今日はやけに風が強いみたいだ」


なんて笑いながら舞い上がる髪を抑える貴方に、私は我知らず呟いた。


「ーーーー綺麗…」


と、貴方が「え?」と驚いた様な顔をするものだから、私は慌てて取り繕う。


「あ、いや、違うの!?変な意味で言ったわけじゃなくて、エルキドゥの髪が余りにも綺麗だったから、つい本音が出ちゃってーーー?!」


『綺麗』と言われて嬉しい男性はそうそう居ないだろう。だから、私は慌てて取り繕ったのだが、どうやら彼はそんな事気にした風も無く「ふふ、そうなんだ」なんて笑って居る。
終いには「そうだ、良かったら触ってみる?」なんて言ってきた。私にとっては嬉し恥ずかしいやらなんやらで「はい!!喜んで!!!」なんて全力で答えてしまった。
それを聞いたエルキドゥはまたクスクス笑い出して、私は頬の熱が引かなかった。


「……本当に、触っても…?」

「どうぞ」


再度確認して、彼を見やると私が彼の髪に触れやすい様に少し前屈みになってくれた。


「やっぱり、綺麗……」


溜め息が出る程に美しく、掌に触れる感触も、すいた時の指通りも、やはり予想通り…とでも言うのか、とても良かった。余り人の髪なんて触る機会は無いけれど、多分、私が今までの人生の中で触ったどの髪質よりも最高だった。
サラサラと流れる髪も、光を浴びて輝く艶も、美しい翡翠色も、そのどれもが素晴らしかった。そのどれもが美しかった。


「そうかい?僕はマスターの髪の毛の方が綺麗だと思うけどな…」


なんて上手い事言いながら、美しい微笑みと共に長くて綺麗な指先を私の髪へと這わせてきた。

サラサラと己の好きな様に梳き、時に遊びながら「ふふ、ほらね?マスターの髪の方が綺麗だ」と眩しいまでの微笑みをくれる。

「もう少し近付いても良いかな?」と聞かれてどう言う意味だろうと思いながら頷くと、エルキドゥは「ありがとうマスター」と言いながらグイッと私を引き寄せ、首筋へとその鼻先を埋めた。
当然、エルキドゥの突然の行動には驚いたが、拒絶はしなかった。
寧ろ不思議と嫌ではなかった。多分、彼から下心とかそういう邪心を感じなかったからだと思う。


貴方は、己を神々の手に寄って生み出され、兵器だと、物だと言い、物憂い気な表情を見せる。己を替えのきく代物だと言う…だが、どうしても私には彼が物 - 兵器 - だとは思えなかった。

彼の王、最古の英雄王で有るギルガメッシュ王の唯一無二の友で有り、本来ならば彼を止める為に生まれた存在

ああ、きっと貴方は間違いは、嘘は付いて居ないのだろう。
でもそれは、きっとーーー


「ああ、思った通りだ…
君は、やはり陽だまりの香りがするね…」


私の髪に埋めた鼻をスンッと鳴らして貴方が嬉しそうに呟いた。
長い睫毛に降りた光が、私にはとても、とても眩しかったーーー


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