ある日、教会の日常


教会住み、言峰弟子設定。
特に意味無く、甘く無く。



*ある日、教会の日常*



ある日、某教会の倉庫にて、

「よ、と…っほっ!もーちょっとぉぉぉ!!」

そんな奇声を発しながら、両手をめいいっぱい伸ばしてみたり、小ジャンプを繰り返してみたりと、必死で棚の上の物を取ろうと孤軍奮闘する小者の影がありました。
その者は、師であり育ての父である言峰 綺礼の命令…基、頼みで倉庫の一番高い棚の上から(中身までは知らない)ダンボールを取り出そうとしていました。

「ぐぬぬ…っ届かない、ってか!?この高さ私が普通に手を伸ばしてもジャンプしても届く距離な訳無いじゃん!!さては、知ってて頼んだなあ…っあのエセ神父めぇぇっ!!!」

師であり父であり神父である男への愚痴と怒りを吐き出しながら、仕方がないからとその辺を見回し、踏み台代わりに使えそうな物は無いかと捜索した所、丁度良い大きさの脚立を発見した。
足元が少しグラグラしてて危なさそうだけど、そんな典型的なドジを私が踏むわけ無い。寧ろそんな典型的なドジを踏んだら死んでやる。羞恥で死んでやる。

歯を食いしばり、ウッカリ脚立から滑り落ちるーなんてドジを踏むものかと気合を入れ、再度脚立が安全である事を確認する。うん、まあ、相も変わらず足元はグラグラではあるが……
よし、脚立をセット。
足場の確認をし、1番安定しそうな場所へと配置する。よし、大丈夫、落ちる心配は無い。多分。


ーーーしかし、こんなにも入念な確認をした筈なのにも関わらず、現実とはいつも無情である。
まあ、ぶっちゃけ、そうじゃなきゃ面白く無い訳で…


私はグラグラの足元を気にしつつ、やっとの思いで手が届いたダンボールを持ち上げようとした。
しかのだがーーー

「って、重っ!!?いったい何入ってるのっ!!鉛の塊でも入ってるのかってくらい重いんですけどぉぉぉ?!!」

重過ぎて持ち上がらず、出来て精々ほんの一瞬だけ浮かせ、棚の上で数センチ動かすのがやっとだった。

「あーどーしたものかなー…」

腰に手を当て途方に暮れながら、考える。
中に何が入っているか聞く事が出来ない限り棚の上から突き落とすなんて荒っぽい事は出来ないし、かと言って他に方法も無い…

「う″ーん…」

一頻り考えてはみたものの、やはり力技で行くしかないかなと決断し、もし中身が壊れてダメになったとしてもあの神父の所為だ。あの神父が私にこんな重い物を頼みさえしなければ壊れはしなかったのだから、もし壊れたとしたら彼奴の所為にしてやる。
そう思うや否や、このダンボールを床へと突き落とす為、端っこを持ってズルズルと引っ張ってみる。
が、しかし、やはり重たい。
私の全体重を掛けて引っ張ってもなかなか動かない。一体どうなってるんだ。うーんと両手でダンボールをしっかり持ち全体重を掛けて後ろに倒れて見ても微動だにしない。なんでさ。

「あ!おい!?何してんだ!!!」

「はえ?!ランサー……って、うわあっっ!?!」

「っ…危ねえっ!!!?」

そんな危ない私の姿をまたまた通り掛かったランサーが見付け、大声を出した事により私はついウッカリ、ツルッと手を滑らせてしまいました。
ーーードンガラガッシャーン
と、私は見事に落ちました。はい、死にます。宣言通り死にます。私はこの時この瞬間から死にました。

「〜〜〜ったく、危ねえじゃねえか!?何してんだよ!!?」

「死んだ…私は死んだ……」

「は?何言ってんだ??」

私が落ちる寸前のところで俊敏Aなランサーさんは、受け止めるーーーのは流石に無理があったが、下敷きとなり、私が床に強打される事を回避してくれた。
しかしそんな私は彼にありがとうと感謝の意を表す前に、私は私の仕出かした失態に羞恥していた。そしてそんな私の妄言に「頭でも撃ったのか?」と更に要らない心配までされた。……死にたい。


因みに中に入っていたのは鉛の塊、では無かったが、分厚い古書だった。しかもダンボールギッチリに…
そして、それの入ったダンボールがなかなか動かなかったのは、言峰自らが何かの拍子にウッカリ棚の上からこんな物が落ちたら危ないからと、重い物の上から更に重化の魔術を掛けたのだとか……

そんなもんか弱い乙女に持たせ様とするんじゃないよ!!!
しかも用意させたいなら、呪いの事を先に言うか、解除してから頼んでよ!!!

激怒したところで、どうせあの神父の思う壺だ。
私がダンボール相手に悪戦苦闘する姿やその後の怒狂う姿なんかを見てどうせ愉しんでいるに決まってる。それはそれは嬉しそうに、いつも通りあのいやらしい笑みを顔に貼り付けて、何処かで今日も笑っている事だろう。


Back
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -