羨ましいと思ったら負け…


ギャグ風味、士郎の幼馴染設定。
主人公が士郎を取り巻く女性関係に愕然とするお話。



…最初に感じたのは驚き

そして、次に感じたのもまた驚きだった。


*羨ましいと思ったら負け…*


ピンポーン


「士郎ーいるー??」


チャイムを鳴らし玄関から幼馴染である衛宮士郎の名前を呼ぶ
いつもなら直ぐに出てきてもおかしくないのだが…今日はやけに遅い。

居ないのかな?と思い直し、また後にしよう、無駄足だったなコンチクショーと踵を返した時


「衛宮くんなら居ないわよ」


と、良く通る凜とした声で返事が返ってきた。
私はその声を何処かで聞いた事あるなー…と思いながら


「あ、そう何ですか、じゃあまた来m・・・え…?」


振り向き笑顔を向けて、驚いた。
寧ろ固まった。
人間本当に驚くと声も出なくなるのか、本当に漫画の様に固まるのかと、ひとり頭の隅で唯一活動する脳が自分をせせら笑っている。

そこに立っていたのはあの学園のアイドル(マドンナだったか?)の遠坂凛だった。

平然と我が家然とした顔でそこに立っているモノだから、一瞬私は家を間違えたのではないかと思い、全力で辺りを見回した。それはもう凄い勢いで…
しかし幾ら辺りを見てもここが幼馴染である士郎の家に他ならない為、故に私は更に訳が分からなくなった。

『なんで遠坂さんが??』『どうして遠坂さんが??』などと必死に考えてみても答えなど出るわけが無く、直接本人に聞いてみたいところだが…何か怖いものを感じて(と言うより完全にキャパを超えいる為)私は上手く言葉が出てこなかった。


「…ぁ……その…」


何も言わない(言葉に成ってない)私を不審に思ったのか遠坂さんが訝しげにこちらを見ている。

ああ!違うんです!!別に怪しい人じゃないんですぅ!!!

全力でそう叫びたいのに言葉が出ない
小心者な自分が…悔しいかな…っ!
よっぽど私が困惑して見えたのだろう…(もしくは痺れを切らしたか…)
彼女はもう一度先程と同じ言葉を、先程よりも幾らか強めに口にした。


「だーかーら、衛宮くんなら居ないわよって言ってるじゃない!」


腰に手を当てて、絆す彼女を正に可愛いの一言

『士郎のヤツめ…いつの間にこんな可愛子ちゃんと知り合いになったんだ…?』

帰ってきたら問い質してやろうと秘かに心に決め、先程より幾分か冷静さを取り戻した私は、彼女の言葉にやっと返事を返した。


「あ、ああ!そうなんですか、だったらまた来ます…ね?」

「ええ、そうして頂戴…あ、何なら中で待ってる?また来るの面倒くさいでしょ??苗字さん」

「あ、そうですね…そっちの方が有り難いです。」

「そ、じゃあこっち来て、今お茶入れるから」

「はい、お邪魔しま〜す…」


なんと言うか…なんと言うかな状況だ。
遠坂さんより確実に私の方が士郎とこの家との関わりが長いのに、何故今更遠慮なんてしているのか自分が一番不思議で仕方ない。

あ、そう言えば何気に私遠坂さんに名前呼ばれてたな…なんて今更気付いた。
士郎から何か聞いてるのか、はたまた何処かでお話でもしたか…確実に前者の方が合っている気がするが、後者の可能性も無きにしも非ず。
いやしかし、こんな美人さんと話しなんかをしたら、それこそ忘れられる訳ないから、確実に前者だろうと答えが落ち着いた。


「今お茶入れてくるからそこら辺で待ってて」


そう言って彼女は居間の襖を開けて、本日2度目の驚愕
そこには


「リン、お客様ですか?」


とお行儀良く正座をしている、外国人の少女が座っていた。
私はもうなんて言っていいのか分からなくて…取り敢えず士郎の人脈(?)の広さに感心してしまった。


「ええそうよ、私お茶入れてくるからここで待ってて貰って」

「分かりました」


遠坂さんはそれだけ言うとキッチンの方へと姿を消した。
ここには金髪蒼眼の美少女と凡人な私だけが取り残された訳でして…。

それにしても…と、遠坂さんの振る舞いを見て、何とも言えない気持ちになった。
いや、なんと言うか…あれだよ、うん、
『勝手知ったる他人の家』ってこーゆー事を言うんだなってちょっと思ったよ…


取り敢えず士郎が帰って来たら、この自体を問い質したいと思いました。



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