好きって言って


赤弓夢、マスター設定。
ギャグ表現有り、主微キャラ崩壊注意



「マスター、君は私に何か言う事はないのかね?」

「……は?」


事の発端はこの男のこの一言から始まった。



*好きって言って*



アーチャーがジリジリと迫ってくるので、私もジリジリと後ろへ後退


「何故逃げるマスター?」

「さあ?なんででしょうねー!?」

「大人しく捕まれば良いものを…」

「捕まったらお仕置きだっとか言って変な事するでしょうがっ!!?」

「その様な粗悪なことはしない、少し君に聞きたい事があるだけだ」

「ほら!するじゃん!?言い方とかニュアンスとか違っても絶対するじゃん!!?だから嫌なのよー!!」


サーヴァントであるアーチャーがマスターであるただの人間を捕まえらない訳がない
…からして、アーチャーはこの状況を至極楽しんでいる。
私が困惑して焦りながら逃げるのを嫌味ったらしく楽しんでいるのである。
クッソ〜…窮鼠猫噛んだるぞー!!


「…………え…?」

「フッ…」


身体中の血の気がサーッと引いて行く感覚がある。
恐る恐る後ろを振り向けば、そこは嫌になる程真っ白な壁さんで…え?壁??

混乱する頭をフル回転させ逃げ道を探すが、


「万事休す…だな」


頭上からそんな笑いを含む声が聞こえ、前を向けば目の前に今1番見たくないヤツの顔があった。
しかも笑顔なところが妙に怖い……


「……っ」

「おっと…」


横に逃げようと駆け出せば、軽々と腰を抱かれ……捕まった。
それはもうガッチリ両腕でホールド


「……悔しい…でも流石私のサーヴァント…。」

「お褒めの言葉痛み入る」

「嫌味だっつーの…」


暴れてやろうかとも思ったが、どうせこの男の思う壺だと思い止めた。
それにどーせこのサーヴァントからは逃げられないだろうし…


「……で?なんでこんな事したの?」


もう面倒くさくなってきたから、私は後ろからアーチャーに抱き締められる形で、前を見ながら聞いた


「さて、こんな事とはどんな事なんだ?」


知らん顔でシレッと言い切った。それはそれは、清々しいくらいに…
あーはいはい、どうせそう来ると思ってましたよー


「だーかーらー、何でさっき私はアーチャーに追い詰められなきゃいけないの?って話よ!!」


私は眉間に皺を寄せ、不機嫌を露わにした状態でアーチャーへと顔だけ振り返った。
そこには、眉間に皺を寄せ「ハァ…」と明からさまに溜息を吐いた彼が居た。
溜息吐きたいのはこっちだぁ!!!


「やれやれ、君は本当に分からないのか?」

「分かりません」


即答してやれば、またハァ…とため息が聞こえた。
だから、何でだよ…。


「じゃあ、逆に質問だけど、アーチャーはどうしてそんなに不機嫌なの?」

「別に不機嫌ではないがね?」

「じゃ不貞腐れてる!」

「ふむ、そうだな…」


彼は私の質問に何か考える様な仕草をすると、いきなり私の首筋へと顔を埋めた。


「ひっ…っアーチャーッ!!」

「何もしはしないさ…ただ少し、このまま…」


あまりの事に驚いて抵抗しようとすると、彼の拘束が一層強くなり、切ない声で懇願された。
ああ、もう…っズルいよ…アーチャーッ!

私の大切なサーヴァント-パートナー-に、

況してや好きな人に・・・

そんな風に求められれば拒めないのを彼は知っているのだろうか…?

首筋に埋められた彼の息遣いを感じて身体が震える。回された腕の逞しさに、背中に触れる胸板の熱さに、彼の存在に眩暈がした。


「ん…アーチャー…ッ」


なんだかくすぐったくて身を捩れば、更に回された腕に力が籠った
嗚呼、ダメだ…彼を意識してしまう…。


「本当に、どうした…の…?」


頬に熱が集まるのを無視して、意識しない様にして彼へと語り掛ける。本当に今日の貴方はどうしたと言うのか…あ、でもこんなに意識している私も、どうかしているのだろうか……。
彼は「本当に…どうしたのだろうな…」と自傷気味に曖昧に笑う声が聞こえると腕の中の私を反転させて、正面から抱き締め、また首筋に顔を埋めた。

だから顔こそは見えなかったけど、私は何と無く、無意識的に(頬こそなんと無しに赤いが)彼がとても切なそうな泣きそうな顔をしている様な気がしてならなかった。


「………今朝…」

「…うん??」


彼がボソボソと喋り出したので、私は訳が分からないなりに相槌を打った。
優しく背中をポンポンの摩れば、彼はまた少しだけ喋り始めた。


「……今朝、あの者に『好きだ』…っと言われていただろう…」

「…う、ん……ん???」

「そして君は笑いながら『ありがと、私も好きだよ』と言っていた…から…っ」


え…?あ、ごめんアーチャー…意味が分からなくて、私の思考がフェードアウトしちゃった!
……冗談はさておき。
まさか、まさかであるが、この主夫と間違える様なしっかり者のキッチリキッカリした英霊様が、そんな些細な繊細な事で拗ねていらっしゃったのでしょうか…??
と言うよりアレは多分そんな恋愛的な意味があった訳では無く、軽い挨拶の様なモノだと思ったのだが…違ったのだろうか?

そんな事より、私は自然に口元に笑みが浮かぶのを感じずには居られなかった。
と言うよりニヤニヤが止まりません。

だってだって、あのアーチャーがこんな事で…っ
か、かわいい…っかわいいったら無いよぉぉぉ…っアーチャーさんんんっ!!!!

本人に言ったらお小言もしくはマジ切れされかねないので、お口チャックです。


「そ、それで?アーチャーが不機嫌になるのとどう関係があるの…?」


ちょっと意地悪だったかな?と思いながら平静を装って尋ねてみた。
だってちゃんと言葉にして欲しいんだもん…


「ぅ、うむ…いや、別に私も言って欲しい等そう言う訳では無いのだ!ただ、その…っ」


彼はただでさえ赤い頬を更に赤くしてしどろもどろに話している。

どんだけ可愛いんだよ、私のサーヴァント様はよう…っ!!

私はと言うと自分の気持ちを抑えるのに必死です。あと一声、もう一声待とう……


「……その、少し…羨ましいと思ったのだ…っ君に、その様な事を言われて居て…。
どうにも私は素直じゃ無いらしくて…な、純粋に君にあの様な事を伝えれる奴を、正直羨ましいと思った。」


何処か自傷気味に笑う彼…


「……フゥ…我ながら可笑しな事を言ってしまったな…
すまないマスター、今のは忘れてくれ…」


その顔は切なそうに笑っている様にも


「さあ、行こうかマスター」


ーーー泣いている様にも、見えた。

身体に回っていた彼の逞しい腕から力が抜け、彼の体温が、匂いが、私から遠退いて行く…
スルリと去り際に頬をひと撫でして離れて行く指先、それを見送ると最も簡単に此方に背を向け、扉へと歩き出す広く逞しい背中…


「ア…アーチャーッ!!」


私は思わずアーチャーの外套の裾を掴んで仕舞った。彼の仕草ひとつひとつがとても…切なくて、胸がギュッと鷲掴みにされた様な感覚。
動きの止めるが此方を向かない彼、ちょっと言い過ぎたかな…と反省しつつアーチャーの背中へとおずおずと顔を埋め、彼の身体へと腕を回した。


「……アーチャー…」


名を呼べばピクリと反応する身体
鼻先を彼の背中に押し付ければ、彼の香りを感じた。


「……ごめん…っちょっとからかい過ぎちゃった…」


言葉の始めに『アーチャーが余りにも可愛いから…』と言いそうになって、慌てて呑み込んだ。
言ったら言ったで絶対ややこしい事になると思うから


「あ、でもアーチャーの本音が聞けてちょっと嬉しかったかも…」


クスリと笑うと彼に回した手をギュッと握られた。
ただそれだけの事に私は気を良くして、彼に抱き着く力を強めた


「ねぇアーチャー…?」

「……何かな、マスター?」


嗚呼、話し掛ければ答えてくれる貴方が愛しい


「アーチャー…あのね」

「ん?」


どんな私の我が儘にも付き合ってくれる貴方が好き


「アーチャー…」

「どうした??」


何よりも、誰よりも、愛おしいと思える存在…


「アーチャー…好きよ、
 誰よりも何よりも、貴方が1番好き…」

「……っ」

「私の1番は貴方なんだから、そんなに不安になら無いで…ね?」

「…名前」


ムギュッと頬を彼の広い背中に押し付けた
暖かい…これは安心する温かさだ。

私は彼の背中に頬と言うより顔を押し付けたまま、この幸福感からか今までの我慢からなのか「むふふふふ」と(嬉しそうに)笑い声をあげると、今の想いの丈をアーチャーに全て打つける事にした


「私ね、アーチャーが好き!大好き!!
好き好き大好き!!もうこれでもかってくらい好き!!二度と離れられ無いくらいに好き!!
誰よりも何よりも愛おし過ぎてこの野郎どうしてやろうかぁって想ってるくらいだぁ〜い好き!!!
好き過ぎて好き過ぎて震えちゃうよぉー!」

「っ!??も、もう良いマスター!聞いている此方が恥ずかしくなる!!」

「まだまだ私のアーチャーへの想いはこんなモンじゃありませーん!と言うよりマスターって呼んだんで、あと小一時間ほど続けたいと思いまぁーす!!」

「…や、止めろっ名前…!!」

「はい!止めますよお!!
何ですかアーチャーさ…んん!?とっ!!」


ニヤニヤしながら話し続けていたら、いきなり握られていた腕を引かれ、気が付いたら私はいつの間にか彼の腕の中に居た。
形勢逆転されてしまいましたよー…


「はぁ…全く君には敵わないな…」

「ふふっとーぜん!アーチャーを好きな気持ちは誰にも負けないもの!!」


彼の腕に抱かれ自信満々に二へ〜と笑いながら言うとまたひとつアーチャーからため息が落ちた


「そう言う意味で言った訳では無いのだが…」

「ーーーねぇ、アーチャー…?」


彼が何を言わんとしている事は大体予想がつく
だから私はわざとアーチャーの言葉を遮り、彼の首に腕を回し、少しだけ背伸びしながら囁く


「好きよ、愛してる…だから、ずっと離れないで居て、ずっと側に居てね?」


真剣に微笑めば「嗚呼、君はそういう人だったな…」と頷いてくれる彼

好きだと言う想いも、
愛しいと想う思いも、

全て本物だ。
偽りなんてひとつも無い、真っさらな心
其れは何処までも白く、何処までも真っ直ぐな想いだ。


「あ、そうだアーチャー!ひとつだけ我儘言って良い?」

「何かね、マスター?」


笑いながらそう問えば少し呆れた様な口調で言われる。
って、またマスターって呼んでるし…


「あのね、キス…して欲しい」

「…お安い御用だ」


少しの間を空けて触れた唇

そこには彼なりの優しさと、彼なりの想いが乗っている様な気がした。


*好きって言って end*

欲しい言葉は唯一つ…



Back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -