偽りの中の誠


五次槍夢、教会住み設定。
五次槍視点。※微裏注意※


*偽りの中の誠*


安酒を浴びる様に飲みながら、ふと我に返った時、手元のビールがカラになった事に気が付いた。
面倒ながらも冷蔵庫まで取りに行こうと立ち上がった所でタイミング良く部屋の扉が鳴る

ーーーコンコンと、控え目に

あ?誰だこんな時間に…と面倒くさく思いながら、どうせ綺礼かギルガメッシュの野郎が嫌がらせか何かのつもりでやって来たのか…?と疑ったが、次に聞こえて来た声でその考えは打ち消されたのだった。

「ランサー…あの、まだ、起きてる…?」

「……っ!名前…っ!?」

聞き覚えがあるも何も、今俺がイライラし安酒を飲む羽目になった原因を作り出したであろう人物の声だった。

慌てて扉を開ければ、案の定、扉の前には寝巻き姿でそこに立つ名前の姿があった。
いや、その、寝巻きつーか、一般的に言わばネグリジェ(?)に近い格好であったのだが……その名前が、顔を赤らめ視線を逸らしながら小さな声で爆弾発言をしたのだった。

「あのね、その…っひ、ひとりじゃなんか眠れなくて、さ……だから、一緒に寝て欲しいなーって…」

「……は…?」

「だから…っ!!一緒に寝て欲しいって言ってんのっ!!!」

「い、いや、それは聞こえてたけどよお!!?お、おま…っ」

『その意味分かってんのかーーー?』
そう問いただそうとして、ハタと気付く、あ、そっかコレ夢か……と、

通常の名前ならば絶対に言わない様なセリフを言うってえ事は、俺の都合の良い夢に違いない。多分俺は安酒の飲み過ぎで酔っ払って適当な所で酔い潰れたんだ。

だから俺が今見てるのは、
都合の良い“俺の夢”ーーー

そうと理解したらなんか余裕出て来た…。

「…良いぜ?来いよ…ただし身の安全は保証出来ねぇけど、な…?」

「……良いよ…ランサーになら、何されても、私は後悔しない…っ」

「その言葉後悔すんじゃねぇぞ…?」

「う…っん…っ」

挑発的な視線を送りながら、名前を部屋へと引き寄せ、唇を奪う。

ーーーバタリと扉が音を立てて閉められた。

最初は軽めに角度を変えながら数度口付けて、緊張の所為でなかなか唇を開こうとしない名前に痺れを切らし、ツーッと指先で名前の背中をくすぐる

「…っん…ひあ…っんふっ!」

驚いた名前がビクリッと身体を跳ねさせ、同時に口を開いた。
その隙を俺が逃す訳無く、ヌルリと開かれた口内へと舌を差し込み舌同士を絡み合わせる。

「んん…っ…ふぁ…っ」

溶けそうな名前の声と顔に気を良くし、背中に這わせた指先をそのまま下へと下ろしていく
良い感じの弾力のあるお尻を下から弄ぶ様にキュッと掴み上げ、引き寄せる。

「はっあ…んっ」

フルリとひとつ名前が身震いをしたのを確認して、そのまま尻をヤワヤワと揉みしだけば、唇を離しイヤイヤと首を横に振った。

「あ、や…っラン、サ…ッそれ、やあ!」

喘ぐ様に嫌だ嫌だと繰り返す名前に「なんで、やなんだよ?」と聞くと「だって、変に、なっちゃうっからぁ…っ」と涙ながらに返事が返ってきた。
じゃあこのままもっと他の所を触ったらどうなっちまうのかと期待しながら、俺は意地悪く囁く

「じゃあ、このまま止めちまうか…?」

「……っ!」

ちとばかし意地が悪過ぎたか?と苦笑いしながら、目に涙を滲ませ顔を赤く染めた名前が、やはり泣きそうな面で、

「それは、もっといや…!!」

と、俺に抱き付いて来たから、その時俺は心の中でガッツポーズをした。俺の日々の苦労はやっと此処で報われたのかと……

「それじゃあしょうがねぇよな?嫌でも我慢しろよ?安心しろって直ぐにヨクしてやるから…」

抱き締めて耳元へと口付ける。
ついでとばかりに、チロチロと耳朶を舐めると顔をさらに真っ赤に染めた名前が身体に回った俺の腕を緩く掴みながら上目遣いで言った。

「……っよ、よろしくお願いします…」

「…ああ、任せとけ」

ーーーそのまま名前と貪る様に、溺れる様な口付けを何度も何度も交わした。


- - - - - -


「……ん…んん…っ」

カーテンの隙間から差す眩しい日の光を目蓋の上に感じて、目を覚ます。
あー頭痛え、飲み過ぎたー…
ボーッとしながら、枕に顔を埋めて頭をガジガジ掻いていると、フと隣に暖かい体温を感じてその手を止めた。

「ん…?」

隣を見れば、昨日一緒に寝た名前の姿があった。
あーそういや、昨日は俺がガッツき過ぎて無理させちまったもんな…最後なんて何度ヤッたかも分からなくなって、意識も朦朧としながら2人で果てたし……

「気持ち良さそうに寝やがって…」

名前の寝顔を見詰めていると己の頬が緩むのを自覚しながら、名前の頬を撫でその存在を確認したところで、俺はフと違和感を抱く

……ん…?
そう言えば、俺は昨日、どんな思いでこいつを抱いたんだっけ…??

昨夜の自分の愚かな思考を思い出し、サッと血の気が引き、寒い訳でも無いのにゾクリと背筋が震えた。俺は全身の毛穴という毛穴からブワッと汗が噴き出る感覚を覚える。

……マズイ…殺される。

何故かそんな結末に辿り着き、出来る事なら己の俊敏性を生かしてこのまま此処から逃亡してしまいたかった。
いや、そんな事をしたら確実に色々と不味い方向へと向かっていくのは明白なので、そうしたいと思いはしても実際行動には移しはしないのだが……

「……んん…っ」

「っ!!?」

どうしようどうしようと俺が焦っているところに、なんともタイミング良く名前が目を擦りながら覚醒の気配を見せる。

嗚呼、本気でマズイ……


ーーー名前が目覚めるまで、あと、数十秒

目覚めるギリギリまで俺は名前に対して、考え、思い付くだけの謝罪と言い訳の言葉を考えるのであった。

そして、後々気が付いた事なのだが、別に言い訳なんて考える必要無かった…
だって名前は確実に「一緒に寝て欲しい」と言っており、名前の意思で、俺の元に抱かれに来たのは明白なのだから、それを俺がとやかく言い訳考える必要は無かったのであった。



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