煙草をテーマに切ない恋


5次槍夢、マスターでは無いけれどそんな雰囲気で悲恋又は切恋


*煙草をテーマに切ない恋*


ふーっと俺の口から吐き出された煙は、ユラユラと揺蕩いながら天井付近に数秒の後留まると跡形も無く消え去ってしまった。
まるで最初から其処には何も存在しなかったかの様に、跡形も無く、ただ在るのは俺に染み付き混ざり合ったあいつの匂いと、其処に在ったと言う記憶のみ

この部屋で、
俺の喫煙を咎める者は誰も居ない

ついこの前までは口酸っぱく言う者も居たのだが、今はもう何処にも其の人は存在しない。
記憶という概念でしか留まる事を許されない彼女の存在を、俺はただただ恋しく思う。

「フー…そういやあ、今日はーーー」

呟いた言葉は虚しく部屋に響く
有る筈の家主を失ったこの部屋は、いつか唯の思い出へとなってしまうのだろうか…?
風化し唯の思い出と成りつつある記憶と、俺の煙草の所為で日に日に薄れていく彼女の匂いを抱き締めながら俺は、今日も帰らぬ家主を待つ

ーーー嗚呼、そろそろ陽が沈む…

あいつが居なくなってから、一体何度陽が沈んだだろう…早く帰って来いよ名前……

*******
煙草をテーマに切ない恋

きっと彼はずっとずっと待ち続けるんでしょうね、例えその人が帰らないと分かっていても、待って待って待ち続けるんだと思います。
それで漸く会えた時には、「遅えじゃねぇか、俺がどんだけ待ったと思ってんだよ!」って怒るんです。怒るんですけど、きっと彼は泣いてるんです。怒ってるのに泣いているんです。
でも彼の事だからずっと怒ってるのは性に合わなくて最後は笑うんだと思います。いつものあの太陽みたいな笑顔で
「ーーーおかえり、名前」
って言ってくれるんだと思います。


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