身代わり響の憂鬱な1日…

 
「響ー」

バンと、いきなり部屋に入ってきた我が姉。
俺は今学校に行く為に学ランに着替えている途中だった。

「何、姉ちゃん…」

「アンタ暇よね?暇でしょ?」

「な訳ないじゃん。今から学校なんだから」

「そんな暇過ぎて退屈な響くん」

「人の話を聞けよ!」

てゆーか、お願いだから話を聞いて下さい。
今から学校!中学2年で、休んだりすると、今後の内定に響くんだって!

そんな考えはお構いなしに我が姉は俺の部屋にズンズン入ってきて…。

「はい、此れ」

無理矢理渡された。
何がって、我が姉が通ってる女子校の制服が。

「…え?」

「早く其れ着て」

「…は?」

「時間ないのよ。もうそろそろ迎えにくるんだから」

時間がない?迎えにくる?
何言ってんの此の姉。

「…何で姉ちゃんの制服俺が着なきゃなんない訳?」

「何でって、アンタが私の代わりに学校行くからに決まってんでしょ?」

決定事項なのか?
俺に人権と言うモノはないのか?

男の俺が、こんなヒラヒラしたスカート履いて、女しかいない学校に行けと!?

「…姉ちゃんは?」

「私は今からデートだから」

はあ!?

「ちょっと!何其れ?デートなんて学校終わってからすればいいじゃん!」

「グダグダ言わずに早く着替える」

横暴だ!!





「そっくりね!」

どうしてなんだ。
どうして俺が女装なんてしなきゃ…!
おまけにカツラまで。

てゆーか、よくもまぁ鬘なんてあったな。
物凄くタイミングよすぎやしませんか?

「ちゃんと私としてやりなさいよ?バレたらタダじゃおかないから」

じゃーねー、と我が姉は既に迎えに来たであろう彼氏の元へ行ってしまった。

取り残された俺。

「どうしろと?」

取り敢えず、母親に言うと笑って行ってらっしゃいって言われた。

我が母よ、少しは俺の事を考えてくれ…!

我が姉が通うのは共学だった筈では?
女子校ならまだしも、共学って…。

女の中に混じって女装した男が1人…あー、確実にヤバいな。
俺と姉ちゃんが双子のようにそっくりだとしても、此ればっかはバレるって!!

そんな気持ちでビクビクしながら、俺は我が姉が通う学校へと乗り込んだのだった。





「おはよー!」
「おはよう!ねぇねぇ、聞いた?」

ヤバい。本当にヤバい。
マジでバレたらシャレになんないぞ?!

声とかどうするんだ…。
普通に俺、男の声なんだけど…。
少し高めに出してもバレるんじゃ?

風邪引いたで押し通すしかないか…。

「楓おはよー」

「ぉ、おはよっ」

早速きたーーー!!
取り敢えず高めを意識してみたが…!

「ねぇねぇ、昨日のNステ見た?大好きなあの人がでるからってTVに釘付けでみてたのにぃ…」

アレ?此れって、大丈夫?
そんな感じじゃね?

俺が弟だって気付いてない?
股関に有り得ないモノ隠し持ってる奴だって分からないのか…?←

てゆーか、姉ちゃんって学校ではどんな話し方?
家にいる時は何時も偉そうな話し方だけど…。
しまったな…聞いてればよかった。

しかし、此処はハーレムの聖地か。←
俺が姉と入れ替わってると知らず、話しかけてくるのは全て女の子!
何にせよ男のロマンだよな。
ハーレムやふーw←

あ、男のロマンって言ったら!
今年のバレンタインデーはチョコ、いくつもらえるんだろう!
去年は義理も含めて10個もらったしな。
ま、殆どが義理だけど。
男のロマンはやっぱりバレンタインデーにどんなシチュエーションでもらうかが問題だよな!
俺的には、裏庭告白付きがベストかも!

とか言うのは俺の妄想だけど。
七海に聞かれたら殺される…。
だけど今年が楽しみだ!←

「ちょっと聞いてるー?」

「き、聞いてる!!」

やべっ、妄想族になってた…。
いかんいかん、此処姉ちゃんの学校だったよ。

「もぉー楓ったら。人の話聞いてないって酷くない?」

「ごめん、ごめん…」





今日は運がいいのか、体育がない日だった。
本当によかった!
女子に紛れてお着替えとか、俺、無理だよ?
そんなこんなでバレたら間違いなく変態確定じゃん。
三枝 楓の弟は…なんて。
そんな事言われたら此の世の終わりだ。
もう生きてけない…。
そんな事になったら姉ちゃんは姉ちゃんで絶対面白がりそうだけど。

「早く食堂行こう!」
「私もうお腹ペコペコ」

午前中までは何とかバレずに乗り切った俺。
自分を誉めてやりたい!
我が姉の自分勝手な振る舞いにこうしてバレずにやってのけるとはっ!
いや、まだ午後が残ってる…。

何とかしなければ…!

俺はコソコソと教室を抜け出した。
お昼とは言えど、何時も姉がどのくらいの量を食べているのかさえ分からない。
だから、人目につかない場所へ移動しようとしていた時だった…

「かぁえぇでぇ!」

元気よく声を上げていたのは、我が姉の親友こと、竹海 譲葉さん。通称竹さん。

一番ヤバい人来たーーーーー!!!!
ちょ、何でこんな時に来るかな!?

此れは無視してOK?
此処でバレたらマジでシャレにならんよ!?

「かーえで!」

ポンと肩に乗った手。
ビクビクする俺…。

「ん…?何か、今日の楓ゴツくない?」

其処に触れんじゃねーーー!←

「アレ?よく見たらひー…」

咄嗟に俺は竹さんの手を掴み、走っていた。
こんな場所で俺の名前言われたら本当に、マズいから!

走って走って走って。
到着したのは人目の付かない裏庭みたいな場所だった。

「はぁ、はぁ…」

「…」

竹さんが俺を凝視していた。

竹さん恐るべし…。
あれだけバレずにいたのに、竹さんは一発でバレるとは。
流石は親友…。

しかし、此の状況、どうする?

「ひーくん…」

「…」

何だ…!?
何を言うつもりなんだ竹さん!
お、オレは悪くないからな!
悪いの我が姉だから!

「ひーくんってば超似合ってるしー!
どうして?!何でひーくんがうちに?!楓は?こんな近くでひーくんの女装姿が見られるなんて私超ついてるー!!
ねぇねぇ下着は!?ちゃんと女の子の履いてる!?あ、此れ鬘?もうひーくんってば其れならそうと言ってくれればいいじゃない!
ひーくんに女装趣味があ…」

「ないですから!断じてそんな危ない趣味もってませんからっ!!」

何だ此の人!
妄想族か!?←

「なぁんだ、つまんないの。折角だから私のお気にのフリフリあげようかと思ったにのぃ…」

我が姉と同じでムカつく…!
そして、そんな服いりません!!

「本物の楓は?」

「彼氏とデートだって…朝部屋入ってきて今からデートだから私の代わりに学校行けって言われて」

今朝に話をすると、竹さんはクスククと笑っていた。

「まさか彼氏とデートする為にひーくんを使うなんて、楓がやりそうな事だねっ」

笑い事じゃないんですよ竹さん。
俺は今、バレないかってヒヤヒヤしてんですよ!?
こうやって竹さんに見破られてしまってもう心臓バックバクなの知らないでしょ!?←

「ひーくん」

「は、はい…」

「…目覚めてもいいのよ?」

「目覚めるかぁぁああああああ!」

「えーーー?どうしても?」

「どうしてもって何!?普通にないですから!」

竹さんの馬鹿!
そんな拗ねたような顔しても駄目だかんな!

やっぱりこんなに早く竹さんに見つかったのが運のつきだ…。

「てゆーか、よく俺だって分かりましたね…」

「だって、ひーくん男の娘だもん」

アレ?
今、何か変な感じに聞こえたような…。

「え?」

「筋肉あるし、まぁひーくんは筋肉あるって言ってもそんなに付いてないけどね」

気にしてる事をそんなににっこり笑った顔で言われると、胸が…。←

「まぁ後は決定打が目だよね。ひーくん濃い緑色だからさ。
で、どうするの?」

「はい?」

「此れから」

「で、できれば…帰りたい…」

「無理ね。そんな事したら楓にフルボッコだわ」

ですよねぇ…。
あと数時間、どう耐え抜けば…。

「あ!そう言えば!竹さん!
姉ちゃんって日頃どんな話し方してるんですか!?やっぱり何時ものような感じですか!?」

「楓?ん〜…私の前では何時もの感じだけど、他ではかなりぶってるわ」

ぶってる…?
其れは一体どんな感じ…?

「?」

「ぶってるってのは、ぶりっこしてるって事」

ぶりっこ…!

「まぁ何とかなるわよv」

何でそう嬉しそうな顔してるんだろう、此の人…。

俺、ぶりっことか出来るんだろうか…。

「竹さん、ぶりっこって…例えばどんな感じですか…」

「か弱いフリして心の中は腹黒い奴の事を意味するわ」

え…!?
竹さん…かなりの爆弾発言のような気が…。

「何時もは平気な虫とか、男の子の前ではキャー怖ぁい!なんて女の子女の子したのを演じたり?」

我が姉は虫とか全然平気で潰せるよ。←

「楓って、何時もニコニコしてるんだけど心の中じゃ相当黒い事考えてるわきっと」

笑いながら言う竹さんが恐ろしい…。
こんな姉の情報、全然いらなかった…。







竹さんにバレたが,まぁいいとしよう。
お昼も人気のない場所で美味しく頂いた。
もう満足です。

「ひーくん大丈夫?」

「何とか乗りきってみせます!」

あ、でも1つだけ…

「姉ちゃんって頭いいの?」

「…超絶悪いわよ」

「…………………………ぇ」

「…………やらかしたのね」

どーしよーーーー!!
普通に理解出来てから答えちゃったりしてたんだけどっ!?

「てかまだ中学生なのに高校の問題分かるなんてやっぱりひーくんは頭いいのね!」

「…終わった…」

俺の人生、終わった…。

「そう言えば、此の事七海ちゃんには言ったの?」

「……………………………あ」

「…知らないわよ…?」

問題増えたしー…。
 
こっちもどーしよー…。
泣けてきそうだよ。

いや、七海は分かってくれそーだけど…。

「ま、頑張って!」





昼休みも終わりを告げ、後2時限…。
どう乗り切ろう。

取り敢えず、姉ちゃんはバカって事とぶりっ子ってのは頭に入れておかなきゃな…。

教室へ戻ると、何故か視線を感じた…。

「…」

え、此れってヤバめな感じですか…??

「楓」

視線が集まる俺に、1人の生徒が近寄ってくる。

「…本当に楓?」

やっぱりヤバめな感じだった!!

「何言ってるのか分かんなぁい」

「だって、今日の楓変!!」

だから、其れは俺が弟だからだよっ←

「何時も問題当てられても分かりませんで押し通す楓が、普通に答えてるし、しかも合ってるし!!」

「偶々だよっ」

もう、無理じゃね!?
完全に疑われてるんですけど!

内心焦ってると、内ポケットに入れておいた携帯が震えだした。

「あ、ごめん…電話っ」

俺は教室を出て、一目散に階段を駆け上った。

「はぁはぁ…もしもし!?」

『響?今何処よ』

「姉ちゃぁん…」

『だっらしない声ね』

「もう無理だって!皆疑っててさ!」

『チッ…』

舌打ち!?
ちょ、酷くないですか!?

『今から5時限目でしょ?途中で抜け出しなさい。
トイレ行くとか言って。後でメールしとくから』

「分かった」

電話を切ると、俺はまた教室に戻り、授業が始まるのを待った。
其の間、皆からの視線は消える事はなかった。

そして、5時限目が始まり俺は先生にトイレに行くと言って教室を後にした。

メールを確認して、指示通りの道を進めば校舎の外にある古びた建物に辿り着いた。

「…姉ちゃん…?」

「こっちよ」

其の建物の物陰から手招きする姉発見。

「どーすんだよっ」

「面倒だけど、もう変わってあげるから」

安心でか、長いため息が自然にでていた。

「俺の着替えは?」

一番の問題だ。
俺が着てる制服は姉ちゃんが着るとして、俺が着て帰る服は??

「アンタの着替えなんて持ってきてる訳ないでしょ。
仕方ないけど此れ着て帰りな」

ミニスカート…。

「何、イヤなの?」

「…いえ」

あの後、姉ちゃんが着てた服に着替えてから、俺は学校をこっそりと出ていった。






「…もう、散々だな…」

街に出ればもう姉ちゃんの知り合いには会わないと、思っていた矢先の事だった。

「さて、七海にはどう説明しよう…」

そんな訳ある筈ないのにね。
だって、レディースの頭やってて姉ちゃんの気分で何チームもの暴走族を壊滅してきたか分からない、そんな危ない女だって事を俺はすっかり忘れていた。

「くぅろぉばぁらぁ〜…」

「Σっ!?」

「此処で会ったが5年目!!!」

「其れを言うなら100年目じゃ…」

「うるせぇ!此の際どーでもいーんだよ!
テメェにぁ世話になったからなぁ…
まさかこんな場所で会えるとへ思ってなかったぜ!」

「………すみません…誰ですか?」

俺の其の言葉が相手の堪忍袋の緒をブッチンさせてしまったようで、見た目不良さん中身も不良さんは目を見開きながら拳をプルプルさせていた。

「テメェっ!!昨日の事だろうが!!」

え、昨日?

「集会あったっけ…?」

「自分のチームの事も忘れるとはなっ」

イヤ、俺のじゃないから分かんないし。

「ちょっと失礼」

俺は姉にチャットアプリてメッセージを送信してみた。

『姉ちゃん、昨日どっかの族潰したとか言わない?』

何やらヒマだったのかすぐに返事が返ってきた。

『潰したけど、其れが何よ』

『其の潰した?かもしんない族の1人が今俺の前にいるんだけど…
姉ちゃんと勘違いしてんのよ、此れが』

『関わると禄な事ないから早く帰んなさい』

どーやって?
ガン見でプラスかなり睨んでらっしゃいますけど…。

「あのぉ、実を言うとアナタの言う黒薔薇は俺の姉でして…」

「俺?…」

「事情があって…こんな格好してますが、一応男です…」

「あの女の弟?」

そう言うと不良さんの顔から怒りがなくなった。

「…苦労してんだろ」

「え?…あ、まぁ…其れなりに」

「俺はさ昨日、ただチームのダチと食っちゃべってただけなんだよ。
しかも、俺のチームのアジトでな」

ちょ、不良さんいきなし語り出したんですけど…。
俺はどうすればよいの?

「いきなり現れて、『アタシの為に潰れな』とか言ってよぉ…」

うわぁ…。
姉ちゃん、昨日何があったの…。




















あれから不良さんの語りは1時間もの時間に及んだ。

正直、キツかった。
我が姉ながらの其の悪の所業。
見ず知らずの不良さんに其の愚痴を聞かされて、苦笑いする俺。
疲れたんだ。

そして、そんな話をしたところで無駄だとしか言いようがない。
不良さんには悪いけど。

「…ただ今…」

漸く自宅に到着。

「ちょっと響!!」

「な、何だよ!」

「アンタ!何やってくれてんのよ!」

姉ちゃん怒ってるね。

「私のイメージ丸潰れじゃない!」

や、レディースの頭張ってる時点で既に手遅れだろ。←

「俺は悪くないでしょ!姉ちゃん何1つ教えてくれなかったじゃん!」

「はぁ!?そんなの頭いいアンタなら考えれば出来るでしょうが!!」

「無理なのは無理!」

姉ちゃんとの口喧嘩を長々していると、母さんが出てきて場を収めてくれた。

両方悪いって…。
何で俺も!?

そう思いながら俺は部屋へ行き、姉ちゃんのスカートを脱ぎ捨てた。

「もう、絶対行かない…」

二度と女装なんてしない!!

そう心に誓った…。




end...


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