紹介します
心の中で唱えたら、どっかの神様が何を考えたのかは知らないが、食堂に1つの甲高い声が響き渡った。
「ととーーーー!!」
其の声は、俺のよく知る、可愛い可愛いあの子の声…。
バッ、と声のする方に顔を向けると小さな体が一生懸命こっちに走ってくる様はもう食べちゃいたいくらいだった。
「え、子供…」
「どうしてこんな場所に?」
「か、可愛いっ」
「迷い子、か?」
「馬鹿!子供1人で来れるような場所じゃねぇよっ」
「じゃあ誰の…」
食堂にいた生徒たちの声。
俺は勢いよく椅子から立ち上がった。
「「三枝(さん)?」」
「「響(くん/さま)?」」
「ヒビ?」
皆の声は聞こえたけど、今は其れどころじゃないんだ!
「光っ!」
「ととっ」
其の小さな体が飛び付いてきたのを持ち上げて抱き締める。
我が子との再会を喜ばない親は何処にもいない。
ましてや、其れが久しぶりなら尚更だ。
しかし…
「光、何で此処に…」
「あーちゃんととに会いにきたの!
とと、遊びにいってもいーって言ったから!
ちゃんとジージも一緒っ」
「コラ光、走ったら危ないだろ?」
少し息を乱した我が父登場。
「ふぅ…久しぶりだな、響」
「え、あ…久しぶり…」
何此れ。
いや、光に会えたのは嬉しいよ?
嬉しいけど…どうして?
どうして親父と一緒に此処にいるんだよ…。
数時間前に電話したよね?
遊びに来てもいいって言ったけど、あれは文化祭の時の話であって今日じゃなかったんだけど…。
「光、ととが吃驚してるぞ?」
キャハハと笑ってる我が子。
可愛いんだけど、さ…。
頭がパニックになって、何が何だか…。
「あ、そうだ…」
取り敢えず…そう思って、俺は光を抱いた侭竜也たちの所に戻った。
「えっと、紹介するよ。
俺の親父…」
「どうも。何時も響がお世話になってます」
「「舶ヰe!?」」
「「博O枝(響くん/さま)のお父様!?」」
え、そんなに吃驚する…?
あー、見た目30前後だから、余計にか…。
親父を紹介していると上から降りてくるモジャリンコたちが見えた。
「響!」
副会長さんたちも、集まってきて俺の親父に目を向けた。
父親だと言うとモジャリンコ以外は然程興味なさげに頭を下げた。
「なぁ響、此の子は…?」
モジャリンコが光に目を向けた。
会長たちも釣られてて。
「此の子は光って言って、俺の息子なんだ」
「「泊ァ子っ!?」」
食堂にいた全員の声が揃った。
竜也以外だけど…。
「響、父さん此れから韓国に行かなきゃならないんだ。
此処の理事長にはOKもらってきたから安心しろ」
「…は?」
「光、いい子にしてととの言う事聞くんだぞ?」
「うん!」
「日曜、ねーねが迎えにくるからな?」
「…え?」
「此れ、光の着替えとか入ってる。じゃあまたな息子よ」
荷物を無理矢理渡されて、そう言った親父は去っていく。
「ちょっと!」
親父を追いかけようとすると、邪魔するように携帯が鳴る。
「こんな時にっ」
〔光ちゃん大きくなってたね〕
理事長からだった。
「……何だよ此のメールはっ」
俺はいつぞやと同じようにすぐさま電話をかけた。
「理事長!」
『また随分と早いね』
「どうゆう事ですか!?」
『おや、怒っているのかい?』
「怒ってはいないですけど、説明してもらっていいですか?
何で親父が光と一緒に此処にいたんですか!
どうして光を置いて親父はさっさと帰ったんですか!?」
『光ちゃんが君に会いたくて駄々を捏ねてしまったらしくて、私に連絡がきてね。
君のお父さんは私の先輩なんだ。お願いされちゃったら断れないだろ?』
「…で、光は?親父帰っちゃいましたけど?
てゆうか平日ですよっ!?」
『其の事なら心配ないよ。
日曜まで親子水入らずで過ごすといいよ。と言っても明日は金曜日だけど…
光ちゃん学校に連れて行ってもいいからね、許可は出しておくよ』
「…いいんですか?」
『構わないよ。君には前に転校生の事で迷惑かけてるから』
「有り難うございます。でも、あの約束とは別ですからね」
『ふふ、分かっているよ』
電話を切って溜息を付いた。
「光、あんまりジージを困らせちゃ駄目だろ?」
「…だって、あーちゃん…ととに会いたかったんだもんっ」
仕方ないか…。
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