族狩りー朝丘登場

 
教室に入ると、HRはもう終わっていて教室にも殆どの連中は帰っている中

「せっちゃん!」

「お帰り…」

泉ちゃんと恭平くんはまだ帰っていなかった。

「ただ今帰りました。お2人はどうなされたんですか?」

「せっちゃんを待ってたの!」

「一緒に帰ろうと思って…」

待ってくれたのか…?
何て優しいんだ!

「すいません、待たせてしまって… じゃあ帰りましょうか?」

「うん」

「…(コク)」

俺たち3人は鞄を手にし、教室を後にした。

寮までの道のりは近からず遠からず。
歩いて5分とかからない道のりの途中、

「天倉、刹那ってお前か?」

誰かは知らないが、顔立ちのいい美形が立っていて俺たちは足を止めた。

俺とあんまり変わらない身長の茶髪くん。

「そうですが?貴方は…」

親衛隊か、な…?
でもこんな美形が親衛隊な訳がないし…。

「朝丘比沙美…」

朝丘…?
えっと、朝丘…朝丘…朝丘…。

あ、族狩りの1人か…。

「僕に何か用ですか?」

「あんまり生徒会に首突っ込むと、お前まで犠牲になるぜ?」

「犠牲とは、どうゆう意味でしょうかね…
首を突っ込むなと言われても、生徒会の面々はお友達ですから無理ですよ」

俺がそう言うと、朝丘って奴は、無言の侭俺を睨んでいた。

「あ、そう言えば10月に開催されるサドンデスマッチ、貴方も出られるんですか?」

「もちろん」

「じゃあ、其処でまたお会いしましょうよ。
僕も其れに出る予定なんで、当たればお手合わせ願います」

「手加減はしないからな」

「手加減されては僕が楽しくないですよ」

では、そう言って泉ちゃんと恭平くんと足を進めた。

朝丘比沙美ね。
族狩りだか何だか知らないけど、俺の敵じゃねぇよ。
サドンデスマッチ、本当楽しみなんだけ ど。
つか、本当、色んな意味で楽しみだ…。

「大丈夫…?」

心配そうに泉ちゃんが顔を覗き込んでくる。

「大丈夫ですよ」

にっこり笑ってあげると、何だか安心したようで笑顔を見せる泉ちゃん。
 
「明日は僕の兄も帰って来るので、暴れたりしたら何かと厄介なんであんまり心配かけたくないんですよ…」

「あれ?お兄さん夏に帰って来るんじゃなかったの?」

「其れが、何か僕に会いたいからって早く帰国するって決めちゃったみたいなんです…」

「もしかして、ブラコンってヤツ…?」

恭平くんが首を傾げると同時に泉ちゃんも首 を傾げた。

「はい。でも…」

「「でも??」」

「兄の場合、ブラコンと言うか愛を感じると言うか…」

「凄いお兄さんだね…」

「うん…」

3人揃って苦笑しながら、寮へ入る。

明日は土曜日だし、昼で学校も終わるからいい。
多分、兄貴も昼頃に日本に着くと思うし。

「ねーねー!お兄さんはせっちゃんに似てるの?」

「いえ、父親似で格好いいですよ。
僕は母親似ですし…」

「そうなんだ…」

兄貴の会話をしつつ、数時間後に迎えに行くから、と其々の部屋へ。

鞄をソファの上へ投げやりカツラを取る。

「吃驚するだろうな…」

クスクスと笑って、日本へ帰って来る兄貴が待ち遠しくて。 数年前の記憶が甦る。

ロンドンへ発つ日の空港の中。

『刹那、行って来るね…』

『行ってらっしゃい』

今までずっと一緒にいた兄貴との別れの日。

『…お兄ちゃんがいなくて寂しい?』

『もちろん寂しいよ?
俺も付いて行ってあげたいけど、勉強しに行くんだから仕方ないし…頑張ってね?』

『刹那ぁーー!』

『もぉ泣かないの!』

『お兄ちゃん、ちゃんと帰って来るからね…大人しくいい子で待っててね!』

『うん、待ってる』

『可愛いまんまでいてね!』

『其れは、分からないけど…』

『電話…』

『ちゃんとするよ。ほら、もうフライトの時間来るよ?』

『行ってくる…』

中々足を動かさない兄貴に、俺は多少困ったけど。

「懐かしいな」

普段は本当格好いいんだけどね…何って言うか、かなりの心配症だし。
直ぐ泣くし…寂しがり屋だし。

「あー、本当明日が待ち遠しいよ」

4年振り、だからね…。

立て掛けた写真に笑い掛けた。
 

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