君の夢が | ナノ


07



光来くんはわたしのことを解放し、家の中に入ると洗面台とトイレの場所を教えてくれて部屋へと入っていった。思ったより綺麗、という感想の部屋は確かに女っ気は一切なくて。無言で部屋を見渡していると「あんま見んな」と目を隠される。急に奪われた視界に驚いてふらつく体。

「あ、ぶねぇ」
「光来くんのせい、でしょ」

尻餅をついたと思えばそこは光来くんのベッドで、重力に引っ張られ上半身がベッドに沈む。視界がやっと解放された時、目の前に光来くんの顔が合って近さに驚く。

(今、わたし光来くんに押し倒されてる、?)

逃げることも出来ずただただ無言で見つめ合っていた。穴が開くほど光来くんに見つめられ、恥ずかしくて顔から火が出そうだけど光来くんの目力に吸い込まれ目を逸らせなかった。

「目、閉じろよ」

光来くんから、優しくて、甘くて。そんな声が聞こえて言われるがままに目を閉じる。ギシ、っとベッドが沈み光来くんの体重が移動する。息が顔にかかり、もうすぐそこまで光来くんの顔が近づいてるのがわかり口から心臓が出そうになる。まだかな、と思った瞬間に柔らかいものが自分の唇に触れたのがわかる。それは本当に、一瞬の出来事で。光来くんにしてない、と言い張られたら信じてしまいそうなくらい優しいキスだった。

恐る恐る目を開けてみると、光来くんのわたしを見る目があまりにも優しくて胸焼けを起こしそうなくらいだった。目が合い、なんて言おうと考えている瞬間には声がもう出ていた。

「もう1回、して?」
「っ、なまえ、お前...!」

自分でもこんなに大胆なことを言えてしまうとは思わず、自分の発言に自分で驚く。光来くんはもっと驚いていて、目逸らされるがぎゅっと目を閉じて待っていると頬に手が触れ、また唇が触れ合う。唇が触れただけなのに、心の中まで全て分かり合えたような、そんな気持ちになる。さっきより少し長いキスは、光来くんの唇が震えていることにも気づけるほどゆっくりとした優しいキスだった。直立のままの手を光来くんの背中に回すと大袈裟なくらい体がびくっと動く。

「ん、っ」

自分の口から出た甘すぎる声に驚くが、光来くんは特に気にしてないようでわたしの唇を愛おしそうに何度も自分の唇で触れてくる。

「こ、らいくん…」
「…っ、なんだよ」
「好き。大好き…へへ」
「俺も、なまえが好きだ」

ぎゅーっと、抱きしめられ、2人で何度も唇を合わせる。買ってきたジュースを冷蔵庫に入れてないな、なんてどうでもいいことが頭の中を一瞬過り脳内から追い出す。今は、光来くんのことだけを考えていたかった。

「わ、悪ぃ。重くなかったか?」
「ん…大丈夫」
「…可愛い」
「も、やだ…恥ずかしい…」
「あーーーー、やべぇ。俺、幸せだわ」

キスのしすぎて少し赤くなっている光来くんの唇を見ながら、わたしも幸せだと返事をする。2人で体を起こし、ベッドに並んで正面を見ながら部屋の中だけど手を繋いでたくさん話をした。光来くんの家からわたしの家は、そこまで距離がなく終電も気にしなくていいような距離だが、そろそろ帰らなきゃとスマホで時間を確認する。

「帰る、か?」
「うん。そろそろ、帰んなきゃ」
「送ってくわ」
「いいよ!近所だし、光来くん明日練習でしょ?」
「彼女、1人で帰らせる男がどこにいんだよ」

ほら行くぞ、と光来くんが立ち上がって家の鍵を持って家から出る準備をする。急に心の中にぽっかり穴が空いたように寂しくなって、わたしは光来くんの背中に抱きつく。

「お、おい」
「バイバイの、ちゅーして」
「…っ、」
「おねがい、っん…」

今までで1番強引なキスだが、歯が当たることもなく唇と唇がぶつかり光来くんからの甘いキスを全身で受け止める。後頭部を手で抑えられ、息が苦しくなり光来くんのシャツの胸元をぎゅっと握ると光来くんの手がわたしの両肩に乗りがばっと距離を取られる。

「これ以上はダメだ!送ってく」

真剣な顔をして何を言われるのかと思えばそんなことで。

「...いいのに」
「あ?!ダメだろ!!ゴ、ゴムもねぇし...」

後半につれ声が小さくなる光来くん。可愛くて可愛くて堪らなくなる。きっと本人に言ったら怒られること間違い無いけど思うのは許してほしいと思いながら「じゃあ帰るね」と手を繋いで一緒に家を出た。







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