君の夢が | ナノ


番外編



「痛かったら言えよ」

なんて、言ってる光来くんの声が震えていて自然と強張っていた体も緊張が抜けていくのがわかった。自分より緊張している人を見ると、緊張が解れるなんて本当かと疑っていたけどどうやら本当だったらしい。

先日の突撃光来くんのお宅訪問から1ヶ月。お母さん、お父さん、なまえは今日大人の階段を一歩登ります。初めてを捧げるのが光来くんで本当に嬉しいし、絶対に後悔しない自信があった。

◇◇◇

「来週、この日オフで。その、あの、…なんだ…えっとな」

わたしのバイト先でカレンダーを一緒に見ながら次のデートの日程を合わせようとしているが、どうにも光来くんの歯切れが悪い。

「用事あるの?そっち優先してもいいよ?」
「違うわ!ちが、そーじゃなくて…」
「ん?」

1人でころころ表情の変わる光来くんを見ているのが楽しくて、横から頬にキスをすると真っ赤に染まった顔で光来くんが怒ってくる。

「嫌だった?」
「バカ!そうじゃねぇ!」
「バカって、!」
「この日泊まりに来いって、言いたくて、」
「いいよ」
「いやでもまあ、なまえにもその予定とか…え?いいのか?」

まるで漫画みたいなやりとりに、また光来くんのことが愛おしくなる。個室だからといつもより少し甘えてしまい横並びの光来くんの肩に頭を乗せて「うん、いいよ」と返事をする。

「言っとくけどな、ただの泊まり、じゃねぇぞ」
「そんなの…わかってるよ」
「…なら、いい」

やっぱり光来くんの顔が見たくなって、肩にもたれるのをやめて光来くんの顔を覗き込む。言ってきたのは光来くんの方だったのに耳まで真っ赤になっていて。わたしの中の光来くん大好きメーターなるものが一瞬で振り切れてしまいそのまま光来くんの頭をぎゅっと抱きしめる。

「好き」
「な、!急になんだよ」
「好きだなって思ったの」
「ちょっと、離れろ!」
「やだ。好きだもん」
「やめろ!おい、こら。…あ、当たってんだよ!」

何が、とは聞かなくてもさすがに自分でわかる。でも、照れている光来くんが可愛いのが悪いから、わたしは何も悪くないです。

「でもさぁ」
「んだよ…」
「もうすぐ全部、光来くんにあげるんだからちょっとくらい当たっててもいいじゃん」

そんなに怒らなくても…と続けようとした言葉は、光来くんからのキスで封じられ外に出ることはなかった。光来くんってば、どんどんキスが上手くなっていてずるい。光来くんのキスでわたしがどれだけドキドキさせられてるか、教えてあげたいくらいだった。いつもより少し長めのキスは、光来くんとわたしの気分を高揚させるには充分で。2人で何度も舌を絡めあって、キスを続けた。息が苦しくて、光来くんの服をぎゅっと掴みながら名前を呼ぶと光来くんの動きが止まる。

「っ、こ、…らいく、」
「あーーーーーーー!悪ぃ、やりすぎた」
「…光来くんの、えっち」
「いや待て。俺は今、なまえが可愛すぎてこうなったわけでなまえが悪い」
「そんなのわたしだって、光来くんが可愛いから、つい…」
「あ?お前さっきのわざとやってたのかよ!」
「わ、わざとじゃないもん!結果的におっぱい当たっちゃっただけで」
「お、おおお前!おっぱいとか言うんじゃねえ!感触思い出しちまうだろうが」
「…思い出したらいーじゃん」

あまりにも焦って、外に聞こえるんじゃないかってくらい大きな声はやっぱり外に聞こえていたようで。次の出勤で先輩に「個室でイチャイチャすんな〜」と揶揄われたのでやっぱり光来くんの声は大きいってことが判明する。

光来くんとのお泊まりデートまで、あと一週間。想像しただけで恥ずかしいけど、光来くんとなら、と思えば恥ずかしい気持ちよりやっぱり愛おしい気持ちが勝ってしまって。初めては痛いとか、色々友達に聞いたけど光来くんが気持ちよくなってくれて、わたしで興奮してくれるならなんでもいっか!と一周回って前向きな気持ちになってきた。ここまできたら絶対に忘れられないはじめてにしてやる!とわたしはバイト代を叩いて今まで買ったことのないセクシーな下着を買いに出かけたのだった。





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