追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


ホワイトデー





ちょうど先月のバレンタイン事件を皆さま覚えていますでしょうか?影山くんとのツーショット事件。あの写真は大事にカメラロールに保存してある。いや、そういうことじゃなくて影山くんにホワイトデーのプレゼントを渡さなければならない。ここ数週間何をあげるかで本当に困り果てていた。19歳の男の子に何をあげたら喜んでもらえるか、なんて全くわからない。影山くんの好きなもの?バレーボール。いやいや、というのをずっと繰り返している。

「ねぇ、牛島選手に今まで何あげた?」
「えー?タオル、練習用のTシャツ、あとはキャップとかそんな感じかな?」
「やっぱその辺が無難だよね〜」

スマホで10代、ブランドで検索をかける。影山くんは練習用のTシャツはこだわりがありそうなのでタオルにしようかな、そんなことを考える。が、ホワイトデーにタオルもなぁ、とまた振り出しに戻った。

「影山くん?」
「そう、あのツーショット事件バレンタインって言われたからお返ししなきゃなって」
「あー!あれね!」

この時わたしは友人がなぜこんなにも笑ってるのかわかっていなかったが、後日それは近い未来で知ることになる。

「Tシャツにしなよ!影山くん変なTシャツばっか着てんじゃん!」
「変なって、やめてよ!可愛いもん!」
「何しても可愛いって言うじゃん...」
「?影山くんはこの世にいるだけで格好いいし可愛いけど?」
「ウン、わかった」

友人が呆れながら最近の流行りのメンズブランドを教えてくれる。シンプルなデザインで運動中にも私服にも使えそうな物だった。よし、これにしよう。思い立ったらすぐ行動のわたしはその日の試合後にすぐショップへと向かった。

ショップへ入るも色や柄で悩んでしまい、結局店員さん一押しの黒にブランドロゴが入ったシンプルなものに落ち着いた。
影山くん肌白いし、髪の毛黒で綺麗だから多分似合うと思う。うん、自信持って渡そう!

そう言ったものの、バレンタインとは打って変わってプレゼントの袋を持ってる子がおらずわたしは列の後ろで挙動不審になっていた。
ホワイトデーにプレゼント渡すって、もしかしてわたし間違えたかな。そう思いながらも時間は無常に過ぎ、とうとう自分の番になる。

「影山選手お疲れ様でした!」
「っす。今日も来てくれて嬉しいっす」
「今日もかっこよすぎて、目が一個じゃ足りなかったです...」
「アザス」
「それで、その、えっと」
「はい?」

色紙にサインをしながら影山くんがわたしを見る。いや、見なくていい。サインに集中して欲しい。そんな思いを抱きながら書き終えたサインを受け取りプレゼントの紙袋を代わりに手渡す。

「先月、バレンタインを影山選手から頂いたのでお返しのホワイトデーです!」
「え!いいんすか?なんか高そうな袋っすけど」
「気に入ってもらえたら嬉しいです」

影山くんが嬉しそうに受け取ってくれてほっとした。サイズも多分大丈夫なはず。まあ部屋着にしてもらっても、練習着にしてもらってもTシャツならサイズさえ合えばどうにかなるかな。なんて考えながら帰宅し家でスマホを見ていると、珍しくSNSの通知が来る。

「え!影山くん更新した?!珍しい〜〜〜!」

通知は影山くんのSNSが更新されたもので、普段殆ど更新されないのでテンションも上がってしまう。通知をタップし、SNSのアプリを開くとわたしはそのまま驚きでスマホをひっくり返してしまい足の上に落としてしまった。

床に落ちたスマホの画面には「いつもありがとうございます」のコメント共にわたしがあげたTシャツを着て自撮りをしてる影山くんの写真が表示されていた。嘘じゃないです、本当の話です。信じてください。 

先日のホワイトデーの後、ファンの間では珍しい影山くんのSNS更新にざわついていた。例に漏れずわたしも散々騒いだうちの1人なんですが、何よりもまず思ったのはTシャツのサイズが合っててよかったという気持ちと見立て通り似合ってて本当に良かった、顔がいい。という思いだった。

友人にはTシャツをプレゼントすることは話していたのですぐさまスクショが届き「これ?!?!?」と短い興奮した文章が送られてきた。わたしがやっと事を理解できたのは、その友人からの連絡が来てからだったのかもしれない。
この引き攣った笑顔の写真は家宝にするし、待ち受けにするし、家宝にする。

そしてわたしは今日も影山くんの試合を見に来ていた。試合が終わり、サインをお願いしに行くと珍しく声をかける前に影山くんから小声で話しかけてきた。

「SNS見ました?」
「み、見ました!珍しくて驚いたんですけど、更新嬉しかったです」
「アザス」
「自撮りもかっこよくて待ち受けにしちゃいました」

さすがにTシャツのことに触れるのは憚られ、当たり障りなく嬉しかった事を伝えると影山くんは不服だったようで腑に落ちない様子で何かを伝えようとしていた。

「気づきませんでしたか?」
「、き、づいてました」
「よかったっす。見えなかったのかと思ったんで」
「よく、似合ってました。選んで良かったです」
「自分じゃあんなオシャレなの買わないんで、嬉しかったっす。ありがとうございました」
「こちらこそ写真めちゃくちゃ嬉しかったです!待ち受けにしてます!ありがとうございました」
「っス。俺も、いや、なんでもないっす」

影山くんが少し照れている気がしてこっちまで恥ずかしくなってきた。お互い目が合い、何かを話そうと口を開いたが周りに人が集まってきたためわたしは「また次の試合も楽しみにしてます!」と切り上げてしまった。去り際に影山くんから「来年も、待ってます」と面と向かって言われてしまい頷きながらその場を後にする。今日も影山くんが格好良すぎてしんどい。来年のバレンタインこそはチョコレートを渡そうか、そんなことを考えながら待ち受けの影山くんと目が合い思わず笑ってしまった。

そして、引越し準備中に飛雄くんの部屋で偶然Tシャツを見つけ、「このTシャツ、まだ持っててくれたんだ」と思わず嬉しくてTシャツをぎゅっと抱き締めたのだった。





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