「影山選手!お誕生日おめでとうございます!」
そう言って影山くんにプレゼントを渡すと、にこりと珍しく笑ってくれてわたしも自然と笑顔になる。
「アザス」
言葉こそ素っ気ないものの、表情を見れば喜んでいることは明白で。開けてもいいかと視線で訴えてくる影山くんに「どうぞ」と伝えると紙袋から取り出された包装紙はビリビリと破られ中身が現れる。
「手袋、すか」
「あ、はい...!ハンドクリームとかも考えたんですけど、愛用のものがあったら使い辛いかなと思いまして...」
目の前の影山くんはなんとも言えない顔で手袋を見つめていた。わたしはもっと何か別の気の利いたものにすればよかったと何故か激しい後悔に襲われて自然と目線が自分の手元に下がっていく。
「嬉しいっす」
そう、声が聞こえてガバッと顔を上げるとほんのり頬が赤くなっている影山くんと目が合う。わたしが勢いよく顔を上げたことに驚いたのか、さらに顔の赤色が濃くなる。そして、まるで顔色を誤魔化すかのように鼻を指で触り始める。可愛い。
「気に入って頂けたら、嬉しいです」
「すげぇ気に入りました。毎日使います」
「ふふ。ありがとうございます」
影山くんってば、そんなお世辞も言えるようになったんだと少し嬉しくなって微笑むと影山くんも嬉しそうに微笑み返してくれる。え?好きなんだけど...!今日もわたしの推しが世界一格好いい...!
そして、影山くんと他の選手が一緒に写っている写真に高確率で手袋をしている姿を発見できて、わたしはまた影山くんから幸せをもらうことになる。
...プレゼントをあげた方が幸せになるってどういう状況ですか?