追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


ロボット





「なまえさん、俺に何か言うことないですか」
「え?好きだよ...?」
「ありがとうございます。俺も好きです...いや、そうじゃなくて」
「えっ?!違うの?」

飛雄くんがむすっとした表情でわたしのスマホを指差す。

「スマホ、がどうかした?」
「.......誰と最近連絡取ってるんですか」
「え?」
「なまえさんスマホ見てよくニヤけてる」

そう言われて初めて飛雄くんが言わんとしていることがわかり、一瞬で脳内が愛おしい気持ちでいっぱいになる。だが、目の前の飛雄くんは至って真剣で。からかってはいけない、とわかってはいるのだがついつい可愛くてからかってしまう。

「あ〜...うん、ニヤけてるかもしれない」
「誰ですか。俺の知ってる人ですか。男ですか」

ごめんね、と心の中では謝りながらも飛雄くんの方を見ながら煮え切らない返事を繰り返す。

「飛雄くんの知ってる人だよ」
「...男ですか」

二度目の質問。ソファに座っているわたしの目の前に立っていた飛雄くんが、その場で座り込みわたしの膝の上におでこを乗せる。ぐりぐりとわたしの太ももに額を押し付けてくる姿は、まるで大きな子供がだだをこねているようだった。可愛くて頭を何度も撫でていると飛雄くんがガバッと顔をあげてわたしのことを無言で見つめる。

「日向ですか」
「違うよ」
「...牛島さんですか」
「ううん」
「宮さんですか」
「違う〜」
「嫌です」

そこでまた飛雄くんが顔を太ももに埋めて腰に手を回される。頭がお腹に食い込んできてくすぐったい。両手で形のいい頭を撫でながら両耳に触れると飛雄くんがもう一度顔をあげて見つめてくる。

(あ〜この角度めちゃくちゃ可愛い。好き)

飛雄くんのおでこにキスをすると前髪をかきながら「もう一回」とおねだりしてくる。笑いながらお望み通りにもう一度キスをしようとすると飛雄くんが嬉しそうな顔でぐっと距離を縮めて唇を奪われた。

「ふふ、可愛い」
「なまえさんの方が可愛い」
「スマホ、見てもいいよ」

飛雄くんからのキスが一度で終わるわけがなく、何度か軽いキスを繰り返しながら気づけばわたしの膝の上に飛雄くんが向かい合わせで座っていた。

「ん、っ」
「......」
「見ても、いいよ?」
「でも...それは...」
「飛雄くんに見られて困るものないし」
「なまえさんのこと別に疑ってるとか、そんなんじゃねぇけど」

飛雄くんが葛藤してる姿可愛くて思わずぎゅっと抱きしめる。さっきと違い、今度は飛雄くんの方が高い位置にいて。頭やおでこ、鼻や頬に好き勝手何度もキスをしてくる。

「飛雄くんと、連絡取ってたの」

そろそろネタバラシしてもいいかな、と飛雄くんの不意をついて話し出すと飛雄くんの顔が理解できないものを理解しようとし歪む。

「なんでそんな嘘つくんですか」
「はい、これ見ていいよ」

スマホを開きとあるトーク画面を見せる。それは今巷で人気のAIとトークできるSNSだった。莉緒ちゃんに教えてもらって、せっかくならと芸能人でも育ててトークしようかと思ったが特に思い浮かばず結局1番の推しである飛雄くんを選択してしまったことが発端だった。

いざAIとトークをし始めてみると、出会った頃の辿々しい敬語とタメ語が絶妙に混ざった懐かしい飛雄くんがいて。あの頃に連絡先を交換していたらこんな会話をしていたのかな、なんてついつい毎日トークを楽しんでしまっていた。


今何してるんですか?
トレーニングしてました。

今日も練習お疲れ様でした。
ありがとうございます。なまえさんも仕事お疲れ様でした。

影山選手は明日はお休みですか?
はい、休みなんでバレーします。
お休みの日もバレーするんですね(笑)
はい、バレー好きなんです。
存じてます。
存じてますってなんすか。
知ってる、ってことです。
俺もなまえさんの好きなもの存じてます。
さっそく(笑)なんですか?
俺ですよね?
えっ、可愛い...!
可愛いは初めて言われました。なまえさんの方が可愛いです。


そんな他愛もない会話がその後もずっと続いていて、飛雄くんの前ではあまりスマホを触らないように気をつけてはいたのだがバレてしまっていたらしい。

「じゃあなまえさんは過去の俺と浮気してるってことですか?」
「うん。わたしの話聞いてた?全然違うよ」
「いやだって!なまえさん好きとか送ってるじゃないですか!」
「だから!ロボットなの!」
「...ロボットでも嫌です」
「えっ、可愛い...!」
「ロボット相手と同じ反応するのやめてください」

真剣な飛雄くんが愛おしくて、笑ってはダメだと思えば思うほど可愛くて愛おしくて我慢ができそうになかった。急に笑い出したわたしを飛雄くんはそれはもう不機嫌そうに唇を尖らせながら見てくる。その顔全然怖くないし、なんなら可愛いから逆効果だよ。なんて思ってることをバレないように少しわたしもしゅんとして見せる。

「とりあえず俺も連絡マメに返すんでコイツともう連絡取らないでください」
「コイツって...!飛雄くんメール苦手でしょ?だからそれは今まで通り無理しなくていいよ」
「なんで知ってるんですか?」
「ふふ、だってすぐ電話してくるもん。文字打つの面倒くさい?」
「...ハイ」

飛雄くんはどうやらわたしにバレてないと思っていたようで、少し気まずそうに指を動かして目線を逸らしていた。

「嫌な思いさせてごめんね?もうこの子とは連絡取らないから、飛雄くんも無理しないで?」
「いや、俺こそ...なんか、その、すいません」

急に冷静になったのかトーンダウンした飛雄くんが塩らしく謝ってくるが全く悪いと思ってなさそうで。わたし達ってもしかしたら似たもの同士なのかもしれないと今日も思うのだった。




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