今日はなまえの誕生日だ。昔こそ、2人きりで祝ってきたがここ数年は家族4人で祝えることに飛雄は幸せを感じていて今日も仕事が終わってから家族でなまえの誕生日を祝うことをとても楽しみにしていた。
朝起きて隣で寝ているはずのなまえがいないことに気付き、キッチンへと探しに行く。自分の誕生日だというのに朝ごはんを作っているなまえに飛雄が背後から近寄り声をかける。
「なまえさん、誕生日おめでとう」
「飛雄くんありがとう」
朝ごはんの準備をしているなまえのことをぎゅ、っと抱きしめてキスを送る。
「誕生日くらいゆっくりしろよ」
「んー?みんなが朝から美味しいって食べてくれるのがプレゼントになるよ?」
「またそんなこと言って...」
「ほんとほんと。いつもありがとう」
「俺こそありがとう」
なまえがおもむろに料理の手を止めて飛雄の方へ振り向く。背を伸ばし飛雄の首の後ろに手を回し今度はなまえから飛雄にキスをした。
「わたしは飛雄くんに出会ったことが人生の最大の幸せだから、こうやって好きな時に触れられるのが嬉しい」
「な、に言ってんだ」
「ふふ。照れた?」
「...照れてねぇ」
「うそぉ〜!」
顔を背ける飛雄くんを覗き込むようにすると、顔を少し赤くした飛雄が面白くなさそうになまえを睨んでいて、なまえは思わず可愛くなり笑みが溢れる。
もう一度キスをしようとするが、子供たちが起きた声が聞こえてそちらを優先する。朝ごはんもちょうど出来上がっていたが先に子供たちを着替えさせリビングに戻るとテーブルに飛雄がセッティングをしていた。
「ママ!お誕生日おめでとう!」
「おでめと!」
「ありがと〜!!今日も飛空、飛茉のこと大好きよ」
朝ご飯を食べる前にそう2人がなまえに言い、なまえは幸せな気持ちで全身が包まれるようだった。子供たちを抱きしめながら全力で愛を伝えると2人も嬉しそうになまえの頬にキスをして喜んでいた。
「じゃあみんなで朝ご飯食べよ!飛雄くん、運んでくれてありがとう」
「おう」
「いただきまーす!」
「まーす!」
子供たちに朝ごはんを食べてもらい、飛雄くんを見送り家で子供たちといつも通りの時間を過ごす。誕生日だからと言って、特に特別なことはないけどそれすらもわたしにとっては幸せだった。
何年経っても愛してる、を言葉だけじゃなく態度や姿勢で表してくれる飛雄くん。わたしも出来るだけ飛雄くんに負けないように伝えているつもりだけど、やっぱり飛雄くんには敵うわけがなくて。こんなにずっと一緒にいてて、それでも新鮮な気持ちでいれるのは飛雄くんのおかげだと常々感謝でいっぱいになる。
いつもは鍵を開けて入ってくる飛雄くんが、今日はインターホンを鳴らしてくる。不思議に思って玄関の扉を開けると目の前に色鮮やかな花が広がっていて感動で視界が歪む。
「と、びおくん...!」
「なまえさん誕生日おめでとう」
「もー!朝聞いたよ〜!」
びっくりした、と伝えると飛雄くんは嬉しそうに微笑んでわたしを抱きしめながら朝よりは少し深めのキスをしてきてくれた。心が暖まるのを感じながらわたしも飛雄くんの背中に腕を回す。
「あー!」
「ママとパパ!ちゅーちてる!」
「飛空くんもママにちゅーする!」
「ひぃも!」
「まだダメだ」
いいよ、と言いかけるが飛雄くんの声で遮られ「ずる〜い!」と子供たちの拗ねた声が聞こえるが飛雄くんはお構いなしでキスを続けてくる。
「、も...だめ!」
「まだ、」
「だーめ!」
子供たちがみていようがお構いなしの飛雄くんの体をぐっと押してストップをかける。毎日していてるのに、こんなに拗ねられてしまうと愛おしすぎてストップをかけた瞬間からキスをしてしまいそうになる。
「誕生日、おめでとう」
「うん。ありがとう!」
「なまえさんが産まれてきてくれて、俺と出会ってくれてよかった。ありがとう」
「も〜!泣かせないでよ...!」
飛雄くんから花束を受け取り、最初に花束をもらった日のことや毎年の自分の誕生日や結婚式のことを思い出し思わず泣いてしまう。
「パパがママ泣かした!」
「ママえんえんちてるの?」
「ママのこと、泣かしていいのは俺だけだからな」
「だめだもん!」
「パパはママの大事な人だからいい」
飛雄くんがそう飛空に説明しているが飛空の頭には完全にはてなマークが浮かんでいて同じ顔が2人して不思議そうに見つめ合ってて愛おしくなる。
「さ!パパも帰ってきたしみんなでご飯食べようね」
飛茉と花束を抱えてリビングへと向かう、飛空は飛雄くんに抱っこをねだり短い廊下を4人で歩いていて「ああ、幸せだな」と心から思った。一生で幸せの回数が決まっているとしたらきっとわたしはもう使い切ってると思うし、来世の分も来来世の分も使ってしまってもいいや!と思えるほどには毎日が幸せで溢れていた。