追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


お絵描き





飛雄くんが今日も試合を終え、家に帰ってくる。一足先に帰ってきたわたしと子供たちはみんなで飛雄くんを出迎えいつも通り順番にハグとキスをしていく。

晩御飯の準備をしていると、シャワーを終えた飛雄くんがそわそわしながらわたしの周りをうろうろしてくる。こういう時の飛雄くんは大体よくないことを言い出すが、とんでもないワガママを言ってくるというのは長い付き合いでわかっている。手を拭きながら「どうしたの?」と聞いてみると飛雄くんがわたしの頬にキスをしそのまま髪を触られ髪にもキスを落としてくる。

「なぁに?言いにくいこと?」
「...あのさ」
「うん」

やっと言う気になったのか、後ろからぎゅっとくっついてきてわたしの頭の上に自分の顎を乗せてくる。

「なまえさんと、子供らの名前」
「ちょっと危ないから離れて〜」

と、飛雄くんとわたしの声が重なってしまい上手く聞き取れなかった。出来上がったパスタをテーブルに運んで、と飛雄くんに渡すと話すのは諦めたのかスタスタと運んで行ってくれた。

「ご飯できたよ〜!」
「はーい!」
「ちゅるちゅるだ!」

飛空も飛茉も好きなメニューで、喜んで自分の椅子に座ってフォークを持って待ち構えている。飛茉に「これひぃちゃんのね」と飛空がフォークを渡してあげていて微笑ましい。いただきます、の声が聞こえみんなで晩御飯を食べ始める。

「おいち!」
「ママおいしい!」
「うめぇ」
「お野菜もちゃんと食べてくださ〜い」

メインの料理ばかり食べてる子供たちに指摘すると飛茉が飛雄くんに甘えて「パパあげる」と自分のお皿から飛雄くんのお皿へと移動させていた。

「パパどうぞ」
「ん、ありがと」
「ひぃちゃんお野菜食べないとママに怒られるよ!」
「そうだよ、パパにそのまま食べさせてもらおっか」
「…や!」

飛茉はイヤイヤ、と首を振りながら飛雄くんに必殺可愛いのポーズ(最近飛茉がよくやる頬を自分で指差しにっこり微笑むポーズ)をして攻撃をしている。効果は抜群のようで、飛雄くんはわたしが見ていない隙にどうやら飛茉の分を食べたようだった。

「もう!」
「飛空くん自分でお野菜食べたよ!」
「飛空偉いね、好き嫌いなくてママ嬉しいなぁ」
「ひぃもあしたたべるもん」

飛空だけ褒められたことが悔しかったのか、唇を尖らせながらそう言ってくる。ごちそうさまをした飛茉を抱き上げ「お約束だからね?」と伝えると「うん!わかった!にぃにと遊んでくる」と調子の良い返事が聞こえる。さて、と飛雄くんを見るとわたしに小言を言われるのがわかっているのか少し罰が悪そうに見える。

「…悪ぃ」
「次は食べさせてね?」
「おう」
「お腹いっぱいなった?何かもう一品作ろうか?」
「いや、大丈夫。今日もありがとう」

飛雄くんがテーブルの上でわたしの手をぎゅっと握ってくる。

「さっきの話聞くよ?」
「…おう」
「ん〜、わかった!」
「ん?」
「今日は一緒にお風呂入りたい、とか!」
「ちげぇ」
「えっ、やだ恥ずかしい」
「でも入る。今決めた」
「ええ…!」

墓穴を掘ってしまい、今日は子供たちを寝かせた後2人でお風呂デートが決まってしまった。てっきりそういうことのお願いかと思っていたため、恥ずかしさから顔が熱くなり飛雄くんに握られていない方の手でパタパタと顔を仰ぐ。

「なまえさんと、子供らの名前」
「んー?」
「タトゥーにして、どっかにいれて良い?」
「えっ!?」
「今日チームメイトに、愛してるならそれくらい普通だって言われて」
「い、いやいやいや…!」
「三人目が産まれても足せるような場所考えてたんすけど」
「ちょっとストップ!待って!」

暴走列車の如く暴走し出した飛雄くんの口を両手で塞ぎ、物理的に会話を終了させる。飛雄くんはまさかわたしが無理やり口を押さえてくると思っていなかったようで、目を見開いて驚いている様子だった。ごめん。

「飛雄くん」
「はい」
「ずっとイタリアに住まないよね?飛空が小学校の年に日本に帰るよね?」
「はい」
「じゃあ、日本帰ったら子供たちと銭湯も温泉もプールも行けなくなるけど良い?」
「…それは嫌っす」
「日本とイタリアじゃ、タトゥーの扱われ方が違うから…こっちにいる間だけいれて、日本に入ったら綺麗に消えました!とかだったら良いけど、そういうわけにはいかないでしょ?」
「…うす。でも、羨ましいなって思って。俺もそんな本気でいれようと思ったわけじゃなくて…」

飛雄くんはモゴモゴとそう言って、わたしがあまりにも真剣に答えてしまって逆に申し訳なくなる。2人の間で少し気まずい時間が過ぎていると、飛茉が「ママみて!」と近寄ってくる。

「あ!どうしたの、その腕」
「にぃにがかきかきちた!かわい?」
「えぇ…!可愛い、けどこれ油性…落ちるかな?」

飛茉の手を少し擦ってみるが消えなくて「いたぁい」と飛茉に怒られてしまう。飛雄くんが飛空の方へと向かい、何かを飛空にお願いしているようだった。飛茉の手に描かれた絵が独特でせっかくだから、とスマホで撮っていると飛雄くんが満足そうに腕を見せてくる。

「出来た」
「…ふふっ、可愛いっ、」
「飛空くん上手にお絵かき出来たでしょ?」
「ああ、うめぇぞ」

飛雄くんが飛空の頭を撫でて褒めてあげていると、飛空も嬉しそうにニコニコと笑っていて大変微笑ましい、が飛雄くんの腕には青のペンで模様が描かれていて逞しい腕とのアンバランスさにわたしは笑いが止まらなかった。

「ひぃもかきかきする!」
「おう」

そのまま黄色のペンで上から飛茉が丸と線を書き足し、余計にカオスな腕になってしまいわたしは完全に笑いのツボに入ってしまいなかなか抜け出すことが出来なくなっていた。

「これでいい」
「パパおててかっこい!」
「飛空くんここに恐竜さん描いたの!」
「2人とも上手に描けたね」

と、2人を褒めていると飛雄くんに腕を引かれ黒いペンでそのまま飛雄くんのサインを直接腕に書かれる。突然のことに驚いて固まってしまい最後までサインを書かれてしまった。

「え!ちょっと!半袖!着れない!」
「なまえさんは俺のだから、名前書いといた」
「飛空くんもサインください!」
「ひぃもちて!」

結局飛雄くん以外の三人の腕に飛雄くんのサインが入り、もうどうにでもなれ〜!とスマホで記念写真を撮って4人でそのままお風呂に入り2人の腕を「痛い」と文句が出てもお構いなしでゴシゴシと洗ってなんとか落とすことに成功した。

「ねえ、わたしのだけ落ちないんだけど…」
「なまえさんの油性ペンで書いた」
「なんでなの!?も〜…」
「薄くなったらまた書く」
「書かなくてもいいです。これがなくても、わたしは飛雄くんのだから。ね?」

なんとかそう説得し、一週間ほどでわたしの腕のサインも綺麗さっぱり消えてなくなった。飛雄くんがわたし達の腕の写真をSNSに上げていたので飛雄くんのチームメイトに会う度に「Mostrami le tue abilità.(腕見せて〜)」としばらく揶揄われることになる。

SNSのコメントでも「可愛い!」「尊い!」とたくさん言われていたし、試合中もファンの皆さんから飛雄くんに腕を見せろと声援が飛んでいてしばらく面白かった。

色々言いたいことはあるけど、当の本人は満足そうだったので、よしとしよう。




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -