追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


三試合目





「パパまけちゃった?」

しゅん、とした表情でわたしの顔を見上げてくる飛空をぎゅっと抱きしめて膝の上に乗せる。

「負けたけどパパ格好よかったでしょ?」
「…うん…かっこよかった」
「翔ちゃんも若利くんもいっぱい格好よかったね?」
「うん!」

泣きそうだった飛空の顔がだんだん笑顔になってきて、隣に座っていた莉緒ちゃんから「さすがママ」と感心された。

莉緒ちゃんと別れてから飛空と一緒に飛雄くんの元へ顔を出してみる。飛空がパパを見つけてわたしの腕を振り解き全力で走り出してしまった。
その前を通ったイタリアの選手とぶつかりかける。思わず「飛空!前!」と声をかけるも全く耳に入らず危ない、と思った瞬間に抱き上げられ飛空も驚いていた。

「Toa!」
「ふらんちぇだ!」
「Toa〜!!È carino anche oggi.(今日も可愛いね)」
「Mettilo giù.(や!おろして!)」
「Non mi piace.(やーだよ)」

飛空を抱き上げてくれたのは飛雄くんのローマでのチームメイトで飛空は頬にキスをされて嫌がる素振りを見せていた。

「パパのてきだもん!ふらんちぇきらい!」
「キライ?」
「Ti odio.(きらい!や!)」
「?!?!」

飛空にはっきりと拒絶されたチームメイトががっくりと肩を落としながら飛雄くんに飛空を渡している。さっきまであんなに大きく見えた体が小さく見えて、思わず笑ってしまうとわたしにも気付いて名前を呼びながら手を振ってくれる。

「Sei bella anche oggi.Il tuo sorriso è splendido.(今日も誰よりも美しくて、その笑顔で僕は幸せになったよ)」

とわたしの頬にキスしようとしてくるチームメイトを飛雄くんが肩を掴んで阻止している。

「おい、やめろ」

むすっとしながらそう言ってくる飛雄くんに、チームメイトはやれやれと言うような様子でその場を去っていく。

「なまえさん」
「ご、ごめん」
「パパ!ママのこといじわるしちゃだめ」

飛空がそう飛雄くんに怒ると、飛雄くんはむすっとしたままわたしと飛空の頬にキスを落とす。

「お疲れ様!」
「...次はぜってぇ勝つ」
「パパかっこよかった!」
「ね〜!!パパが1番格好よかったね」
「うん!つよかった!とあくんびっくりしちゃった!」

くすくすと笑いながら飛空が嬉しそうに飛雄くんの頬にちゅー、っと少し長めのキスをしている。少し羨ましくなって、わたしも飛雄くんの頬にキスをすると通りがかった日向くんと目が合ってしまった。

「あ!なまえさん、えっ、あ...!お邪魔しま、した?」
「しょーちゃんだ!!!」
「飛空!!今日もいっぱい応援ありがとうな」

飛雄くんに抱かれたまま飛空の頭をわしゃわしゃと撫で日向くんはにこにこと笑顔で飛空に話しかけてくれる。飛空も嬉しそうにはしゃいでいて、さっきまでのしょんぼりモードはすっかりどこかへいったようで安心する。

「しょーちゃん!いっぱいじゃんぷちてたね!」
「おう!」
「すげぇ止められてたけどな」
「は〜〜〜ん?!!」
「パパより俺の方がいっぱいジャンプしてたもんな?」
「?」

飛空はきょとんとしたまま日向くんを見上げていて飛雄くんが勝ち誇ったようにふんっと鼻を鳴らしてドヤ顔をしていた。可愛い。

「ま!次は勝つから応援よろしく頼んだぞ!」
「おーー!!」
「なまえさん、体調は?」

気がつけば飛空は日向くんに抱っこされていて、飛雄くんに腰を抱かれながらそう聞かれる。

「今日はかなりいいよ!この子も楽しいのかいっぱい蹴ってくるの」
「...ほんとだ」

飛雄くんがわたしのお腹に触れるとお腹の子も反応していて2人で目を見合わせる。産まれてくる子は女の子だと言われているので、飛空と3人で早く飛雄くんの試合を見に行きたいなと少し気の早いことを思ってしまう。

「俺も触ってもいいすか!!」
「もちろん!触って触って〜!」

日向くんが恐る恐る手を触れると、お腹の子はさっきより活発になりわたしのお腹をどんどん蹴っていた。

「ふふ、喜んでるみたい」
「翔ちゃんだぞ〜!」
「とあくんもさわる!」
「はいどうぞ」

日向くんと飛空がわたしのお腹に話しかけている間、飛雄くんがわたしのつむじにキスをしてきて驚いて見上げる。

「...会いたかった」
「わたしもだよ」

日向くんがいなければ、きっとキスされていたんだろうなとわかるほど飛雄くんの顔にデカデカと「キスしたい」と書かれていて笑ってしまいそうだった。さっきまであんなに格好良くて、強くて、綺麗な影山選手がわたしの前ではただの可愛い飛雄くんでいてくれて嬉しい気持ちでいっぱいになる。

飛空と2人で家に帰りながら、今日の飛雄くんの格好良かったプレーを脳内で再生しながらにやにやしてしまう。

「ママどうちたの?うれしいの?」
「うん、パパが格好良かったから嬉しいの!」
「とあくんもうれち!」

にっこりと笑ってくる飛空が可愛くて、信号待ちでぎゅうっと抱き締める。2人きりの時間もあと少し、この時間も大切にしようと飛空の手を握ってまた歩き出した。次の試合は勝てますように、なんてわたしのお祈りなんて必要ないくらいみんな頑張ってるけどついついそう思ってしまった。




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