追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


オリンピック初戦





待ちに待ったオリンピック。今日の初戦のために仕事も休み、激戦だったチケットも無事2枚手に入れ彼女と参戦する。

「はぁ、緊張する」
「わかる」
「いやなんで私たちが緊張すんだ、って話だけどさあ」
「俺も昨日なんか寝れなくて寝不足だよ」

会場前で待ち合わせた彼女もいつもより寝不足なのか少し目が腫れぼったく感じる。チケットを渡し会場に入るといつもより盛り上がっている会場に圧倒される。日の丸のユニフォームを着ている観戦者ばかりで俺たちも早速服の上から着替え席に向かった。

席に着くと周りも応援ガチ勢のようで一安心する。2人揃って影山選手の背番号のユニフォームを着ていたため自然と周りのファンの方たちとの会話が始まる。

「カップル揃って影山選手のファンって、いいですね」
「ありがとうございます〜!アドラーズから影山選手大好きで…!」

彼女が嬉しそうに隣の木兎選手のファンと会話を始めていた。

「影山選手のご家族って今日も来られてます?」
「絶対来てますよ!」
「私、最近木兎選手のファンになったんでまだ生影山家族見たことないんです」
「そうなんですね〜!!息子さん、めちゃくちゃ可愛いから是非生で見て欲しいです」

何の会話だ、と思わず笑ってしまいそうになるがそのさらに横からおじさんが話しかけてくる。

「奥さん、この間会場で見たけどあれはすげぇな。あんな美人見たことねぇよ」
「ね!お似合いですよね。わかります」
「影山選手も綺麗な顔してるしな、2人並んだら圧巻だろうよ」

ワハハと笑いながらおじさんはビールをぐいっと飲み、連れとの会話を再開させた。俺と彼女も影山選手のSNSをチェックしたりしていると、日向選手のSNSに飛空くんが写っていてありがとうございますと日向選手に感謝を飛ばす。

「ママ!おにーちゃんいる!」

俺と彼女は幻覚を聞いてるのだろうか、そんな気持ちになったが声の方向を振り返ると手を繋がれた飛空くんが俺と彼女に向かって「こんにちは!」と満面の笑みで手を振ってくれていた。影山さんと目が合い会釈をした後飛空くんに恐る恐る手を振ってみる。

「みて!とあくん!きょうねパパなんだよ!」

影山さんの手を離し俺らの方にまで走ってきてくれてドヤ顔でユニフォームを見せてくれた飛空くんが尊すぎて彼女と興奮のあまり手を握り合う。木兎選手のファンの女の子も感極まって言葉を失っているようだった。周囲も飛空くんの存在に気づきざわざわとざわめき立つ。

「かっこいいでしょ!」
「うん!めちゃくちゃかっこいい!パパいっぱい応援しようね」
「おうえんする!パパきょうがんばるってあさおはなししたの」
「飛空、ママ疲れちゃったって!早く行くよ〜」

影山さんの隣にいる女性が飛空くんにそう告げる、どこかで見たことあるなと記憶を呼び起こすと牛島選手のファンの人だと自分の記憶力の良さに驚いた。

「大丈夫ですか?座ります?」
「あ、大丈夫です…!ありがとうございます」
「もう産まれそうねぇ」
「ふふ、予定日は来月なんです」

影山さんのすぐ側に座っていたご婦人が席を譲ろうと立ち上がるが、笑顔で遠慮しているようだった。確かに以前見た時よりだいぶお腹も大きくなっていて少し辛そうにも見える。近くにいた飛空くんを恐れ多いが抱き上げさせてもらって、影山さんに近づいていった。

「もしよかったらこのままお席までご一緒しますよ」
「飛空、お兄さん重たいって嫌がってるよ」
「や!りおちゃんだっこしてくれないもん。おにーちゃんがいい」
「飛空〜?わがまま言わないってお約束でしょ?」
「…や!おにーちゃんだっこちて!」
「俺のことは本当気にしないでくさい、全然軽いし大丈夫ですよ」

もうそろそろ選手の入場も始まりそうな時間だった為、申し訳なさそうにする影山さんを押し切り飛空くんを抱っこしたまま歩き出した。

「今日も応援、ありがとうございます」
「いや!俺らこそ、本当いつも影山選手のプレーに元気もらってるんで!」
「必ず主人に伝えておきます!本当にありがとうございます」
「おにーちゃんも、パパすき?」
「うん!大好きだよ!」
「へへ、とあくんもすき!」

飛空くんは俺の腕の中で両手を口元に当てて恥ずかしそうにそう言ってきて、あまりの可愛さにそのまま倒れてしまいそうになるが大事な御子息を怪我させるわけにはいかない!と止まった。

「ほら、飛空。お兄さんにありがとうして?」
「おにーちゃん!ありがと!」
「パパいっぱい応援しようね!じゃあ、また!」
「はい、また!ありがとうございました」

影山さんがぺこ、っと頭を下げてくれたので俺もぺこぺこと何度か頭を下げながらその場を去る。どう見ても関係者しかいなさそうな場所で見たことある選手の身内の方を見かけて少しテンションが上がってしまった。

自分の席に戻ると完全に拗ねている彼女が「ずるい」と俺の鳩尾にパンチを入れてくる。

「いてて、おい、やめろって」
「ずるい!ずるいずるい!ちょっと飛空くんの匂い嗅がせて」

そう言って俺の胸元にすんすんと鼻を寄せてきて、周りのファンの人たちがくすくすと笑っていることに気づく。

「すいません、騒がしくて」
「この調子で応援も盛り上げていきましょう!」

すいません〜と2人でへらへらと謝りながら周りにぺこぺこしていると、周りの人たちも「おう!盛り上げていこう!」「日本人の団結力見せてやろう!」と盛り上がってきて、選手達が入場してくる。

影山選手を目で追っていると、ご家族がいる方向を影山選手が見て手を振っているところが見えて彼女と2人で悶絶する。やっぱり影山一家、これからも俺たちの最推しです。




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