追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


エレベーター





今日は飛雄くんが遊びに来る日なんだけど、思ったより仕事が立て込んでしまい残業になってしまった。昨日の夜から仕込みはしてたし、家に帰ってすぐ準備すれば問題はないと思うけど飛雄くんはもう向かってたら申し訳ないなと帰り支度をしながらスマホを開く。

一回飛雄くんから不在着信と「適当に時間潰してます」と連絡が入っていて大慌てで連絡をする。

「ごめん、今連絡みた」
「大丈夫っす」
「いまどこ?」
「近くのファミレス」
「あー!あそこか、わかった。家着いたら連絡するね。30分くらいで帰れると思う」
「わかりました」

化粧をゆっくり直す時間すら惜しくて、電車の中で鏡を見たがもう諦めることにした。早く着かないかなと、電車を心の中で急かしてみたりするが特に変化もなくきっちり時間通りに最寄駅に着いた。いつもより早足で改札を抜けると、いた。

そわそわしながら誰かを探している、飛雄くんがいた。もう、もう!と怒りを隠しながら飛雄くんの前を素通りしてスマホに「離れて歩いて!」と文字を打ち込み送信する。

飛雄くんは少ししゅんとしながらも離れてわたしの後をついてくる。なんだか怒られた子供みたいだな、と笑ってしまいそうになるが笑い事ではないのでグッと堪えて足早にマンションのエントランスへと向かう。
だれも来ていないことを確認して、オートロックの扉を開けて飛雄くんのことを目で呼ぶ。不審に思われないように「こんにちは〜」とまるで隣人かのように接して2人でエレベーターに乗り込んだ。

エレベーターのボタンを押し、扉が閉まると同時に飛雄くんがわたしの体を壁に押し付けキスをしてくる。

「、んっ!...っ、」

驚いて目を閉じるのも忘れて飛雄くんと目が合ったまま何度も唇をぶつけられ心臓の音がうるさすぎて、他に何の音も聞こえなくなっていた。

飛雄くんのTシャツをしわくちゃになるほど、ぎゅっと掴んでいたその手を背中に回そうとしたタイミングでエレベーターの扉が開く音が聞こえて思い切り飛雄くんのことを突き飛ばし自分の部屋の前へと走っていく。

震える手で鍵を開け、家へと入ると律儀に飛雄くんがインターホンを鳴らすので「鍵空いてるよ」と返事をする。恐る恐る、と言った様子で玄関の扉を開けて入ってきた飛雄くんは怒られるかも、と不安そうな表情で部屋に入ってくる。

「と、飛雄くんのバカ!!」
「うっ...すいません」
「誰かに見られたら、どうすんの!」
「でも、なまえさんも喜んで、」
「それとこれとは別です」
「...キスも気持ちよさそ、」
「もう!」
「...キスしていいすか?」

ダメ、と言う前に飛雄くんがわたしの体を抱きしめてキスをしてくる。飛雄くんの目から愛おしいと言う気持ちが流れ込んできて、怒る気力はいっきに吸い取られてわたしも愛おしいと言う気持ちで胸がいっぱいだった。

「会いたかった」
「わ、たしも」
「なまえさん連絡取れなくてすげぇ心配しました」
「ごめんなさい」
「ん」

悪いと思ってるならキスしろ、と言わんばかりの飛雄くんにご要望通りのキスを一つ。

「駅で可愛い人いんなーって見たらなまえさんでした」
「煽てても怒ってるからね?」
「おだて、?」
「褒めてもダメってこと」
「ダメ、すか」
「...わたしも飛雄くん見つけた時格好良すぎてドキドキしちゃった」

抱きしめられてる状態で飛雄くんの胸におでこをぶつけぐりぐりと押し付けると飛雄くんの手がわたしの後頭部を優しく撫でる。

「また遅れてきてもいいですよ」
「...それはもうしないようにする」

飛雄くんの魂胆はお見通しで、いっそのこと合鍵を渡してしまおうと決めたのだった。




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