追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


七夕のお願い





「ただいま〜」という元気な声と共に飛空が帰ってくる。一足先に幼稚園から帰ってきた飛茉は「にぃにまだ?」と一緒に遊んでくれる兄の帰宅を待ち望んでいた為大喜びで玄関に兄を迎えに行く。

「飛空おかえり」
「ママ、ひぃちゃんただいま」

まだ体より少し大きく感じるランドセルを下ろし、暑かったのか額に汗を浮かべながら飛空は飛茉にただいまのハグとキスをしていた。

「今日これもらった!」

飛空がそう言って差し出してきたのは片手サイズの笹の葉で、学校でもらってランドセルに刺して帰ってきたそうだ。七夕のイベントも終わり、学校の授業で作ってきたものを持って帰ってきたようだった。

「飛空のお願いごと叶うといいね。なんて書いたの?」
「...ひみつ!」
「えー!秘密なの?寂しいなあ...」
「飛空くんの読んだらダメだからね!」
「わかったわかった。飛茉も幼稚園で七夕したもんね?」
「うん!」

飛茉も幼稚園の行事で七夕があり、まだ字が書けないのでお願いごとを代筆して周りに絵を描いてもらった。

「ひぃちゃん何お願いしたの?」
「キティちゃん!」
「飛茉は大きくなったらキティちゃんになりたいんだもんね〜?」
「うん!ひぃねいっぱいダンスして、キティちゃんなる!」
「ひぃちゃんがキティちゃんになったら、きっとキティちゃんより可愛いよ!」

飛空はニコニコと笑いながら飛茉の頭を撫で、飛茉も嬉しそうに「にぃにあそぼ?」と飛空と手を繋いでおもちゃのところへ連れて行く。おやつを食べさせたら宿題をさせなきゃなあ、とランドセルを持ち上げリビングのテーブルに置くとランドセルから1枚の紙が落ちてくる。

なんだろう、と拾い上げてみると細長い紙に「赤ちゃんが僕の家に来ますように」と飛空の名前入りで書いてある。一瞬動揺して固まるが、わたしが見たとわかればきっと照れて怒ってしまうのでそっとランドセルの中に戻しておく。もちろん今は妊婦ではないし、そんな予定もない。でも飛空は自分が幼い頃から飛茉の面倒を見るのも好きだったし、赤ちゃんを見ると「かわいいね」とよく言っていたことを思い出す。

飛雄くんとももう1人、という話はそれとなくしたこともあるけど特にもう海外へ移住する予定もないのでタイミングを考えずに過ごしていたら時間が過ぎていたというのが正しい。

「今日ね、飛空には秘密って言われたけど短冊のお願いごと見ちゃったんだ
「なんて?」
「ふふ、赤ちゃんが僕の家に来ますように、だって」

2人が寝たあと、飛雄くんにそう告げると飛雄くんが手に持っていたお茶をテーブルのうえでひっくり返してしまう。布巾を取ろうと立ち上がると、飛雄くんに腕を掴まれる。

「で、出来たのか?!」
「違うよ!」
「いやでも可能性あるだろ?」
「残念ながら今月は違います」

そう言い切ると、悪戯を思いついたような顔をした飛雄くんの手がわたしの方へ伸びてくる。

「だーめ!飛空が大きくなったから、しないって約束でしょ」
「...っス」
「ほら、来週休みの日約束したでしょ。わたしも、楽しみだから...ね?」

しょんぼりモードの飛雄くんの頬にキスすると、来週の約束のことを考えているのか少し嬉しそうになる。可愛い。

「今日どこのホテルがいいか、調べてた」
「えっ?!ホテル行くの?」
「あんまなまえさんとそういうとこ、行った事ねぇから行きたい」
「わたし全然家のつもりだった...誰かに見られたらどうしよう」
「別に結婚してんだから、いいだろ」
「いや、そうなんだけど恥ずかしいじゃん!」
「ここだったら駐車場から誰にも会わずにチェックイン出来るって書いてた」

飛雄くんがスマホで見せて来てくれたページには、とても綺麗な外観のホテルでいかにも「ラブホテル」という感じではなくて安心する。飛雄くんがこんなに調べてくれてるとは思わず、嬉しくて「ありがとう」とぎゅ、っと抱き着くと「褒めろ」と言わんばかりにキスをねだってくる。

「3人目、どっちがいい?」
「えっ決定なの?」
「飛空のお願い叶えてやんねぇと可哀想だろ」
「まあでも、まだ飛茉が手かかるからもう少しおっきくなってからでもいいかなぁって」
「飛茉見てるとまだ赤ちゃんだな、って思う時結構あるもんな」
「飛空も飛茉がぐずるとすぐ「ひぃちゃんは赤ちゃんみたい!」って言うから余計飛茉も怒っちゃって」

笑いながら飛雄くんにその時のエピソードを話していると、優しい顔で聞いてくれて心が満たされていく。飛空がまさか赤ちゃんを欲しがってるなんて夢にも思っていなかったけど今度飛茉に「お姉ちゃんになりたい?」って聞いてみようかな...。ひとまず来週の飛雄くんとのデートまでに少し筋トレして体力つけておかなきゃ、と思ったのだった。




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