「あついね〜」
子供たちと飛雄くんが外から帰ってきて汗だくで項垂れている。クーラーをつけても、扇風機を回してもなかなか体から熱が放出されないようでシャワーを浴びてリビングに戻ってきてからも汗を少し流しているようだった。
「じゃじゃん!今日のおやつはこれで〜す!」
かき氷機をリビングのテーブルにセッティングすると子供たちは大はしゃぎで「飛空くんはイチゴ!」「ひぃはかるぴす!」と大喜びだった。
「はいはい、ちょっと待ってね〜」
「飛空くんもやりたい!」
「ひぃもする!」
2人ともやる気満々でかき氷機の前に自ら踏み台を持ってきて順番に並び出す。小さい手で一生懸命回して少しだけ削れた氷にイチゴのシロップをかける。氷はみるみるうちに溶け、かき氷というよりはイチゴのシロップジュースになっていた。それでも飛空は満足そうで。ちょうどそのタイミングで飛雄くんもシャワーを浴び終え飛空が「パパ見て!」と嬉しそうにお皿を差し出していた。
わたしは飛茉の手の上から一緒にかき氷機を回してせっせと氷を削っていたので、一部始終は全く見ていないのだが一瞬飛空の「あーーーー!!!」と言う大きい声が聞こえたかと思うと「パパ!嫌い!」と飛空の泣き声が聞こえる。
飛茉を椅子に運びカルピスをかけてやり、スプーンを持たせる。その間飛空がわたしの足にまとまわりついてシクシク泣いているので「どうしたの?」と抱き上げて聞く。
「パパに、っ飛空くんのっ、イチゴ食べられたっ」
「も〜!飛雄くん!」
「ち、ちげぇ。もう溶けてたから残りかと思って」
「パパのバカ!」
「悪ぃって...」
「飛空、パパがとーーーってもおっきいかき氷作ってくれるって!」
「...っ、ほんと?」
「うん!飛空のお顔くらいおーーっきいやつ!」
「お、おう!作る!待ってろ」
「ひぃちゃんももっとたべたい!」
「飛茉はそれ食べ終わってからね」
そう飛茉に言い聞かすと唇を尖らせて反発する。「じゃあ代わりにママ食べちゃお」とスプーンでかき氷を食べようとすると「ダメ!」と怒り出す。飛茉の怒った顔がいつも可愛くて少しちょっかいを出してしまうのは飛茉には秘密だ。
飛雄くんのペースで削られていくかき氷はみるみるうちに大きくなって、お皿から今にも溢れ出しそうだった。少し形を形成して、まるでお店のかき氷のサイズになり飛空から「パパすごいね〜!」と声が漏れる。
「パパ!しゅごい!」
「だろ!」
「飛空くんのイチゴかけて!」
子供たちの機嫌も直りほっとする。いちごのシロップをかけてやると大きな口で頬張った飛空が「あたまいたい〜!!!」と目をぎゅっとつぶっていた。
「ママにもあげる!」
「ありがとう〜!」
わたしに一口、飛茉にも一口、そして飛雄くんにも一口食べさせていて飛空はご機嫌でかき氷を平らげていた。
「はい、なまえさんも」
「わ!ありがとう!飛雄くん半分こしよ?」
「ん、」
飛雄くんに一口食べさせてあげると「冷てぇ」と感想が降ってくる。そのまま自分で食べようとするが飛雄くんの手にスプーンを奪われて「ほら」とあーんを促される。子供たちから食べさせてもらうのとは違い、少し恥ずかしい気持ちのまま口を開けると冷たい食感が口の中に広がる。
「ママとパパもおいし?」
「美味しいよ」
「美味い」
「こんどね、しょーちゃんおうちきたらつくってあげるの!」
「翔ちゃんもきっと喜ぶね」
「飛空くんも!作ってあげる!」
かき氷は子供たちには大ヒットで、その後も飛雄くんが休みの日のおやつタイムはみんなでかき氷が定番になっていた。飛空はだんだん自分で作るのが上手くなり、わたしたちの分を作ってくれ汗だくになっていて愛おしい気持ちで胸がいっぱいになる。今年の夏も、なんとか乗り越えれそうです。