最近飛空が今まで以上に甘えてくるようになった。もともとよく甘える子ではあるが、今日も気がつけばソファに座ってるわたしのお腹の上で寝転がっている。
「飛空、風呂入んぞ」
飛雄くんがお風呂の様子を見て飛空に声をかける。
「ママもいっしょがいい」
「ええ、?」
「ね、パパいいでしょ?」
「パパはいいぞ」
「ママー!はいろ!」
「うーん、わかった!今日はみんなで入ろうか」
飛空の服を脱がせようとすると、飛雄くんが先に手をあげて脱がせてくれと言わんばかりにこっち見てくる。
「大きい赤ちゃんは自分で脱ごうね?」
「はやく、ほら」
「パパじぶんでぬげないの?」
「もー!飛雄くん、飛空の前でやめてっていつも言ってるでしょ?」
「...」
少し呆れながらも可愛い旦那様のわがままに付き合ってあげるか、とTシャツに手をかけて「はい、ばんざいして」と脱がせてあげる。飛雄くんはご満悦の様子で「ほらなまえさんも」とほぼ強制的に服を剥ぎ取られる。少しむっとしながら飛雄くんを見ると大して悪いとも思ってない表情をしながら「悪ぃ」と言ってキスをしてくる。飛空がきょとんとしたようにこちらを見上げてくるので「お待たせ」とやっと飛空の服を脱がせてやる。
「かゆいとこないか?」
「ない!」
「流すから目閉じろ」
飛雄くんが手際よく飛空の頭を洗っている様子を見ながら、微笑ましくてにこにこしてしまう。飛雄くんが洗い終わった飛空を抱き抱えながらざぶんとお風呂の中に入ってくるとお風呂のお湯が溢れ出て飛空が嬉しそうに声を上げた。
「おふろざぶーんちた!」
「ざぶーんしたねぇ」
そう言いながら飛空はお風呂の中でもわたしのお腹に手を当ててよしよしと何度も撫でてくる。途中飛雄くんの手もお腹に回ってきて2人から撫でられ妊婦でもないのに変な気分だった。
お風呂から上がるとパジャマを着た飛空が目をとろんとさせながら「ねんねちよ?」とわたしの手を引いてくるので寝かしつけのため寝室へ向かおうとすると飛雄くんに2人まとめて抱き上げられる。
「わ!あぶな、い!」
「パパしゅごい!」
「ふふ、だろ」
飛雄くんが嬉しそうにわたし達を寝室まで運び、優しくベッドに降ろしててくれる。飛空は今すぐにでも寝てしまいそうだが、トントンと体を優しく叩いてやると急に布団の下に潜り込みわたしのパジャマをめくりお腹にキスをしてくる。
「ん?飛空くんおっぱい?」
「ちがうの!」
それは失礼しました。と頭を撫でてやると飛空も何度もお腹にキスしてくる。飛雄くんも不思議そうに飛空の様子を窺っている。あまりにも不思議な行動が多いので飛空に聞いてみることにする。
「飛空くん、ママのお腹にどうしてチューするの?」
「ここにね、あかちゃんいるんだよ」
「そうだね。飛空もママのここにいてたんだよ」
「ちがうよ!とあくんじゃなくてあかちゃんがいるの!」
飛空の発言に思わず飛雄くんと顔を見合わせる。正直全く心当たりがない、と言えば嘘になるしそろそろ2人目が欲しいと先日2人で話していたところだった。飛空はそのまま眠りついて、飛雄くんと2人でリビングに戻り後ろから飛雄くんに抱きしめられる。
「飛空の言うこと、当たってるかもな」
「明日朝イチで検査してみようか」
「男もいいけど、俺はなまえさんに似てる娘がいい」
「気が早いよ?」
ふふ、と笑ってみせると飛雄くんが後ろからお腹を撫で頬にキスしてくる。くすぐったくて身を捩ると唇に熱っぽいキスをされる。
「今日はしないよ?」
「わかってる。触るだけ」
「ダメだってば、もう」
「ん」
飛雄くんの手が怪しい動きをし始めるので、静止させ「明日、結果何も出なかったらしよ?」と耳元で囁くとこくんと大人しく頷いていた。素直な飛雄くんが可愛くて頭を撫でると猫のように擦り寄ってくる。
次の朝、検査をしすぐに産婦人科の受診をすると飛空の予言通り妊娠4週目だった。驚いて飛空の話を担当の先生に伝えるとたまにあると言われ、子供の神秘さに感動する。飛空にどうしてわかったの?と後日聞いてみると「あかちゃんがえんえんちてたの」と教えてくれた。飛雄くんも盛大に喜んでくれて、わたしも次は女の子がいいなぁなんて思いながら久しぶりに味わうつわりの日々を思い出し怯えるのであった。