追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


影山家御用達





「こんにちは」

子供たち2人を連れて扉を開けると、店員さんがすぐにわたし達だと気付き声をかけてくれる。

「影山様!お待ちしておりました」
「すいませんお忙しいのに急に来てしまって...」
「もうすぐ来ると思いますので、ごゆっくりご覧になって下さい」
「ありがとうございます。あ!これ新作ですか?可愛い!」
「そうなんです...!今日のに合わせてもらっても絶対可愛いと思います!」

飛空と飛茉のサイズを見比べながら、色違いやお揃いをどんどんカゴに入れていく。2人は手を繋いでわたしの後ろを大人しく着いてくるのでとても助かっていた。

「飛空くん、これどっちがいい?」
「あかいろ!」
「飛茉は?」
「こっち!」
「じゃあママはこれにしようかなぁ」

3人でわいわいと買い物をしていると、お目当ての人物が現れ声をかけてくれる。

「なまえさん、すいませんお待たせしました...!」
「東峰さん!ご無沙汰してます。こちらこそ急に来てしまってすいません」
「いやいや!先日の撮影も助かりました。2人とも凄いお利口さんだったね」
「あさひさんだ!」
「あさひしゃん」

そう、今日は東峰さんがデザインをされてるアパレルショップにお邪魔していた。本来なら店頭にあまり立つことのないデザイナーさんだが、今朝連絡を取ってみると今日はたまたま店舗で打ち合わせがあるとのことで、会えることになった。先日の撮影、というのも実は東峰さんのブランドのファミリーモデルをすることになり、その撮影のことだった。わたし達親は基本後ろ姿や横顔の雰囲気撮影で、メインはキッズサイズの広告だったので子供たちはカメラマンさんに乗せられとても楽しい1日だった。無事に撮影を終えた頃には子供達は東峰さんに懐き、帰りたくないとわんわん泣いてしまうほどだった。今日も朝から「あさひさんちいくの?」と子供たちはご機嫌だった。

「今日も素敵に着こなしてもらって、ありがとうございます」
「いやいや...!もう本当、東峰さんのお洋服どれも可愛くて何と合わせてもしっくりくるのでとても助かってます」
「影山も割と着てくれてるんで、メンズのオーバーサイズが飛ぶように売れてますよ」
「ふふ、実は飛雄くん放っておくと変なTシャツしか着ないから、東峰さんの洋服だけ入れてるコーナーがあるんでそこから着せてます」
「確かに、昔から服には無頓着だったような気がします」

ははは、と笑いながら東峰さんが足元に寄ってきた子供たちを2人ともまとめて頭を撫でながら「撮影の時2人とも偉かったね」と褒めてくれるので飛空も飛茉も得意げに「またやりたい!」とはしゃいでいる。

「飛空、これ旭さんにどうぞするんでしょ?」
「する!」
「ひぃちゃんも!」
「子供たちがね、どうしても東峰さんに渡したいって聞かなくて...よかったら貰ってあげてください」

わたしから飛空へ、飛空から東峰さんへ手渡されたものはハガキサイズの用紙に「ありがとう」の文字と飛空の直筆サイン、それから飛茉の絵が書かれたものだった。最近平仮名を書けるようになった飛空はすぐに「お手紙書きたい」と言い出すようになり、今回も東峰さんに手紙を書いて持ってきたのだった。

「な、これ、え?飛空くんが書いたの?」
「そうだよ!このピンクはひぃちゃんが描いたの!」
「ひぃもおえかきした!」
「あ、ありがとう〜〜〜!!!」

東峰さんは勢いでハグをしたかったようだが、一瞬の躊躇いがあって変な体制で固まってしまう。その様子が微笑ましくて、子供たちに「ぎゅーね?」と伝えると勢いよく東峰さんの方へ突っ込んで行って心配になるが、さすが元スポーツマン。なんなく2人を受け止め笑顔で抱き抱えていた。飛茉に至っては東峰さんにチークキスをしており、真っ赤になり気まずそうな東峰さんと目が合う。

「か、影山には内緒で...」
「ふふ、そうですね」
「飛空くんもするー!」

そのあと何故か東峰さんに飛空からチークキスをしていたはずが、結局飛空が飛茉にキスをし出したので収拾がつかず飛茉を回収する。その後、今日買おうと思っていた新作の洋服を何点か頂いてしまい申し訳ない気持ちもあるが「またSNSで宣伝お願いします」と言って頂いたのでありがたく頂戴することにした。

そして正式に飛空と飛茉のモデルデビューが雑誌、電車の吊革、ビルの広告に飾られることになり飛雄くんのSNSでその話に触れると大反響だった。もともと東峰さんのデザインの洋服を着ていると「どこのブランドですか?」とママさんのアカウントから聞かれることも多かった為今回はキッズサイズがほぼ全品欠品してしまったそうだ。オフショットで頂いた家族写真はリビングの1番目立つところに飾らせて貰っている。飛雄くんは今日も変なTシャツを着ようとしていたので必死に止める。

「こっち!こっちの方が絶対格好いい!」
「そんな変わるか?」
「うん!今も格好いいけど、これ着たらより飛雄くんの良さが引き立つし格好いいと思うなぁ」
「なまえさんがそこまで言うなら...」
「ふふ、着てみて?」

飛雄くんの服を玄関で脱がせて、新しい服を差し出す。「どうすか」と聞いてくるので語彙力の限り褒めちぎると満足そうな顔をして行ってらっしゃいのキスをしてくる。可愛い。後から聞いたら、この日は雑誌の取材で私服のまま撮影があったそうで心の底から着替えてよかったとほっとしたのであった。




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