追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


キスの日





ローマに来てからは飛茉がまだ乳児だったこともあり、なかなか試合観戦は出来ていなかった。だが、今日はローマ旅行に来ていたわたしの両親が子供達を自宅で見てくれるとのことだったので飛雄くんに内緒で試合を観に行くことにする。

久しぶりに飛雄くんの生試合を観れるということもあり、既に楽しみな気持ちいっぱいで会場に向かう。当日券で選んだ席は割と良い席だったので最高の気分で試合開始を待つ。周りにはもちろんわたしのことを知っている人もおらず、「Tobio」と聞こえると思わずにこにこしてしまっていた。

コートに立つ飛雄くんはそれはもう、それはそれは、恐ろしいほどに格好良くて。1秒も見逃したくなくて必死に目で追っていた。試合結果は飛雄くんのチームが無事勝利し、周りのみんなと大きな拍手で勝利を祝った。

飛雄くんのチームがマイクを渡され勝利の喜びを語る中、マイクを渡された飛雄くんが突然客席に近づいてきて観客も盛り上がる。どうしたんだろう、と呑気なことを考えていると飛雄くんがわたしのブロックの目の前までくる。もしかして、気づかれてる?なんて今更気づいても遅く飛雄くんは拙い英語で「今日は俺の最愛の人が観に来ていて、彼女に勝利を捧げます」と告げた途端会場は大盛り上がりだった。周りを見渡すとアジア人はわたししかおらず、どう考えてもわたしが飛雄くんの最愛の人、とわかる状況だった。

イタリアの方はみんな陽気で、わたしのことを手拍子で盛り上げながらどんどん前のブロックへ押しやってくれる。こうなったらもうお祭り騒ぎで、口笛の音や手拍子の音で何が何だかわからないまま気付けば飛雄くんの目の前に立たされていた。

「今日来るって聞いてねぇ」

日本語でそう不満そうに告げられ、ごめんね?とジェスチャーすると飛雄くんがもう一度マイクを手にして「なまえ、Ti adoro(愛してる)」と言い放ちわたしに熱烈なキスを送ってきた。

突然のことで身動きも取れず、飛雄くんにされるがままにされていると会場は更に盛り上がり歓声の嵐だった。恋人同士で来ている人たちはこの盛り上がりに乗じてキスをしていたし、飛雄くんのチームメイトも自分の恋人、家族を見つけてはキスを送っていた。わたしは恥ずかしい気持ちと、嬉しい気持ちが共存しているのとここが日本じゃなくて本当に良かったと息を吐いた。

「で、今日キスの日らしいんすけど」
「ん?」
「勝ったんでキスしてください」
「む、無理無理!」
「何で?あっちいた時は試合の後しただろ」
「ここ!日本!」

日本に戻ってきてからも、飛雄くんのスキンシップは海外寄りになったまま戻ることもなく今日も試合終わりに子供たちと居るとこに飛雄くんが現れ飄々とキスを強請ってくる。

「さっき飛茉にしてもらってたでしょ?」
「なまえさんがいい」

そう言いながら、一歩、一歩と距離を詰めてる飛雄くんから逃げ場を失いわたしの体は壁へと追いやられていた。

「し、しない」
「頬にしてくんねぇなら俺からキスすんぞ」
「それは意味違ってこない?!」
「ほら、早く。なまえさん...」
「ほ、ほっぺね?ちょっとだけだよ...!」

幸いにもここからなら観客席からほぼ見えないだろう、そう思い意を決して背伸びをし飛雄くんの肩に手を添え頬にキスしようとすると、壁に押し付けられ結局飛雄くんからキスをされてしまった。いわゆる壁ドンを経験してしまい、顔を真っ赤にしながら「飛雄くんのバカ!」と文句を言う。

「ママとパパちゅーしてたよ!」

と、ファンの方に飛空からバラされわたしは穴があったら入りたくて仕方なかった。あとチームメイトの方からは丸見えだったそうで、本当にもうただただ恥ずかしい気持ちでいっぱいでした。キスの日なんて飛雄くんに教えた人誰ですか?いたら白状して下さい。




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