「本当に行くのか?」
「飛茉がどうしても行きたいんだって」
「...わかった。じゃあ俺は飛空と出かけてくる」
「ありがとう」
夜、飛雄くんから最終確認をされる。というのも、明日は飛茉たっての希望でジャッカルの試合を見に行くことになっている。最初飛茉が言い出した時は飛雄くんが俺も行くと聞かず大変だったがなんとか飛空と2人で出かけてもらえることになった。
朝から飛茉はご機嫌で「翔ちゃんたのしみだね!」とニコニコで朝ごはんを食べていた。
「飛空くん今日パパと動物園いく!」
「飛空も楽しみだね〜!」
「ママのお弁当楽しみだよ!」
「ふふ、いっぱい食べてね」
先に飛空と飛雄くんを見送り、玄関で抱きしめたまま動かない飛雄くんを飛空が「パパ行くよ!」と引っ張り動物園へ向かって行った。飛茉は「かわいいの!する!」とわたしにおめかしを頼んできて女の子は成長するのが早いなぁと感心する。
道中もずっと「たのしみだねぇ」とご機嫌の飛茉だったが、会場の人の多さにやられて緊張したのか「翔ちゃんあいたい...」とぐすぐす泣き出してしまった。
「翔ちゃんは試合終わってからしか会えないよ?我慢できる?」
「...うん」
「翔ちゃんも飛茉に会うの楽しみ〜ってお電話で言ってたでしょ?にこにこのひぃちゃん見せてあげようね」
「うん!にこにこひぃちゃんする!」
飛茉に日向くんのタオルを買ってやり、大きい日向くんのパネルの前で写真を撮ってあげると大はしゃぎでやはり血は争えない...とわたしは少し恥ずかしくなる。その写真を飛雄くんに送ると飛空とのツーショットや、飛空が動物を見てはしゃいでる姿が送られてきて「なまえさんの写真も」と飛雄くんが強請ってくる。仕方ないので飛茉とツーショットを撮り送ると珍しく笑顔のスタンプが送られてきて笑ってしまった。
「あ、翔ちゃん出てきたよ!」
「...!」
飛茉は静かに興奮するタイプか...と思わず可愛くて笑顔になる。目をキラキラと輝かせ口をきゅっと結びながら日向くんを目で追う様子は正直言ってかなり自分に似ていて恥ずかしいような面白い気持ちでいっぱいだった。日向くんのご厚意で用意してもらった席はかなり前の方で飛茉も見やすそうで安心する。飛茉は大人しく試合を見てるがボールではなく完全に日向くんを目で追い続けていて、自分も飛雄くんの試合を見てる時はこうなのかな...とやはり恥ずかしくなる。
試合が終了し、日向くんのところに挨拶へ行こうとしていると「ママ!翔ちゃんきた!」と飛茉が大きい声で話すので目の前を見るとピースサインをした日向くんが立っていて飛茉を抱き上げる。
「飛茉〜〜〜〜〜!今日飛茉が来るって聞いてたから飛茉のために翔ちゃん頑張った!飛茉のために勝ったぞ!」
そう言って飛茉を抱きしめる日向くん。周りのファンは少しざわついていているがそんなものお構いなしで飛茉を抱き上げていた。
「翔ちゃん!!あのね!あのね!」
「んー?」
「翔ちゃんがいちばんかっこよくて、ひぃね翔ちゃんのこともっとだいすきになったの!」
完全に目がハートになってる娘が面白すぎて、これは飛雄くんには見せられないなと苦笑いをしていると飛茉が日向くんの頬に小さい手を添えて「ちゅ」と可愛くキスをする。
「なっ!!飛茉!!何それ?!可愛すぎて...!俺影山に殺される...!」
「パパにはないしょね?」
「ふふ、秘密だね」
その後わたしと飛茉がいることを聞きつけてきた宮さんが現れたが飛茉の人見知りが発動され、目も合わせてもらえず宮さんは落ち込んでいた。
「飛茉ちゃん...!俺、パパと友達やねんで?」
「...翔ちゃんがいいの」
「なんで翔陽くんなん?!」
「いちばんかっこいいもん」
「俺も飛茉が1番可愛い〜!な〜!飛茉!」
デレデレの日向くんの様子がSNSに「日向選手、溺愛のお姫様」とすぐさま拡散されて、飛雄くんの耳に入るのも時間の問題だった。娘の初恋は前途多難のようです。