追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


夫婦喧嘩





「もーーーーーーー!!飛雄くんなんて知らない!本当に!怒った!」
「あー、すんません」
「悪いと思ってないでしょ?!」
「まあ」
「悪いと思ってないのに謝らなくて良いです!」

またはじまった...。と俺はリビングに顔を出して「母さん?どうしたの?」と声をかける。実際は内容なんて割とどうでもよくて、母さんが一方的に話す内容をふんふんと聞けば良いので楽なもんだ。

「飛空〜〜〜〜!ママの味方は飛空だけだよ...!」

そう言って俺をぎゅうぎゅうと抱きしめてくる母さんが少し可愛いと思うと俺は多分父さんに怒られるので黙っておく。

「父さんが今度は何したの?」
「...」
「言いたくない?」
「及川さんがね、パパの誕生日にプレゼント下さってお礼に手紙か電話したほうがいいかな?ってパパに相談したら、パパがお礼しとくって言うからお願いしてたのに今日までしてくれてなかったの!」
「あ〜...及川さん...」

なぜかは俺も知らないけど、父さんは及川さんのことをあまり良く思ってない(といっても普通に仲は良さそうだけど)ようで、母さんが絡むと余計に拗れることが多い。俺から言わせれば「また?」と言った話だが母さんはそうは思ってないようで怒っていた。

「今日たまたま及川さんと会ったからその話したらパパってば何にもお礼してなかったみたいでびっくりしてめちゃくちゃ謝ったんだから!」
「ママ、今日のご飯何?」
「飛茉〜〜〜!!ママの話聞いてよ!」
「パパから聞いた」
「パパなんて?」
「及川さんが勝手に押し付けてきただけだから気にしなくていいって」
「もー!そういう問題じゃないよね?」
「なんなら及川さんと会ったこと怒ってたよ」

俺たちの親は世間から見ると少し変わってるらしい。らしい、というのは俺は他の人のことを知らないし俺は別に父さんと母さんが仲良いことになんの不満もないからだ。まあ夫婦というよりカップルに近い。

晩御飯になっても母さんの機嫌は斜めのままで、父さんのことを完全に無視して食事を進めている。妹の飛茉はどこ吹く風で食事を続けていたが、俺は父さんが少し可哀想で早く仲直りしたらいいのになぁと父さんの大好物のおかずを食べていた。怒ってるくせに今日の食卓も父さんの好みで揃えられていて「こういうとこなんだよなぁ」と溢してしまう。

食後に洗い物をしてる母さん、飛茉は今日も翔ちゃんの動画を見てテレビを占領している。俺は父さんと父さんと交代で風呂に入りリビングに戻ると母さんの周りをうろうろしてる父さんと遭遇する。

「なまえさん」

父さんが母さんの手を握って名前を呼ぶのが仲直りの合図で、俺は飛茉の名前を呼びリビングから離れる。慣れてると言っても親がいちゃついてるところを直視できるほど大人でもない。

「本当、ママもパパも飽きないよね〜」
「そういう飛茉こそまた翔ちゃんの動画見てただろ」
「?翔ちゃんに飽きるとかないけど...?」
「お前ほんと、父さんにそっくりだな」
「そう?見た目はママにそっくりで年々美人に磨きかかってるけど」
「そういうこと、自分で言うとことかな」
「だって事実じゃん?」
「はいはい。飛茉が一番可愛いよ」

そう言って飛茉の頭を撫でてやると満更でもないと言った様子だ。飛茉は幼少期を海外で過ごしたからなのか割と日本人には珍しい性格で。それこそ昔は人見知りで俺の後ろをずっと着いて歩いて可愛かったのにな...と子供の頃の記憶を呼び起こす。

「あ、やば。リビングに宿題置いてきちゃった」
「えー、今行くつもりか?」
「今頃仲直り終わってるんじゃない?お兄ちゃんも行こうよ」
「はいはい」

飛茉に手を引かれリビングに戻るとソファで肩を寄せ合ってる二人の姿が見え、いつもの光景だなと思わず笑ってしまう。

「飛空、飛茉。こっちおいで?」

そう言って笑顔で振り返る母さんが幸せそうで、やっぱり父さんの横で笑ってる母さんの姿が好きだなと思うのだった。




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